絵描きの個展ちょぴっと裏話とおだてられて木に登りそうになる話(個展の話3)
またしても前回の個展作品そのものの裏話記事からだいぶ間が空いてしまった。
でも、焦らずにおそろしいまでのマイペースで、記録として投稿してしまおう。
読んでいただけましたら木に登って悦びます。
個展の話 1・2
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☆あたしのことは龍神様とお呼びなさい
あたしは、いつも肝心な時にうっかり雨を降らせてしまう。それも普通の雨ではない。当たったら痛いほどの激しい雨なのだ。
今回も搬入展示の7月6日、ピンポイントのその時刻、狙ったようにものすごい雷雨に見舞われたのだ。
トラックから運び出される作品たちは、一応毛布なんかかけられて、「怪物」が毛布に包まってると思うと少し可愛いかった。
ちなみに搬出時は雨を免れたが、翌日自宅に作品たちが戻ってきたその時に、豪雨ではなかったが雨が降ってきた。
搬入出の業者さんが「弘生さんは雨女ですよね」と遠慮なく言った。
あたしも業者さんお二人に、冷たいペットボトルのコーヒーを渡しながら、「ええ、子供の頃からそうなんです。妖怪アメフラシなんです」と遠慮なく言った。
そしたら「いいじゃないですか、雨乞い要らないですね」と遠慮なく言うので、「これからあたしのことは龍神と呼んでください、龍神は女神ですから」と遠慮なく言っておいた。
☆神と女神の助っ人到来
あたしには敬愛して止まない二人の強い味方がいる。
わざわざこの展示のために時間をやりくりして、あたしの空間を創り出すお手伝いに来てくれた、あたしの目指す絵描きの大大大先輩だ。
見事なゲリラ豪雨に見舞われたけれども……
作品をまず床に置き、ギャラリー空間を丸め込んだ空気の流れを創り始めたその時から、あたしたちの会話や動き、エネルギー、作品があちこち動かされる軌跡が、この空間に記憶され作品そのものになってゆくのを感じる。
実際作品を置きながら形造ってゆくので、LIVEで絵を描いているのと同じ感覚だ。
絵そのものが、ここでは絵の具になる。
作品は上下縦横どうにでも角度を変えることができる。
絵たちが囚われながらも息づいてどんどん蠢き出すための流れの余白を作るために、搬入した作品のうち数点はバックヤード送りにした。
つまり一週間暗いところで静かに眠っていてもらう。
大先輩から山ほど神的で悪魔的な的確で怪しげな助言をもらう。
さらに釘を打ってもらったり脚立に上がってもらったり、大先輩を山ほど働かせてしまった最高の結果、観客からは見えないパフォーマンスの中で、あのような「あたしの産土と怪物」の世界が出来上がりました。
出来上がった時の高揚感……それは苟且でもあたしが在ってもいい場所をみつけ出した興奮と安心が入り混じっていました。
☆あたしの世界と繋がってくれた
ありがたいことに、多くの感想や意見や疑問をいただきました。
訪れた殆どの方が口にしたのは「エネルギーを感じる」「パワーが溢れてる」です……恥ずかしいったら恥ずかしい。
当の本人、エネルギーもパワーも持ち合わせていない。ただ、瞬間的な爆発を時々ランダムに起こすことがあるだけなので、何と返答してよいのか、にやにやと笑って誤魔化す。
隠し絵みたくフォルム無きフォルムから既知のカタチを発見したり、ストーリーを作ったりする鑑賞者の感性を楽しむ一方、刺激的なコメントから哲学的な話に発展したりして。
ここにはいただいた大切なコメントの中で、衝撃的な言葉と印象的な言葉を記録しておこうと思います。
あるクリエイターは極自然に靴を脱ぎ捨てギャラリーの床を裸足で歩いて、怪物の核が「かわいい」と言った。メインの怪物の絵を「母性」だと言った。半日をこの胎内で過ごす。
ある評論家はメインの怪物と向き合ったまま一時間近く動かず、「キチガイには描けない絵だ」と言った。「こんな絵、観たことない」と言った。「売れないだろ」とも言った。「評論家の度量が量れる絵だ」とも言った。「今まで何十年、一体自分が観てきた絵は何だったんだろう」と……最高の褒め言葉だった。
ある抽象画家は「瓶はコラージュですか、絵の具ですか?」と訊ねる。あたしは「絵の具です」と答えて、「コラージュになるのは鑑賞者が意味を考えてくれるからです」とも答えた。同業者が作品を撮影するのは珍しい。
ある彫刻家は「平面なのにやってることは彫刻に近い」「描いてない、創ってる」と。彫刻する時の参考にと作品を撮影する。
ある洋画家は「これこそ純粋絵画だ」「全く媚がない」と言った。「何かをわかるように描こうとしてない、なぜなら描いてるあんた本人がわからないんだから」と。「あんた空っぽになりたいんだろ」と、あたしの本質を見抜かれた気がした。それと、やっぱり「売れないだろ」とも。
普段絵など鑑賞しないというあるご婦人は、「無くしてしまった大切な宝物が自分の元に還ってきたみたい」と涙ぐんだ。あたしももらい泣きしそうだった。
まだまだいっぱいある。
嬉しかったのは何人かの方に、昨年逝ってしまった画家、野見山曉治さんを彷彿とさせると言ってもらえた事。「彼よりさらに強烈だけど」「彼も売れなかったんだよ」とかも。
書き始めたら止まらないからこの辺でやめておきます。
お金のかかる事だから、年中出来ることではないけれど、やっただけたくさんの人の感性を受けることができて、そこから自分を識ることができる。
やって良かった。
☆おまけのカブトムシ
作品が自宅に戻ってきてからしばらくの間、玄関の外に出しっ放しにしておきました。
ある大雨の降った日、夜遅く帰宅すると、大きな女の子のカブトムシがあたしの作品に貼り付いていました。
最初1匹かと思ったら、絵に同化している光沢のないボディーの子がもう1匹いたので合計2匹。
カブトムシさんゼリーなど我が家には無いので、脱脂綿を強烈な砂糖水に浸して近付けると、思いの外じっと動かぬまま吸い続けておる。
どちらにしろ飼うつもりは毛頭ないので、しばらく経ってから雨降りの中だったけれど、中庭の植え込みの大きな木の根っこら辺に、置いておくことにしました。
久々カブトムシを掴んだけれど、女の子とはいえ凄い力で、あたしはひとりで、
「イタイ! イタイってば! 大人しくなさい!」とか格闘しながら袋に入れて、木の根っこで離したのでした。
それにしても、2匹もあたしの絵に貼り付いていたとは???笑
毎日新聞の朝刊で「葉月弘生展」が紹介されたようだ。
ピンときてなくて、もっと喜ぶべきことらしいと知って遅ればせながら喜んだ。
ちなみに、「怪物Tシャツ」と「怪物トート」など作っているので、夏が終わらないうちに良かったら見てみてくださいませ。
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このほかにもいっぱいあるよ〜♡
と、宣伝しておく(笑)
いつも最後まで見捨てずに読んで下さってありがとうございます。
次の9月の展覧会の予定もあるので、またご案内させて下さい。
感謝♡