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コインベースのIPO後、薄商いとなる背景について

コインベース、ビットコイン相場(4/15以降の週)

 注目されたダイレクトリスティングによる上場、初日は$425の高値をつける人気ぶりも、翌日以降は$320から340のレンジ相場となり、出来高も上場初日の出来高と比較すると薄商いとなった。また、ビットコイン相場も、コインベースの上場日以降は安値を切り上げるも、コインベースの株価に呼応するように一段と安い相場を形成する気配が見える。

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コインベースとは

 暗号資産を管理、取引することをビジネスとする金融機関である。仮想通貨の取引額の約1.5%の手数料収入によるビジネスモデル。特に、ビットコインは革命を起こした有限のデジタル資産。 コインベースに口座を持つことで、ビットコインの仮想通貨の他、米ドルコインを含む多くの暗号資産を貯蓄(保存)し、スマホで送金する等の取引が可能となる。それら資産は暗号化され、暗号にはブロックチェーン技術を使用される。よって、保管する暗号資産の安全が確保される。
 IPOに先立ち、米SECに提出したS-1(目論見書)によると、2020年12月末時点、コインベース上では4,560億ドル超える取引実績があり、900億ドル以上の資産の保管実績を有する。その総収益は34億ドル超で、収益は冒頭述べた「取引手数料」によるものとある。それら取引収益はコインベースその総収入の96%以上を占め、また口座を保有する現ユーザーの21%が、複数の資産を取引するとある。 

コインベース 2020年決算

 売上高 1.14億ドル(2019年は、0.48億ドル)
 純利益 0.32億ドル(2019年は、0.03億ドルの損失)

 前年比で約2倍を達成する売上であり、純利益も黒字となった。

 登録する顧客数(口座数)   4300万人 (3200万人)
 月間取引ユーザー       280万人(100万人)
 保管する資産計    903億700万ドル(169億6900万ドル)
 年間取引高     1930億9700万ドル( 799億600万ドル)

  以上が、経営指標となる、優秀な経営状況である。

コインベースが薄商いの理由

 今年4月始めに、フィディリティが「ビットコインETF」に関するIPO申請(S-1申請)を実施した。独自の指数を算出し、その指数に連動するETFである。現在、ビットコインへの投資は、大きく2つある。
 一つは、コインベースなど仮想通貨の取引所を通じた投資。つまり、仮想通貨をドルや円で購入する。ビットコインにより購入できる商品もあり、また海外へ送金するにあたり送信のための手数料も格安であることから利用される人も多い。最近が、ロビンフッド、ペイパス、スクエアなどの口座通じスマホで取引可能となった。また、ロビンフッドなどビットコインなどの仮想通貨で現物株式を購入できるなど、投資環境が激変している。そのような環境変化の相まって、取引量が急増し、ビットコインの高騰につながった。
 二つめは、仮想通貨への投資をする個別銘柄への投資である。マイクロストラテジなど、ビットコインと同様の値動きをする。そのような銘柄を通じた投資も見受けられる。

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 上のチャートは、マイクロストラテジ($MSTR)のチャートです。ビットコインと同様の値動きをすることがわかります。マイクロストラテジは自社の金融資産の大半をビットコインに投資してます。従って、事業PF内に占める仮想通貨の値動きと、その個別銘柄の値動きは連動します。
 そのような銘柄に投資することで、ビットコインへの直接取引に要する手数料を節約することが可能となると同時に、取引所の口座仮設など面倒な手続きを省略し、手軽に仮想通貨へ投資できる。

コインベースの相場とビットコインETFの関係

 上述の2つの方法により仮想通貨を直接または間接的に取引可能となる。ここで最近、ETF上場申請されたことについて簡単に触れ、コインベースの相場との関連について説明します。以下のリンクは、米SECに提出された「ビットコインETF」上場申請です。
 商品名は「ワイズ・オリジン・ビットコイン・コントラクト」と言う。

https://sec.report/Document/0001193125-21-092598/

 このETFは、ビットコインに直接投資する設計となります。そのため、マイクロストラテジ銘柄より、ビットコイン相場に敏感な値動きとなる。しかも、より安全な取引となり、個人投資家にも取引が容易となる。
 ETFは、株式と同様の取引が可能であり、かつ取引手数料は証券会社の手数料の他、キャピタルゲイン税以外に不要であるとのメリットがあります。現在人気のビットコイン取引は、近い将来はこのETF購入で事足りるようになる。コインベースの上場日が決まる数日前、この上場申請が報道された。

 現時点において、米SECが上場を承認したわけではありません。しかし、独自のインデックスに連動するETFを設計し、可能性として半年後には承認され、上場となる公算があります。
 以下の記事にそれら背景を整理してます。参考まで

 かつて、同様の仮想通貨ETFが申請されたが、承認されることはありませんでした。それは、暗号通貨を通貨を見做す目論見書であることから、却下した経緯がある。FRBは、銀行にカストディをとして仮想通貨を扱うことを容認したが、暗号通貨を通貨として認めていない。あくまで、金融資産としてのみ認めている。
 今回、フィディリティの目論見書には、ビットコインは通貨として扱うわけではなく、他ETFと同様「コモディティ(金融資産)」として扱うと記載がある。従って、上場も近いと考える投資家が多いのは自然である。

 このような理由から、薄商いとなったと考えられます。上場直後は、期待先行で買いが優勢になり「イナゴタワー」が生成されるが、冷静な投資家には高値追いするような相場感などなく、自然と今の株価水準に落ち着いたものと考えます。
 ただ、コインベースは金融機関として、上述の決算内容から優秀という事実には変わりありません。少なくとも、ビットコインETFが登場するまで、仮想通貨の取引は取引所により行われるので、しばらくは利益がでるはずです。

米SEC長官の就任

 バイデン政権になり長らく不在であった長官ポストが、議会承認を受けた。ゲンスラー氏の承認、記事中にもあるが、MTIで仮想通貨理論に関する研究をしていた実績も持ち主
 現在、ビットコインETFは8件(と記憶している)申請中である。しかし、どれも承認されない。しかし、上述のフィディリティの申請したETFは他7件とは全くと言っていいほど違う。申請後にすぐにETFが承認されるわけではない。しかし、今回のコインベースの薄商いは新長官に対する期待などもあると思われる。