音楽で誰かの世界が変わる瞬間。
言葉とか音楽とかで世界が変わる瞬間を見るときが好きだ。
そんなこと決して簡単なことじゃない。
世界が変わるなんて、今まで生きていた時間を否定まではいかないけれど、それに近い物を感じてしまうこともある。
僕がそうで、僕は何やってたんだって思ったことがあるけれど、マイナスな感情だけではなかった。
ああ、そうか。って納得に近いものを感じたことをしっかりと思い出せる。
その瞬間が経験したから、こんな下手な文章を書いているのもあるかもしれない。
今日、というか昨日、3月21日、僕は他の人たちがその瞬間を迎える場所にいた。
名古屋。
地下。
音が鳴り響く場所。
その会場に入るまで、僕は整理番号の順番確認のために話しかけた男性と寒いから早く入っていい場所取りたいなとか、とりあえず何でもいいから暖かいところに行きたいなんて話してた。
その人は関東から駆け付けたと言って僕を驚かせた。
こういうところ初めてだから緊張してると言っていた。
初めてで遠出して参戦するなんてすげえなって、そこまで追いかけさせるのもすげえなって、その人もそこで音楽をする人も。
自分の整理番号が呼ばれて、チケットをもぎってもらって500円と交換したドリンク交換券を握りしめて会場に入っていた。
高揚した表情、友達と何をやるか予想して真剣に考えている顔、初めての場所に不安や緊張でキョロキョロしている人、少しでも前へと抜け道を探す人。
僕の隣では一緒に来た人が会場に流れているその人たちの曲に合わせてノリノリで今か今かと待っていた。
そこには性別も年齢も普段の生活もバラバラの人たちが一挙に集まっていた。
ただ、どの人も今から音楽を鳴らしてくれる人たちに期待をしていることは、入るまで鳥肌立っていた肌が汗ばんだものに変わるほどの会場の熱気で、文字通り肌で感じていた。
もうすぐ始まる時どこからかこういう場所でノッて手を挙げるとか恥ずかしくなってしまいそうだなんて声が聞こえてきた。
最初なら分からないでもないなーなんて思っていたらメンバーが登場した。
「頑張るわ」と聞こえた。
挨拶もそこそこに疾走感溢れるナンバーをかき鳴らす。
その時点で恥ずかしがって手を挙げている人はいなかった。
場の雰囲気でノッているのではなく、自分の意志で挙げたいと思ったから挙げたという力いっぱいの手が挙がっていた。
誰もが楽しんでいて、誰も頑張っていなかった。
会場真ん中から見るその景色は彼らの魅力を引き立てるには十分すぎるものだった。
僕らと向き合ってくれている彼らは本当に気持ち良さそうに演奏してくれた。
楽しそうでもあったけど、やっぱり気持ち良さそうが合っていると思う。
張り合うわけでもないけれど、観客たちも負けじと高揚し続けた。
会場に入る前に不安がっていた彼は終演後には汗だくになって当たり前のように楽しんだみたいだった。
「頑張る」とつぶやいた男性は隣の人と肩を組んで飛び跳ねるまでになっていた。
その観客の一人である僕はまだ収まらない余韻を胸にこの文章を書いている。
余韻と共に胸に抱いているのは、どこまでも進化し続ける彼らについて行きたいと思う気持ちだ。
『真夜中の失踪に聡明と音楽』Release Tour
Half time Old