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aoneko
彼女は言った。
「私たち、もう大人なんだよ。」
夕飯前の言葉。
付き合い始めてもう3年が経とうとしていた時の言葉だった。
いつも言われた言葉だったがその時はなぜか違う意味だと思った。
学生の時から仲の良い友達だった僕ら。
僕はそのころから何にも進歩なんかしてなかった
言われた日は付き合ったころからの夢である同棲を始めて1年になる日だった。
「ああ、うん、そうだね。」
それだけしか返せなかった。
将来とか未来とか嫌いだった。
今を生きることに精いっぱいの僕は彼女との未来を考えるふりをしているだけだった。
「ちゃんと考えているよ。」
「なにを?」
「プロポーズの計画。」
「あの指輪を買って浜辺で・・・。」
いつも言うセリフを垂れ流す。
今考えたことを昔からの念入りに考えているように話す僕の悪い癖。
ばれてないと思っている僕。
「うん、そうね。ありがと。期待してる。」
そう言った彼女の眼には涙がたまっている。
僕にはその涙がどっちの涙かわからなかった。
いや…わかりたくなかった。
悲しいと思って流した涙だってわかってしまったら、僕はどうすればいいかわからなくなってしまうから。
いつも自分のことだけだった。
逃げるように僕はキッチンへ行って、いつもの野菜炒めを作るねと少し大きめの声で不安をかき消した。
彼女は僕の作る野菜炒めを好いてくれてた。
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