ワンジナちゃん、世の中には空気神社というものがあるのだよという話
私はこの記事の検索ワードにFGOと入れるつもりなので、余程の事がなければ現在スマートフォンで「Fate/Grand Order」をプレイしているユーザーが読む事になると思うのだけれど、もう一つ入れるつもりである検索ワード空気神社からやってきた人のために軽い説明をしておく。
先述の通りスマートフォンで出来るアプリゲームであり、課金要素はあるが基本的には無料で出来る。Fateシリーズの派生物なので原作に思い入れのある人やスマートフォンで出来るからやっている人がいる。私は後者なのでこういうふわふわな説明をしている。内容は世界の偉人の一側面を抽出したサーヴァントと呼ばれるキャラクターを集めて世界に平和を取り戻すというやつだ。ただストーリーが面白くて魅力的なキャラクターがいるからユーザーがたくさんいてゲーム内のイベントの時期にはテレビCMをかける。今も「ワンジナ・ワールドツアー!大精霊と巡る世界一周」というイベントを開催しており、バナーにタイトルと一緒に描かれている女の子がこのゲームに於けるワンジナである。
私がワンジナという存在を知ったのは同ゲームの前イベント「サーヴァント・サマー・フェスティバル」であった。元々アボリジニ神話に於ける大気の精霊であるというのが一般的な意味合いで、目に見えず人間に存在を認識されずにずっと在ったというのがゲーム中での彼女の設定だった。私はそれを読んでこう思った。
んな訳あるかい。
見えないという理由だけで存在を認識されずに人々から忘れ去られる事があるなら見えないものを見ようとして望遠鏡を覗き込む人は一体どうなるんだ、今この瞬間も見えない何かと戦っている人がたくさんいるぞまあこの場合私もその一人である何より。
世の中には空気に感謝するために作られた空気神社というものがあるのだ。
山形県は西村山郡朝日町というところに、Asahi自然観というアウトドア施設がある。空気神社はそこのモニュメントであり、神社と名乗りこそすれ実際には神社ではない。現にある年身内に不幸があり参拝してもいいのだろうかと尋ねたところ「うちは宗教色のない神社なので」と返ってきた。マジかそんなんあるんかと思ったが元々1975年に町民の一人が「人にとって最も大切な空気に感謝する空気神社を作ったらどうか」と提案した事が始まりであるらしいし神主も氏子もいないらしいから日本人にとって大切なものに感謝を伝える施設と言ったら神社であるというただの帰結なのだろう。普段は忘れていてもここにいたら思い出してありがとうって気持ちになるんじゃないかな、ここでありがとうって言ったら伝わる率が高くなるかもしれない、という気持ちにさせる装置。私は宗教こそ人間の最初の発明だと思っているのでよりそう思うのかもしれない。
空気神社にあるのは5メートル四方の鏡仕上げされたステンレス製の板だけだ。これが何かというと、係の人がぴかぴかに磨き上げたステンレスに四季折々の景色を写り込ませる事で空気を表現している。夜星が映ると大層美しいそうだ。但し熊も出る。
ステンレス板の三メートル下に本殿がある。四季を表す四本の柱の鳥居に囲まれたそこには一年を表す十二個の素焼きの壺があって、やはり綺麗な空気を祀っている。見えない事を理由に存在を認識されず触れ合う事が出来ないなんて事はないのだ、人は望遠鏡を覗き込まなくても見えないものを見ようとするものである。そうして見えたものの欠片の一つか二つ、彼のゲームにも取り込まれている筈なのだけれど。
この空気神社は世界に類を見ないものではあるらしい。宗教色はないが神社と名乗るモニュメントが許される空気が日本にしかないのかもしれないし、本当に目に見えないものは存在しないので認識していない人達が多いのかもしれない。けれど朝日町には空気に感謝する空気神社がある。だから行ってみるといいワンジナちゃん、そして機会があればうちのカルデアにも来てください。