決算書の読み方(EC)

こんにちは
 決算書は必ず見るようにしており、それは投資の判断に必須だからです。しかし、今でこそ苦労もせず決算書を読めるのですが、最初は読み方がわからなかった、そんな時代もあったと記憶している。
 今回は、eコマース(ECビジネス)を事業の柱とする企業の決算書の読み方を記事にしました。

eコマースを2つに分類

 決算書の読み方に入る前にeコマースとは何かを。タイトルの通り2つに分類出来ます。 

 1 直販型 (例、Amazonなど)
 2 マーケットプレイス型(例、楽天、ヤフー、メルカリなど)

直販型は、自社で商品を仕入れ(買い取り)し販売する。マーケットプレイス型は、売り手と買い手をマッチングさせることで販売を行わせる。そんマーケットプレイスはさらに2つに区分できる。

  (1) 店舗出店型(売り手=店舗)(楽天、yahooショッピング)
  (2) フリマ型 (売り手=個人)(ヤフオク!、メルカリ)。

決算書の読み方

 直販型から。前項でeコマースを分類したところで、それら決算における「売上高」に関する次の式を見てください。

画像1

 直販型はこの数式で決算が読めます。マーケットプレイス型は後述しますが、基本的にはこの数式で決算を評価できます。
 まず直販型を説明するのですが、指標の2つとは、「取扱高」と「テイクレート」です。取扱高は注釈にもあるGMTまたはGMVとも言われます。
 ここで、「直販型」について例をもって説明します。

(ケース1「直販」)
 ある日、私はAmazonでAという商品を400円で仕入れました。
 翌日、そのAを500円で売りに出し、500円で売れました。Aは一個

「取扱高」(グロス売上)は500円となります。また直販型では、

 ネット売上=販売額−仕入額

であり、この例における「ネット売上」は500円となります。
その場合のテイクレートは

 テイクレート=(ネット売上)➗(グロス売上)=50%

以上から、
 ネット売上=100円
 テイクレート=20%
となります。先ほどの式にあてはめると

 売上 =  500円(取扱高) ✖️ 20%(テイクレート)

 次いでマーケットプレイス型についてです。
 ネット売上は、下記の3つから構成されます。

出店料
売上手数料(通常、取扱高の数パーセント)
広告掲載料

以上です。とはいえ、マーケットプレイス型に出店する各々店舗の「取扱高」は最も重要な指標です。当然その各店舗における「テイクレート」も重要です。

決算書を読むと時のコツ(着眼点)

 eコマースの成功要素は「規模」です。市場をどれだけ獲得できるかが勝敗の分かれ目になります。直販型は、取扱高が大きくなるということは、仕入は増えることになる。仕入れが増えればその分の値引き(ボリュームディスカウント)が増えます。そうすると仕入れ値が下がることになる。
 仕入れ値が下がれば、販売価格の決定に柔軟性が出ます。大きく値下げして売ることも出来る。特に競合他社との価格競争においては、値引きによりさらに多く販売できます。
 このように、直販型のeコマースは「規模」で勝敗が決します。

 一方マーケットプレイス型(MP)は、「ネットワーク外部性」で勝敗が決する。直販型と少しその仕組みが違います。
 MPにおける出品者が増え、比例して出品数が増えます。購買者(ユーザー)は、マーケットの「魅力」を感じ、その魅了が増します。魅力が増すことで、さらなる購買者が増え、その分取扱高が増えることになる。
 出品者は、取扱高が増えるわけですから、さらに出品数を増やしそのマーケットの「魅力」が増えることになる。そうして出品者も増える。このように、マーケットの魅力を増すことで、出品者、購買者、そして出品数とその商品の質が「魅力」によって高まるわけです。この効果を「ネットワーク外部性(ネットワーク効果)」と言います。
 楽天市場は、初期の頃は固定の出店料しか徴収してませんでした。現在は取扱高に比例した出店料と販売に係る手数料(売上手数料)も徴収する仕組みにしています。「魅力」がある一定のレベルに到達するまで、出店料を抑える我慢の経営となります。メルカリも同様の方式であり、初期は手数料ゼロ円でした。ある時、手数料10%を取り始めており、両者方と「魅力」が十分なレベルになったことから出店料の「値上げ」をしたのです。その無力を向上するため広告をします。その広告は出品者が支払うこともあります(広告掲載料

 以上を踏まえて、eコマース企業の決算を見る時は、直販型かマーケットプレイス型なのかを見定めて評価し、各企業のeコマース(ECビジネス)の全体像を掴んでください。
 ECのビジネスモデルはどんどん多様化してます、ごく基本的なことを説明しましたが、決算を大観できるようになったら、会計の知識も学習し決算書を読み込んでいくと、会社のビジネスをより理解出来るようになります。
 ただ繰り返しになりますが、eコマースは「規模」により全てが決まります。ビジネスモデルが良くても売上が少ない企業はたくさんありますので、注意してしください。

 Winter Takes All!

ここまで読んで頂きありがとうございます。