二重手術、埋没法のお話し⑩
前回の記事はこちら↑↑↑
この記事のまとめ
一般の方にはどうでも良い、同業者でも多くの人は( ´_ゝ`)フーン程度の、多交差6点埋没法の手術に関する本当に細かい話を書きました。
重瞼線のマーキング
シミュレートに従い必ず皮膚割線上にマーキングします。
見極めにくい時は、シミュレートに使ったブジーまたは重瞼棒をそのまま重瞼線の外側端に滑らせて患者に上方視させ、術者の指先を患者の正中上方に上げ注視させる。そのままゆっくりと指を下げてやや下方視させると確認しやすいです。
瞼板の確認
眼瞼を翻転し、瞼板の大きさを確認します。両端に柔らかい部分があるのでこれは無視し、しっかりした厚みのある部分の両端を尾毛直下辺りにマーキングします。ここから重瞼線に鉛直に下ろした点が③と④の点になります。
皮膚側のマーキング
マーキングした線上で上述の③-④間を5等分し、点⑥②①⑤とする。あまり無いですが、5等分で各点の間がが5mmを超えてしまう場合は②-①間を③-④の中点で5mm取り、その内外5mmに⑥、⑤を置きます。
麻酔
入室から15分ごとに数回ベノキシールを点眼します。消毒、ドレーピングなど準備が済んだら皮膚側から局所麻酔をします。皮内〜皮下のごく浅い層に注入による膨隆が隣の刺入点との中間を超えない程度にごく少量ずつ、エピネフリン加1%リドカインを32〜34G針で注入します。瞼板を翻転し、瞼板上縁の僅かに上方の結膜下にも皮膚側よりやや少量局所麻酔薬を注入します。瞼板短径を約10mmとすると、後の運針・通糸の項で述べるが①’〜⑥’は瞼板上縁から4mmの範囲に概ね収まります。この範囲であれば結膜-瞼板下に局所麻酔を注入せずとも鎮痛は得られます。操作中に麻酔の効果が切れるのを避けるため、麻酔〜通糸は必ず1側ごとに行います。
運針と通糸
麻酔が済んだら27G針または23G針で①〜⑥を浅く穿刺します。この際は慢心せず角膜保護板を使いましょう。①’〜⑥’は原則①〜⑥の真裏。ただしマイボーム腺炎を避けるために瞼板下縁から6mm開ける必要があるので、やや上方となる場合もあります。真裏の位置を確認するために、最初の運針(①’→②’)のための翻転の際はアウゲ鑷子を用いています。
さて、通糸の順序は①’→②’→針持ち替え→①’→①→針持ち替え→②’→②→③→針持ち替え①→④→④’→⑤’→⑤→⑥→⑥’→③’→③→結紮なんですが、実際の運針では①→④や⑤→⑥など皮下を通すときは①入→⑤出→⑤入→④出、⑤入→①出→①入→②出→②入→⑥出の様に途中の点からも針を出し入れします。
これは正確に予定重瞼線の下を通すことと、なるべく浅い層を通すためです。極めて稀ではあるのですが、穴から出す際に針ですでにそこを通っている糸を切ってしまうことが有るのでご注意を。いや、注意してたって切れちゃう時は切れちゃうんで、その時は患者さんに謝ってやり直すしかないですね。
前回の記事で書いたことの再掲になりますが、テンションの調整に関してです。何段階かに分けて調整します。まず①→④(ここは一応見とこうぐらい)、④’→⑤’と⑤’→⑤で瞼板の中を通すことの抵抗で①④間のテンションがほぼ決まります。同様に一番長い⑤-⑥間のテンションは、⑤→⑥ の通糸そのもので様子を見ながら、⑥→⑥’と⑥’→③’で決めて、最後に結紮で②-③間のテンションを決める感じです。薄い瞼なら閉瞼では全工程で凹みが全く出ない程度にします。厚い瞼に関しては詳しく書きましょう。①-④間のテンションは⑤’→⑤を通糸した時点でピンと張った感じはあるが陥凹にはならない程度にします。③’→③の通糸後は①-⑤間は僅かに陥凹し、②-⑥間はギリギリフラットになるよう調整します。最後に結紮で②-⑥間が僅かに陥凹するよう調節します。
結紮
玉結び
2本まとめて裁縫の玉結びのように1回結紮します。この時結ぶ輪の中に27G注射針を入れて結び目を皮膚に向かって落として行き、皮膚に軽く押し当てた状態で糸を引きテンションの調整をします。
男結び1回目
玉結びを男結びで固定します。1回目で玉結びの注射針の分のたわみをとります。1回目で締めすぎてしまうと玉結びで決めたより強いテンションがかかってしまうので締めすぎないように慎重に。
男結び2回目
ここでしっかりとロックします。以前ポリプロピレン糸を用いていたときは玉結びの後1回結ぶだけで固定できていましたが、アスフレックスは糸表面の滑りが良いのが原因か、何度かほどけてしまった事がありしっかり男結びするようにしています。
理屈の上では僅かに結び目が大きくなりますが、実際に問題になることはまず無いでしょう。
糸を結び目のすぐ上で切って完成です。
後書きと次回予告。
長々と書き続けてきた埋没法のお話もこれでやっとお終いです。
次は切開法や眼瞼下垂の手術の話を書こうと思ってます。まずは私が小切開法をしない理由あたりから。
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