AB社コラム第20回:必要なトレーニングとは、続けられる最大の負荷をかけ続けること。
前回は、日本はプロセスを大切にする文化であること、国をあげて平均点を取れる“軽自動車”を量産してきたことをお話しました。
しかし、日本にも「デジタル&グローバル」の波が押し寄せ、そこで日本は後塵を拝しました。そのため、日本の会社員にも「新しい仕事を作れ」「新しい仕組みを構築して組織を変えろ」と、諸外国を見習ってExchangeすべし、の大号令がかかっています。
しかし、そのトレーニングは日本人には向いていません。慣れないトレーニングをするとどうなるのか?について、今回はお話します。
誰でも1度はチャンスをつかむことができる。
若くして成功を収めた世代のトップランナーの方々は、いわゆる“意識が高くて上り詰めた人”との印象が強いですよね。そんな輝かしい方々は、「チャンスをつかめ!遠慮はするな!」と言います。
本当にそのとおり。誰にでもチャンスは転がっていて、それをつかみ取った人が、違うステージに行けるのです。
そして、誰でもチャンスを1回はつかむことはできます。
例えば、戦後の日本は、長く自民党が政権を握ってきましたし、現在も続いていますが、野党がワンチャンスをモノにして政権をつかんだこともありましたよね。
しかし、それは続きませんでした。
また、余談に近くなりますが、私はソフトバンクホークスのファンなのですが、常勝軍団と言われ、去年まで日本シリーズ4連覇、Bクラスに落ちることは近年ではほぼありませんでした。
しかし、今年は怪我人が相次ぐなど、噛み合わない1年。
常勝軍団ホークスがつまづくというチャンスを、オリックスは見事につかんで25年ぶりのリーグ優勝を達成!オリックスファンの知人は狂喜乱舞。
しかし、それは来年以降も続くでしょうか?ワンチャンスをつかむための練習や試合運びはできても、オリックスが常勝軍団になるための道のりはまた違うものです。ファンもこれから常勝軍団になるためには、今年とは違う心持ちが必要でしょう(笑)
分相応を超えるトレーニングは、心も体もケガをする。
ワンチャンスをつかみ、今までとは違うステージというポジションを手に入れることはできますし、それは喜ばしいことです。
しかし、その中で戦い続けることが必要です。
さらに上に行くトレーニングをしようと考える人が多いでしょうが、まずは得たポジションの中で続けることができるトレーニングをするほうが良いです。
続けることができるトレーニングとは、限界まで追い込みすぎずに、明日もあさっても同じ強度を続けられるトレーニングのことです。
限界まで量で追い込むと、次の日は仕事になりません。大事なプレゼン前や納期前に徹夜作業で追い込み、なんとかプレゼンや納品は終わっても翌日は仕事にならなかった、ということは誰でも経験していますよね。ごくたまになら良いですが、毎日は続きません。
量で追い込むトレーニングは毎日できませんが、量ではなくて質で追い込めば、寝て休息できる時間を確保できるので、次の日は回復できます。
これは仕事だけではなく、スポーツでもそうですよね。例えばフィジカルを鍛える場合、限界まではもう少しできたな、というところで抑える。そうすれば続けられるからです。
この続けられる最大の負荷が、「分相応」ということです。
ワンチャンスで得たポジションからさらに上に行こうと、分相応を超えたトレーニングをすると、壊れます。
高校の陸上大会でワンチャンスをつかみ、素晴らしいタイムを叩き出して、箱根駅伝の常連校にスカウトされた。強豪大学の陸上部というポジションを手に入れた。それは素晴らしいことです。
しかし、そこからレギュラー入りを狙って分相応を超えたトレーニングをいきなり自分に課し、故障続きでロクに走れずに大学時代を棒に振った、というような話は、よくあります。陸上に限らず、野球でもサッカーでもどんなスポーツでも。勉強にも同じことが言えるかもしれません。
仕事でも、チャンスをつかんで得たポジションで、分相応を超えたトレーニングをすれば壊れます。
心も身体もケガをして、会社に来なくなる、長期休職せざるを得なくなる。
近年よく聞くようになった、どこの会社にもあるケースです。
常勝を全員に義務付けることは間違っている。
続けられるトレーニングを心がけていれば、人は徐々にその最大値が拡大しますから、違う結果になっていたかもしれません。
常勝軍団を義務付けられるミッションを、全員に与えることは間違っているはずです。しかし、それに気づかずに全員に「新しい仕事を作れ」「新しい仕組みを構築して組織を変えろ」とExchangeを強要しているのが、今の日本です。
とはいえ、今の日本の組織のあり方では、無理なミッションを与えられがち、与えざるを得ないような環境であることも、事実。
そこで次回は、分相応のトレーニングを続けるためには、どのような組織にしたら良いのかについて、お話します!