【セバスチャン高木さんインタビュー】「日本文化」は最高のエンターテイメント!先入観を打ち破るPOPでROCKなオーディオブック
Apple podcast・Spotifyなどのプラットフォームや、audibook.jp聴き放題で聴くことのできる音声番組「日本文化はロックだぜ!」が書籍化!
印象的なピンク色の装丁の「日本文化 POP&ROCK」が2022年11月に刊行されました。
そして、この度audiobook.jpで「日本文化 POP&ROCK」のオーディオブックがリリース!国内でも例を見ない音声番組書籍の再音声化を記念してインタビューを敢行!著者のセバスチャン高木氏が「日本文化 POP&ROCK」に込めた想いや、番組「日本文化はロックだぜ!」について考えていることなど、お話を伺いました!
——「日本文化 POP&ROCK」オーディオブックのリリースおめでとうございます!まずは、音声番組「日本文化はロックだぜ!」を書籍化した「日本文化 POP&ROCK」が刊行された経緯を教えてください。
高木:「日本文化はロックだぜ!」のリスナーの方に笠間書院の編集者の方がいらっしゃいまして。その方からお声がけいただき書籍化いたしました。
僕は小学館という出版社の社員なので、会社に忠誠を誓ってますから(笑)まずは、上司にお伺いをたてました。笠間書院さんから、このようなオファーをいただいているんですが、どうでしょうかって。やっぱり筋としては小学館から出したほうがいいと思ったんです。と。そしたら「いいよいいよ。そんな奇特な出版社の方がいるならそっちから出してもらいな」と言われてしまいまして(涙)。そのような流れで、笠間書院様から出版する運びに至りました。
オトバンクが制作している音声番組のパーソナリティを小学館の編集者がやっていて、その書籍化にあたって小学館ではなく、笠間書院からという非常に歴史のある専門出版社から書籍化するという。とても特殊な経緯で、本になりました。
—— 音声番組の書籍化って難しそうなイメージがありますが、本をつくる際に苦労した点などあれば教えてください。
高木:最初は番組を基に、自分で書いていたんです。そのテキストを編集部の方に見てもらったところ「番組が持っていたグルーヴ感がなくなっている」とフィードバックをいただきました。 「本にする」となると、本職が編集者ということもあり、気合が入ってしまって。
口調を正したり、情報を補足するなど、やけに堅苦しい内容になってしまったんです。
これはやり方を変えないと、ということで。ライターの方にお願いし、外部の目・手を入れて校正し直していただきました。結果として、ライターの方々が面白いと感じてくださった会話のグルーヴ感を残しつつ、情報の正確性が増したものとなりました。
そして、担当してくださっていた方が日本文化についてはまったくの初心者だったので、「ここが分からない。解説を入れてほしい」など初心者目線の要望をいただくことができたので、日本文化に触れたことのない人にも分かりやすい内容にすることができました。
だから、正確に言うと、これは私の本じゃないんです。皆さんがいてくれたからできた本だ、と思っています。「日本文化の民主化」を掲げている番組らしく、編集スタイルも非常に民主的なものとなりました。
—— 音声番組から生まれた書籍を再度音声化するという、極めて特殊な事例だと思います。オーディオブック化された「日本文化 POP&ROCK」を聞いてみて、どのように感じましたか?
高木:聞いてくださる方の裾野が広がると思いました。オーディオブックでは、プロフェッショナルな方々の声で読んでくださるので、音声番組よりスムーズに耳に入ってきますし、話している情報も正確で、会話の勢いに騙されない感じもする(笑)何より聞きやすい。オーディオブックって、改めていいなと感じましたね。
また、偶然なのですが、二年連続で大河ドラマになるようなテーマを取り上げているので、日本文化に最初に触れてもらう入口としては最適なものになっていると思います。
—— 書籍・オーディオブック「日本文化 POP&ROCK」で初めて日本文化に触れた方は、きっと基になった音声番組「日本文化はロックだぜ!」が気になっていると思います。番組の魅力はどのようなところだと思いますか?
高木:「日本文化のエンタメ化」を目指しているところだと思います。僕は「日本文化」って世界最高の知的エンターテイメントだと考えています。映画に、分かりやすく解説して、観る喜びとか楽しみを伝えてくれるような評論家とか解説者がいるように「日本文化」というエンターテイメントの楽しみ方を解説する役割を担っていると思います。
——「日本文化のエンタメ化」日本文化は、教養的なものと捉えていたので、そのような視点はありませんでした!高木さん自身はどのようにして「日本文化」と出会い、楽しむようになったのでしょう?
高木:日本文化に触れたのは「和樂」という雑誌の編集部に配属されてからなんです。それまでは、日本文化って高尚で伝統的で硬いものだと思っていました。編集の仕事をしていると、その道の第一人者の方に取材をすることになります。その方々の日本文化の面白がり方に衝撃を受けました。例えば、平安時代の和歌を研究されている方と話すと、平安時代の歌人、詠み手、歌い手のことをまるで友達のことのように話すんですよ。「伊勢がさ〜」みたいな感じで。「あの人すぐ”涙”って言葉使うのよ」みたいにいじったりもしていて(笑) その時に「あ、そういうことか!こうやって楽しんでいいんだ!」と。
それをきっかけに急に日本文化との距離が縮まりました。 その結果、「和樂」という雑誌で「茶の湯ロック」とか「歌舞伎バーリトゥード」っていう特集をやったりするんですが(笑)
——「日本文化はロックだぜ!」は、現在、どのような方が聞いていらっしゃるのでしょうか?
高木:最初は日本文化の初心者の方に聞いてもらおうと思って番組をつくっていました。
しかし、リスナーの方からいただく感想を読んでいるとイメージしていた方と少し異なる像が見えてきました。茶道や着物などがきっかけで、日本文化を好きになって触れ始めたけど「楽しむ」というより「勉強」という感覚になってきてしまい、ちょっと違うかもと感じた方が、番組を聞いたことで「こうやって日本文化を楽しんでもいいんだ!」と思ってくれているという声が多かったんです。
一度日本文化の門を叩いたのはいいんだけど、やはり難しいかもしれない・・・と高い壁にぶつかった方が、壁の横にピンク色をした入口を見つけたといった感じでしょうか(笑)
——「日本文化はロックだぜ!」でアシスタントを務めているサッチーさんも、番組を通して変化があったとお聞きしました。
サッチー:そうですね。私は、元々日本文化は難しいもの、歴史を知らないと分からないものだという強い先入観があったんです。ですが、この番組を通して高木さんから「色んな角度から日本文化って楽しんでいいんだよ」と教えていただいて。日本文化への考え方が変わったと思います。
高木:日本文化では「歌舞伎」とか「着物」「茶の湯」といったものが扱われるんです。これらは決して堅苦しいものじゃないと思うんです。もしそうなら、ここまでブレイクしない。古くて伝統があるからいいわけじゃなくて、今見ても斬新なんです。発見がある。
その斬新さ、発見を今我々の日常にある理解しやすい言葉で噛み砕きたいんです。
たとえば、番組では「奥の細道」をフレンチのコースに例えて紹介してみたりしています。フレンチに例えることで「奥の細道」には、コース料理みたくメインがあって、メインの前には箸休めがあるというようなリズムがあるとイメージできると思うんです。
その後に、実は松尾芭蕉は紀貫之が編集した古今和歌集の巻立(かんだて)というリズムをベースにしているという説明をすると、理解しやすくなる。一気に千年くらいの文化が繫がる楽しさが伝わると思うんです。
日本文化を楽しむひとつの角度を提案させていただいているイメージです。ちょっと歪んでる角度かもしれないですが(笑)
——高木さんが編集者だからこそそのような角度を提案できるのかもしれませんね。
高木:そうですね。僕はあくまで編集者なので、今までとは違う視点の提案しかできないと思っています。分野ごとにいらっしゃる研究者の方には間違いなく敵いません。
もしリスナーや読者の方で、私たちの話を聞いてくださって面白いなと思う分野があれば、専門書を読んでいただくのが良いと思います。
何より、日本文化は楽しんでなんぼだと思います。もしも「ロックだぜ!」の入口が楽しくなければ、他の入口から入ればいいと思うんです。入口がどうあれ、日本文化自体が楽しいものだということは変わりません。
——「 日本文化はロックだぜ!」のこれからの展望をお聞かせください。
高木:日本文化の面白さって、テーマとテーマが繫がる面白さってのがあるんです。
先ほど申し上げたように、奥の細道と実は古今和歌集がつながっていたとか。あとは和歌と工芸がつながっていたとか。そういう網の目のような繫がりが日本文化の最大の魅力だと僕は思っています。
回を重ねていますが、その繋がりをお見せするにはまだ足りない部分があるので、その分野を取り上げなきゃいけないと思っています。そして、ココとココは、こういう風に繋げるんだよと紡いでいければと考えています。この楽しみがわかりだすと、より楽しくなると思います。例えば「涙」という切り口を決めて、文学で見る、工芸で見る、◯◯で見る、というように、逆から繋げてみたりだとか。
我々も、試行錯誤中ということもあるので、そういうことを「自由研究」として、やり始めています。「日本文化 POP&ROCK」で出会ってくださった方が、仲間入りしてくだされば嬉しいです。
自由研究は、誰がやってもいいわけですから。
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