AB社コラム第54回:新しい価値観で作る組織の「則」とは?
いま、改めて電通の「鬼十則」が注目されているようです。
「鬼十則」について書かれている記事やコラムなどを目にするようになりました。
そこで今回は、私が思う「鬼十則」などの「則」について書き留めておきたいと思います。
どんな組織にも「則」は必要。
日本は長らくデフレが続いてきましたが、最近はインフレ傾向で金利も上がっています。今後、毎年1〜2%はインフレとなる国になるでしょう。
そうなると、貯蓄も吐き出さないと損になるばかり。
お金を貯め込んでいる人は不利になり、若くて持っていない人が有利になります。
若い人たちは、これまでとは異なる、新しい価値観を持って働き始めています。
特に都市部では終身雇用は崩れつつありますよね。
しかし、「国立大学を出て公務員か地元の有力企業(主にインフラ関係)に勤める」ことがベストの選択だと信じている人も、地方を中心にまだまだたくさんいます。自分は違っていても、親御さんがその選択を信じていれば、それに従わざるを得ない人もいます。
つまり、二極化が進んでいます。
新しい価値観を持つ若い人たちは、旧態依然の企業とは異なる、新しい組織を作っていきます。
新しい組織はいろいろなことを変えていきますが、
「これだけはやってはいけない」
という決めごとである「則」は、必ず組織に必要です。
鬼十則は、旧態依然の仕事にしがみつく免罪符にもなる。
「則」といえば、電通の「鬼十則」が知られています。
「鬼十則」は行動指針で、
要は仕事を全力でやりましょう!ということが10項目にわたって述べられています。
「鬼十則」は、ある一面では有意義で素晴らしい則だと思うのですが、
諸刃の剣でもあると私は考えています。
それは、イノベーションについて一言も書かれていないから。
新しい価値やモノを作っていくことに対する言及は一切ありません。
イノベーションを起こすことは大前提だという捉え方はできます。
そうだとすれば、イノベーションを鬼十則に沿ってやっていきましょう!という指針ということになります。
しかし、旧態依然の仕事を全身全霊でやりましょう!という指針として使うこともできるのです。
自信を持って
摩擦を恐れず
心を込めて一生懸命に
既存の事業をただひたすらにやる!
そう考えると、鬼十則はイノベーションを起こさず、旧態依然の仕事にしがみついている人の免罪符にもなってしまいます。
「則」は、若い人だけでなく経営者も経理のおじさんも守るもの。
新しい価値観で作っていく組織にも、行動指針となる「則」は絶対必要です。
しかし、鬼十則のように「全身全霊で仕事を一生懸命やりましょう」の「則」ではダメです。
「イノベーションを起こさなければ、仲間とは認めない」
ということを盛り込みましょう。
「新しい価値を生み出せないか、1日に1回は考えること」
というような行動指針=「則」を立てるのです。
この則は、経営者や管理職も含めて守らなければなりません。
若くて体力がありアタマが柔軟な人だけでなく
経理や人事のおじさんもおばさんも守らなくてはなりません。
そして、則を守れない人は
排除する仕組みも必要です。
「則を守らない人は、うちの組織を辞めてください」と言える仕組みを作っておくことがベストです。
日本の組織はそれができないことが多いのですが、
欧米の組織では普通のことですよね。
新しい価値で作っていく組織ならば、できるはずです。