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わたしたちの結婚のかたち - 選択的夫婦別姓賛成派カップル -

このたび結婚しました。

とはいっても、日本人の9割が想像するであろう「(名字が)●●になりました」の報告ではないです。
結果的に、相手もわたしも名字を変えないことを選択しました。

今回はその経緯について発信してみることにしました。選択的夫婦別姓に関心のある人もない人も、「こんな夫婦もいるんだな」と覗いてみてください。

一生名字を変えないかも、と思った日

わたしが名字を変えないことを考え始めたのは、7年前に夫さんとお付き合いを始めた初期の頃。彼の名字が珍しすぎて、電話などで聞き取ってもらえなかったり、目立ってしまったりすることを避けるために、レストランなどで偽名を使う場面を出会ったときから見てきた。

彼は折に触れて「○○(わたしの名字)、いいなあ」「どうも、○○△△(夫の下の名前)です。ほら、違和感ないでしょ」と言っていて、「あれ?もしかしてわたしは一生、○○姓で過ごせるのだろうか」と思うようになった。

もしそうだったらすごく助かる。彼の名字も珍しくて好きだけど、わたしの下の名前と組み合わせたらなんだかキラキラになりすぎてしまうし、何より上述した通り実用的ではない。

彼の気が変わる前に、この時点で結婚してしまっていたら良かったのかもしれない。でも、次第に彼も自分の姓に愛着を持ち始める。

議論はいつも平行線

そのうち、わたしが望んだ日にプロポーズしてもらった。

結婚が決まる前から「名字どうする?」という話をこちらから持ち出していて、わたしの両親からは「(彼が名字を変える可能性も含めて)好きにしなさい」と言われてきた。

ちなみに、お互いの兄弟姉妹はすでに結婚して名字を変えていて、もし自分が名字を変えたら生まれ育った家の名字は消滅する、という条件は同じ。結婚が決まったときから、彼に「ご両親に名字について意向を確認してきてね」とお願いしてはいたけど、のらりくらりと交わされていた。

彼はわたしの名字をうらやましがるわりに、自分が名字を変えるという実感はなさそうだというのが節々から伝わってきていた。
例えば、「女性は結婚が決まったらLINEの名前から名字を消して下の名前だけにすることが多い。やってみたら?」と言ってみたり、飲食店の店頭に置いてある入店待ちリストには、お付き合いを始めるまで使っていた偽名の代わりにわたしの名字を書くようになっていたけど「やばい、これからは使えなくなる~」と言ってみたり。

わたしからしてみたら、「じゃあ今までの偽名も使うなよ」「偽名を名乗るくらいならこちらの名字に変えたら?」という感じ。

結婚指輪が完成したタイミングで両家顔合わせを行い、その席で「名字がまだ決まっていない」とわたしから伝えた。うちの母は「じゃあ○○(わたしの名字)で」と冗談めかして言った。相手のご両親(うちの両親より8歳くらい年長)はその場では何も言わなかったので、内心「生意気な嫁だと思われないだろうか」と心配だった。

この日、婚姻届の証人欄には両家の父親にサインをしてもらい、この時点では結婚予定日までにどちらかの姓に決めるつもりでいた。
でも、この頃すでに選択的夫婦別姓の話題をニュースなどで見るたびに、彼もわたしも「別姓がいいなー」と言っていたと記憶している。

おめでたいはずの結婚。なぜこんなに苦しいのか

結婚2か月前

彼は仕事では現姓を使い続けたかったらしく、職場に旧姓の通称使用について確認してきてくれた。しかし、戸籍名じゃないと働けないとのこと。メールアドレスも取り直しになる。

一方、わたしの現職は「好きな名前で働いてください」という自由な環境で、事情があって好きなサッカー選手の名字を借りて働いていた人もいるくらい。旧姓使用ももちろんOK。
わたしは会社員以外に個人事業もしていて、そちらは別名義(秋月陽向)を使っている。

これを読んでいる方は「じゃあ本名の名字くらい譲れよ」と思われるかもしれないけど、そういう問題ではないし、彼はわたしにそれを強制してくることはなかった。

彼は仕事関係で出会った人で、わたしは今でも一日一回は彼のことを名字で呼んでいる。そのため「彼の姓は彼の名前だ(=わたしのものじゃない)」という感覚は常にある。

もし本名の名字を変えるとなると、自分が彼の付属物みたいに思えて嫌だった。例えば病院とかで「他人の名字」で呼ばれるのを想像しただけでもずっと憂鬱だったし、「改姓(=嫌なこと)」のために1日以上手続きに走り回らなければならないなんて…と思い悩んで夜寝るのが遅くなる時期もあった。

(ちなみに彼は各種手続きに1日以上かかることはそもそも知らないし、引越しの住所変更と同じで徐々に改姓すればいいと思い込んでいた。そこで初めて、男性向けの改姓ノウハウみたいな情報がネット上にとても少ないことに気づく。「すぐに改姓手続きしないと、給与振り込みができないとかの不都合があるんだよ」と教えたけど、半信半疑の様子。「改姓が大変だ」って既婚の同性の友達と話すこともないだろうし、当然かと思う。)

こんな憂鬱な気持ちをなぜわたしだけ持っていて彼はあんなにのんきなのか、かといって彼にこれを味わってほしいわけではない。二人にとって大切な日、おめでたい日のはずなのに、どんどん苦しくなっていく…。

結婚1週間前

とうとう結婚まで1週間を切った。婚姻届の自分たちの欄は鉛筆で記入し、準備は万端。でもどうしても「夫の氏」「妻の氏」のどちらにもチェックを入れることができない。

婚姻届提出予定の日、職場には数か月前から有休の申請をしていた。しかしその日が近づくにつれて苦しみは深くなる一方。

その日どんな過ごし方になるんだろう。どちらかが名字を変えるなら、その日一日はまず役所に行って、次はどこそこに行って、…あ、彼が名字を変えてくれるなら、ちゃんと流れをレクチャーしとかなきゃ。

何パターンものシミュレーションを脳内で重ねていた。こんなことをしていたら、脳が疲れてあまり眠れなくなる。

その時期から、職場のリモート朝礼で、結婚後の名字に悩んでいることを毎日のように話すようになった。すると、上司の周りにも別姓(事実婚)カップルがけっこういるらしく、「みんなそれぞれ事情があるんだね」「我々男性は名字を変えることをどこか他人事だと思ってしまっていた。くぎを刺された気分」「体制に負けず思想を貫いたら?」的なことを言ってくださった。

そこで、事実婚の手続き方法について経験談が書かれたInstagram投稿を見返した。以前に一度「こういう選択肢もあるよ」と彼に見せたことがあるものだ。彼はその当時「ふーん」といった反応で、たぶん覚えていないだろうなあと思い、もう一度見せてみることに。

彼が仕事から帰宅したタイミングで、「名字の問題に決着をつけよう」と切り出した。まずはお互いの「改姓したくない」という意思を確認。じゃあどうする?と彼に問いかけたら、「(手続きは)見送る」とのこと。あー、やっぱり事実婚のこと忘れてるな。

改めて例のInstagram投稿を見せながら、「世帯合併」という手続きがあるんだよ、と説明する。今度は現実感を持って受け止めてもらえたようで、「うんうん!」「じゃあ(当日はわたしが手続きに行くのに)ついていく」と。なんだか5歳児を相手に話しているみたいだけど、あっさり合意形成はできた。

もう一つ心配があるとすれば、これが彼のご両親に受け入れてもらえるのかということ。
うちの両親は今までも、わたしが決めたことならなんでも納得してくれていたので、前日に念のため家族LINEで報告。やっぱり「へえ、時代は変わったねえ」と簡単に報告完了。
彼には「ご両親に説明しといてね」と頼んだけど、連絡するそぶりすらなく…。

わたしたちが選んだ結婚のかたち

当日、役所に行って「世帯合併の手続きがしたいんですけど」と言い、書類の書き方を教わる。まあ住民票くらい彼に花を持たせてあげようと思い、彼を世帯主に、わたしを「妻(未届)」に。

手続きが終わったとき、窓口の人が「おめでとうございます」と言ってくださった。ということは、この方法を使う人って意外とけっこういるのかな。

こうしてわたしたちは別姓夫婦デビューを果たした。

その後は、二人とも改姓手続きも何もしなくていいので、「休日にできないことをしよう」とただただ楽しんでお祝いすることができた。

その帰り道、彼のご両親への報告がまだだと聞いて、「両家ファミリーLINEでのわたしからの報告が先になるよ」と言うと「いいよ」とのこと。いいよじゃなくてちゃんと自分で報告してほしかったんだけどな。

当日は二人のお付き合い記念日であること。結婚1週間を切っても名字が決まらなくて、婚姻届の代わりに世帯合併の手続きをしたこと。サインしてもらった婚姻届は、法律が追いつくまで大事に保管しておくこと。
絵文字も交えて明るく丁寧に文面を作り、その日撮った二人の写真とともに少しドキドキしながら送信した。

すると、うちの両親はもちろん、彼のご両親からも好意的なメッセージが届いた。

「今は、自由な時代。その喜びを感じながら、仲良くね。」

この人と結婚してよかったなあ。この人を育ててくれたご両親にも感謝。

結婚後、まだ両家の親戚には会っていないので何も伝えていない。何か言われるかもしれない。
たとえ同年代の女性であっても、結婚したら当然女性が姓を変えるはずだという古い価値観を持った人はまだまだいる。

それでも、こうやって少しずつでも発信することで、空気を変えることができればと思い、筆を執ることにした。
思いがあふれて一気に書いたので、長文乱文かもしれないがご容赦いただきたい。

最後までお読みいただきありがとうございました!

お読みいただきありがとうございます。まだ書き始めたばかりですが、サポートいただけますと大変喜びます!