AB社コラム第61回:投資で負けない具体策③〜損切りの考え方
「常識ある優等生」が投資に負けない方法についてお話するシリーズの第4回です。
これまでの投資についてのシリーズはマガジンにまとめました。
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今回は投資の管理についてお話します。投資とは、案件ごとのPL管理です。PL管理の要諦は「損切り」と「利益確定(利確)」のタイミングです。
作戦5:損切り予定額を決めておこう。
「損切り」とは、損失を抱えた状態の投資案件をあきらめて売却し、損失を確定することです。
この「損切り」を、あらかじめルールを定めて、どのくらい損をしたら売却してロスカットするか、決めておきます。
しかし、このルールを定めて厳格に適用することができる“優等生”は、非常に少ないのです。
ルールは自分で決める。
まず、損切りルールは、案件ごとに必ず自分で決めましょう。
空気を読んで同調しないことが大切です。
例えば、ネットで人気のYouTuberなどが「損切は10%」と言っていて、それを試してみるのは良いでしょう。しかし、その10%が自分のコンディションに合っているかどうかは、自分で決めなければなりません。
同調しないで、自分で決める。
優等生は、同調至上主義なので、これがなかなか難しい。
優等生の方々は、空気を読んで悪目立ちせず、周囲と同調していれば大損しないことを知っています。周囲と同調していれば安心安全で、「何かあったらどうするんだ」と言い続けられる人が企業で出世します。
しかし、以前にリスクとリターンについての話をしたときにも説明しましたが、何かを得れば何かを失います。
同調していれば安心、という優等生らしい人格を捨てて、投資のときは周りの目を気にせずマイルールで突っ走る別人格になりましょう。
投資案件の原価は取得価額ではなく、損切り額!
損切りルールを決めるときは、
投資した案件の原価は、取得価額ではなく、損切り額。
あらかじめ損切りする予定価格を決めておき、その予定価格が原価である。
と考えることを提案します。
簿記会計とは明らかに異なりますが、投資は別人格なので会計ルールも変えます。
例えば、あなたは損切り額をマイナス20%と決めています。ある日、株を100,000円で買ったとします。
このとき、株の原価は100,000円ではありません。損切り額の80,000円です。
原価は80,000円なので、株がこの価格まで下落したとき、損切りします。
原価は80,000円なので、損益ゼロです。これ以上下がると赤字になるので、さっさと売却します。
「80,000円で売ると、20,000円損してしまう。損が確定するのは嫌。また値が戻ることもありうるのだから、売るのはやめよう」
と、含み損を抱えたまま塩漬けすると、確かに上がることはあるかもしれませんが、さらに下落することもあります。
しかし、80,000円で売ればその金額が戻ってくるので、他の投資に投入することができます。
優等生の完璧主義は、投資には向かない。
優等生はここでオートマチックに損切りできません。
積極的な失敗ができない、と言い換えることもできます。
我々勤勉な日本人は、「一度失敗したら、それでおしまい」「コツコツこそ美徳」と、子どもの頃から刷り込まれています。
日本人は失敗したら撤退してやり直せば良い、という考え方を、そんないい加減なことではダメだ!と徹底否定するように教育されてきました。
完璧主義なのです。
そのため、日本ではディベートは成立しません。相手の誤りを指摘するだけで、「全人格を否定された!誹謗中傷だ!ハラスメントだ!」となるからです。
確かに、完璧主義の優等生精神は、大きなメリットがあります。このおかげで、日本は高品質で安価な製品を大量生産することができて、20世紀後半に世界有数の豊かな国になることができました。
しかし、この完璧主義は、残念ながらデジタル化には向いていませんでした。
デジタル化に向いているのは、トライ&エラーの繰り返しです。プロトタイプ(試作品)でもどんどんマーケットに出し、不都合や不具合をその都度修正(アップデート)していきます。
このやり方が世界を席巻したときも、日本人は「完璧な製品やサービスが完成してから発売する」という縛りを捨てきれず、多くの市場で競争に敗れました。それがここ30年の状況です。
投資の世界もデジタル化と同様に、このトライ&エラーが成果を生みます。
完璧主義だからこそ生じる「損切りしたら負け」の精神は、投資の妨げにしかなりません。
「損切りなんかしたら、自分が間違っていたと指摘されるのと同様に、全人格を否定された気になる」という優等生気質を持ち続けたままでは、投資の世界では生き残ることはできないと、肝に銘じましょう。