拝啓、君へ。
僕はあの夏に君が流した涙を知っているよ。
君が焼けつくような太陽の下で熱中症になりかけながら、むしろ熱中症で倒れますように願掛けしながら涙を乾かしていたことを僕は知っているよ。
こんなことを言うと君は怖いというだろうな。
僕はその姿が容易に想像つく。
君は夏が嫌いだと言っていたね。
昔は一番好きな季節は、と聞かれたらその質問が終わらぬうちに「夏」と叫んでいたはずなのに。
君は変わらずにはいられなかった。
しょうがなかった。
落ちに落ちまくって第何志望すらもわからない大学を曲りなりも卒業できたのは、就職を新卒で取るためで、売り手市場を存分に生かすためだったし。
売り手市場を存分に振りかざした君の就活の方法は君が行きたかった会社に悉く刺さった。
内定は取れるものだと感じてすらいた。
その中で就活が始まる前から目をつけていた企業にも内定をもらっていたね。
すごい嬉しかったね。
ただその企業は親戚、恋人、親にまで滅多打ちに叩かれて祝福されると思っていた君は簡単に心が砕けて、その翌日にはその内定を蹴って地元の所謂大企業に就職したね。
そのあとはどうしようもなかったね。
何が辛いかわからないから逃げることもできないし、毎日自殺希望だけで過ごしていた。
でもその勇気が出なくて会社に行く。
見るのも無残なくらいに姿になったって家族とかに言われていたね。
あんたたちがそう望んだくせに今更何言ってんだって、ひどいのはどっちだって思っていたね。
夢も希望も無く入った会社もステップアップのために何とか次に行くまではと思っていた糸も切れたあの夏。
イヤホンが聴かせてくれたくれた曲は
「そりゃ色々あっただろう、今もあるだろう。でも笑いながら生きていく『それが人世だ』って。そんな単細胞になれたならどれだけ良いかって」
ここからまだ歌詞は続くのにこの部分だけが光って聴こえたはずだった。
単細胞になれないから君は壊れたんだと切れた糸と一緒に思考も飛んだね。
最初から無駄な我慢は必要なかったんだと。
僕が思うに君がやったそれは正解だったんだと思うよ。
それがあったから僕は今幸せに生きているよ。
君が僕のことを自慢できるような幸せな日々を送るからね。
そこまで無理せんでいいよ。
誰かが歌った止まない雨は無いし、この曲のように「快晴」にもなるときがあるのだから。
「快晴」 歌ってみた メガテラ・ゼロ
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