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三井E&S 2021年3月期3Q決算

会社概要

 歴史ある造船メーカ。現岡山県玉野市が発祥。主に船舶、機械、エンジニアリングの3つの事業を柱とする。しかし、海外事業に失敗し事業再生中である。そのため、グループ子会社を及び事業を売却し、経営再建を図っている。そのため、主軸であった造船事業は本年、売却を完了した。

 三井は、WWⅡ時における軍用艦を建造、戦後は商船、船舶用ディーゼルエンジンの船舶分野のほか、発電・化学プラント事業や、港湾クレーン、橋梁の建設など社会インフラ事業と多岐であった。
 グループ内には、浮体式海洋石油・ガス生産設備(FPSO)で大きなシェアを誇る三井海洋開発があり、メタンハイドレートの実用化研究を進め、他の重工業メーカーと比べ海洋分野に力を入れていることが特徴。

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中期計画

 中期計画を読むポイントは、事業再生中であること。
 会社発表の中期計画は =>リンク を参照

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 上図は中期計画より抜粋したもの。
 安定した収益が得られる艦艇事業を、三菱重工(MHI)に売却。

 本年3月29日付けで、艦艇・官公庁船事業を譲渡。
 事業会社の三井E&S造船は、補給艦や海洋観測艦といった防衛省向け艦艇、巡視船、漁業取締船など官公庁船の建造や修理強みであった。近年、水中無人機や水上無人機といった新技術開発にも取り組んでいた。
 今後、MHIがそれら事業を引き継ぎ、従来より手がける陸・海・空にまたがる防衛装備品事業を統合した艦艇の開発・設計・建造することとなる。

事業の失敗「インドネシアにおける発電所」
 その譲渡の原因はインドネシアにおける火力発電所建設で大損失であり、発電所建設に係るリスク管理の甘さが原因とされる。以下は参考記事

3Q決算の概要

総 括
 連結経常損益は48億円の黒字(前年同期比は47.9億円の赤字)、売上営業損益率は前年同期の-2.4%から2.6%に大幅改善。3Q累計(4-12月)の連結経常損益は30.7億円の赤字(前年同期は696億円の赤字)に赤字幅が縮小。
 ただし通期経常損益予想の赤字額は70億円から赤字80億円に下方修正。 その業績予想修正は、三井海洋開発株式会社(連結小会社)の期末決算に基づく下方修正。その結果、売上高が増加するものの営業利益、経常利益が悪化することとなった。売上高増加の要因は、海洋開発セグメントにおけるプロジェクト進捗が高まり、一方で営業利益及び経常利益は、そのプロジェクトの一部におけるコスト増が要因。
 ただし、為替に係る増収見込みがあるため、決算は注視する必要がある。

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船舶事業

練習船・ばら積み貨物運搬船は前年並
 363億75百万円(前年同期:386億24百万円)
建造船工事の減少
 665億69百万円(前年同期比189億96百万円減少(△22.2%))

海洋開発
 新規受注にFPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)建造プロジェクトなどがあり、1,781億62百万円であった。前年同期比1,641億24百万円減(△47.9%)となった。一方、売上高はFPSO建造工事の進捗等もあり前年同期と比べて104億85百万円増加(+4.8%)の2,300億92百万円。しかし、感染拡大の影響を織り込んだことにより前年同期と比べて18億56百万円減の107億94百万円の減収となった。

機械及びエンジニアリング
  受注高は、感染拡大の影響をうけ、コンテナクレーン、産業機械などが減少。売上は、子会社売却による減収、が船舶用ディーゼル機関の引渡しが先送りとなる影響があり、総じて減収減益となった。
 一方で、インドネシア共和国向け火力発電所土木建築工事において追加損失が発生した前年同期と比べて、営業利益が改善されている。

見通しと株価推移

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 月足のチャートですが、底打ちし上昇する気配はある。事業再生が順調に進んでいるという事実を市場は評価していると思われる。しかし、感染拡大の影響が継続し、事業自体が順調に推移するかは不透明。
 また、海外事業における売上も不透明な状況。MHIに事業譲渡をした影響など、本決算は注目