ラブライブ!スクールアイドルミュージカルの感想
ラブライブシリーズの初舞台化、ミュージカル作品ということで話題になったスクールアイドルミュージカルの感想です。この先はネタバレしかないので観劇後に読んで下さい。そしてまだチケットを買ってない人は今すぐ買ってください。
ラブライブ×ミュージカル=最高のエンターテイメント
ラブライブとミュージカル、元々親和性が高いとは思っていたけれどここまでとは。考えてみたら当たり前だが。ラブライブ!1話が放送された当時、オタク達は校門の前でススメ→トゥモロウを歌う穂乃果達を「なんか突然歌いだしたw」とネタにしていたけれど、ラブライブはあの頃珍しかったアニメにミュージカルを取り入れた作品で(ディズ○ーとか海外作品では普通)だから衝撃的だったのかもしれない。まあオタクくんはミュージカルとか見ないしね……。
何が言いたいかと言うと、ラブライブの世界をミュージカルで表現するという試みは、今までなんでなかったの!?というくらいハマっていた。冒頭はダンスと歌の音楽に乗せて滝桜女学院と椿咲花女子高校の校風、今作のW主人公である椿ルリカと滝沢アンズの生い立ちが語られる。
伝統と気品を大切にする進学校である椿咲花女子高校。理事長の娘であるルリカは常に学年トップで成績優秀で他の生徒からの人望も厚い。亡き父の「お母様を支えなさい」という遺言を守り将来の理事長として学業に励む。けれど、そんなルリカには秘密があった。同じ女子高生でありながら人気急上昇中のアイドルグループのセンター、滝沢アンズを推しまくっているオタクだったのだ!ルリカは推しのことを考えすぎるあまり学業に翳りが…けれど、同時にこのまま母親の期待に応え続ける人生に疑問を持つようになる。例えそれが亡き父との約束を破ることになったとしても。
一方の新進気鋭であり芸能コースを新設した滝桜女学院。人気急上昇のアイドルグループを切り札に世間の話題を攫っていた。理事長の娘である滝沢アンズはセンターとして売り出されていたが、メジャーデビューを控えて伸び悩んでいた。皆にセンターを狙うチャンスが与えられるべきという部長やチャンスがあれば、とセンターを狙う部員に押され、アンズは迷ってしまう。自分はセンターとして相応しいのだろうかと。そんな時、理事長と部長の会話から、自分が理事長の娘だからセンターに抜擢されたことを知り、ついにはアイドル部と学校から逃げ出してしまう。
アンズが転校したのはなんと、椿咲花女子高校。ルリカ達の学校だった。有名人が来て大騒ぎになる名門進学校。そして、推しとまさかのクラスメートになってしまったルリカはやっと勉強以外のやりたい事を見つけた。
「アイドルをやろう!アンズちゃん、私たちの部長になってください!」
とはいえ、アイドルから逃げて来たアンズが了承するわけもなく、理事長にも猛反対を受ける。椿咲花女子高校は年々入学者が減っており廃校すら噂されるような状態だったが、理事長としては伝統を大切にしたかったのだ。
が、娘を奪われた滝桜女学院の理事長が乗り込んで来た事で更なる展開を見せる。堅物で頑固な理事長は犬猿の仲である滝桜女学院の理事長との言い争いの中で「椿咲花にアイドル部を新設する、初代部長は滝沢アンズだ!」と宣言したのだ。
嫌がりながらもルリカのためにと最後には手を差し伸べた幼なじみのユズハ、ルリカのことが大好きな後輩のユキノ。お調子者でたまに良いことを言うマーヤと運動神経抜群のツッコミ役ヒカル。そして、ルリカの熱意に押されたアンズ部長の6人で椿咲花アイドル部の活動が始まる──。
ここまでが第一幕。間の休憩中、これはすごいラブライブだ!!と思わずにはいられなかった。新しいシリーズが始まるワクワク感。アニメだと1~3話くらいだろうか。それが舞台の上でリアルタイムに、ダンスや歌を挟み展開していく。ラブライブはアニメの感動を更にライブでも体験できることで人気を獲得したと思っているのだけど、この2つを同時に味わえてしまうスクールアイドルミュージカル。恐ろしいコンテンツが誕生したと感じた。
ラブライブの定番、熱い青春物語
椿咲花アイドル部は初心者ながらもアンズの指導でなんとか曲を完成させる。初ライブに向け団結した6人の元に滝桜の部長ことミスズと、アンズに憧れいつも気遣っていた後輩のトアが現れる。
2人はアンズに頭を下げ、謝る。
ひどいことを言ってしまった、居なくなって気づいた、滝桜のセンターはアンズだと。戻ってきて欲しいと。
滝桜の部員達はアイドルに本気が故に仲間でありライバルとして切磋琢磨していた。けれど、そんな彼女達をまとめあげていたのはアンズだったのだ。現にアンズを失った滝桜はギクシャクしメジャーデビュー発表を行う文化祭ライブを前にまとまりきれずにいた。
今更何を、自分勝手だ、と憤るルリカ達。
アンズは2つのチームの間で揺れる。が、母である滝桜の理事長が心労で倒れたことを知り、戻ってしまう。落ち込むルリカ達にミスズ部長はお詫びになるか解らないが、と滝桜の文化祭のステージでライブを提案する。そこでプロモーションをすればルリカ達も5人でアイドルになれると。
だが、アンズがいないのでは恥をかくだけ、自分達だけではムリだとルリカ以外の4人は弱気になってしまう。翌日のストリートライブ、会場に現れたのはルリカだけだった。
ルリカはひとり、6人で作った曲、「君とみる夢」を口ずさむ。そこに現れたのは一番アイドルに乗り気でなかった幼なじみのユズハだった。アンズに嫉妬していたと胸の内を明かした上でルリカを支えたいと決意を口にする。ユキノ、マーヤ、ヒカルの三人もルリカの元に集まり初ライブを成功させる。
下手くそでもいい、普通でいい、学校でアイドルをする、彼女達は『スクールアイドル』なのだから!
そして、招かれた滝桜女学院の文化祭。前座としてステージに上がる椿咲花アイドル部は、ルリカの提案によってとんでもないパフォーマンスをやってのける。6人の曲である「君とみる夢」をアンズのポジションを空けたまま歌い始めたのだ。
当然、ポジションは不自然に空き、アンズパートの歌詞は抜けたまま。
舞台裏で滝桜女学院のアイドルとして見ていたアンズは動揺し、迷う。ルリカ達と母の大切な滝桜女学院。どちらを選ぶのか。
その時、ミスズ部長がそっと肩を押した。
「私、行かなきゃ!」
アンズはルリカの元に駆け寄り、隣に立つ。そこには母があんな笑顔はひさしぶりに見たと言った笑顔があった。ルリカとアンズのWセンターで完全版となった「君とみる夢」が披露され文化祭のステージは盛り上がりを見せる。
「滝桜のメジャーデビューどころじゃなくなっちゃったわね」そう嘆きながらもアンズの母とミスズ部長はどこか嬉しそうだった。
一度は迷うものの、ルリカを支えると駆けつけた幼なじみのユズハや仲間達。そして例え普通でも輝ける『アイドル』ではなく『スクールアイドル』とはなんなのか。この青春物語はラブライブシリーズの根幹であるテーマなので、それを舞台の上で完璧に表現したキャスト、演出、脚本が天才すぎた。。。
なにより、2つのチーム、滝桜のメジャーデビューの夢とルリカ達と叶えるスクールアイドル。どちらを選ぶのか。アンズの悩みはまるでサンシャインの10話のようで。それでも迷いを振り切り、ひとり欠けた状態で披露された「君とみる夢」をあの場で完成させた姿はAqoursの東京ドームでようやく完成した「想いよひとつになれ」を思い出さずにいられない。
舞台の上でこの瞬間に繰り広げられるラブライブシリーズ史に残る名シーン、名曲に涙してしまった。
親子の物語でもある
学生時代を描いた作品を大人の目線でも見る歳になってしまった。
ルリカもアンズも母親の期待に応えようと努力するとても「良い子」だ。けれど、子供って成長の課程で必ず「親の期待」からずれていくものなのではないだろうか? それは親に守られる「子供」が自分の足で歩いて行く「大人」になるために必要なプロセスだから。今作はそういう瞬間をスクールアイドルを通して描いていたように思う。
キョウカ理事長もマドカ理事長も娘の幸せを思うが故に行き過ぎている部分があって。子供の成長に親も成長させられるというか、寂しくもあり、嬉しくもある複雑な感情を表現されていたのはやはりベテランのキャストのお二人だからというか。圧巻でした。歌も素敵すぎます。。。
まとめ
今しか無い最高のエンターテインメントなので、観られて良かった。観ていない人に観て欲しい。
あわよくば、さらなる展開も欲しいです。
唯一CDに収録されているテーマソングの「未完成ドリーム」はこれがラブライブ!というスクールアイドルミュージカルのテーマにふさわしい一曲ですが、それ以外の「きらりひらり舞う桜」「君とみる夢」など名曲だらけなので、CDを出して欲しい………。切実に。
あとは追加公演とか続編とか。難しいのかな。
ルリカ役の堀内まり菜さん、アンズ役の関内優那さん。全てのキャストの皆様。演出、脚本、楽曲、スタッフの皆様が作り上げた最高のエンターテインメントでした。
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