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ICL手術で後悔しないために知っておいてほしいこと


2021年7月28日に最新内容に更新済み

第1 はじめに

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1 概要

 このNOTEは,私がICL手術について調べたことを整理したものである。
 ICL手術は眼の中に小さなコンタクトレンズを埋め込む手術である。

 ICL手術を受けるか否かを決めるに当たり,多くの方はインターネットの情報を頼りにすることだろう。

 実際,ICLの前に流行したレーシックでは約4割の人がインターネットの情報をきっかけに手術をしているという。
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20131204_1.html


 それほど影響力のあるネット情報だが,「どの情報を信頼してよいのかわからない」と思っている人は多いのではないだろうか。

 「ICL」で検索すれば,ICLをやっている病院のホームページが上位に出てきてICL手術の良い側面ばかりを強調している。

・ICL手術は本当に安全なのか(デメリット・リスク・合併症はないのか,失敗したらどうなるのか)
・どの病院で受けたらいいのか
・受ける際に注意するべきことはなにか


 そういった実用的な情報にたどり着くことはなかなか難しい。
 調べ始めた当初,私も何が信頼できる情報かわからず苦労したので,それは痛感している。

 最初のうちはICL手術やレーシック手術の「本当の姿」が見えてこなかった。
 だが,しつこく調べていくうちに,少しは本質らしきものに近づけたように思う。

 このNOTEはその調査結果をお伝えするものである。

 ネットで手に入るICLの情報は可能な限り調べ上げたつもりである。
 このNOTEの執筆を含めると,100時間程度は調べただろうか。レーシックを含めると少なくとも200時間は調べている(本稿の初投稿時点)。

2 重視したのは口コミ

 ICL手術は自由診療であり,政府が管理する医療保険制度の範疇外である。ゆえに,ICL手術は政府による実態把握が不十分な状況にある。

 また,現在のホールICL手術は2014年に承認されたもので,いまだ6年程度しか実用されていない(2020年時点)。
 そのため,資料となるデータも十分にそろっていない。

 つまり,信頼できる客観的データが少ないのである。


 そこで,さしあたり私はICL手術を受けた患者の「口コミ」を重視した。

 第三者機関が公平に調査したデータがあればそれが一番望ましい。
 だが,現状でそれは望めない。
 データがそろうのを待っていたら,それまでに手術を受ける人たちが犠牲者になりかねない。

 だから,多少不正確な情報になろうとも,口コミやインターネット上の個人発信情報をまとめることに意義はあろうと思った。

 もちろん,口コミすべてを鵜呑みにしているものではなく,信頼できそうなものを吟味している。また,口コミ以外にも,現役の眼科医の発言や多くの眼科関連ウェブサイトを参照した。

 無論,ICL手術も厚労省の認可を受けているため一定の安全性はあるのだろう。

 だが,レーシックは厚労省の認可を得ていたにもかかわらず,「レーシック難民」と呼ばれる被害者が多く発生した。認可があるからといって信用できないのが実情だと考えている。


 レーシックでは,被害を受けた方々の口コミが国家議員を動かし,政府を動かした。そういう意味でも口コミは重要な情報源であり,議論の始点といって良いだろう。

2020年9月1日追記:口コミだけでなく,ネット上で手に入るICLに関する情報(ただし信頼に足る情報に限る)をできる限り網羅的に収集しています。随時情報をアップデートしており,追加箇所には「追記」の語句を入れるようにしているので,語句検索で「追記」と入力していただければ追加箇所だけを参照することも可能です。

3 執筆のきっかけ

 私は医師でもなく,ICLやレーシックの患者でもない。ICL手術を受けたいと思ったこともない。

 ではなぜ調べることになったのか。

 きっかけは,私がレーシック被害に関心を抱いたことにある。

 私の専門は法律である。それも関係していたのか,社会問題としてレーシック被害に興味を持ち,個人的に調査を始めた。
 その延長で,レーシックと同じ分野にあるICL手術についても必然的に調べることになった。レーシックについては別で発表することができたが,ICLについてもいつかどこかで発表したいと思っていた。

 この度時間が取れたこともあり,ICLについてnoteを書くことを決め,本格的に調べることにした。

 「本格的に」と書いたが,医学書や医学論文までは参照できておらず,また海外の情報にも触れられていない。調べた対象はあくまでインターネットで手に入る情報である。

※2020年6月1日追記:ご支援頂いた資金により一部の論文と一般書籍の調査を行いました。
追記:2020年末頃に専門書店で医学書にもあたってみました。しかしICLについての記述がある医学書は少なく,たとえICLについての記述がある医学書であっても,基本的な事項がごくわずかに(1ページ程度)記述されている程度でした。「近視」は基本的に「病気・障害」ではなく,ICLなどの視力回復術は学術書で深く言及されるような類のものではない印象です。


4 利害関係

 はじめに断っておくが,この記事はどこかの業界から依頼を受けて書いているわけではない。

 アフィリエイト目的もないし,特定の病院から何らかの報酬を受けているわけでもない。

 また,ICLやレーシック手術の被害者の方々とも何ら繋がりはない。

 ただただ私個人が,誰とも利害関係のない立場で,私の調べた結果をお伝えするものである。


5 本稿のテーマと概略

 本稿のテーマ内容とその概略を書いておく。

【第2 ICL手術は受けても良い手術なのか】
 →現時点では慎重になるべきと考えている。この項目が本稿のメインであり,ICLを中心に4種類の近視矯正について言及している。

【第3 ICL手術を受けるとしたらどこで受けるべきか】
 →病院選びの基準,病院の探し方,注意すべき病院,紹介料制度,金額(手術費用),手術件数について言及した。

【第4 ICL手術を受けるにあたって気をつけるべきことは何か】
 →患者の注意により回避しうる不具合について言及した。また,レーシックのトラブルを多く見てきた経験から,法的リスクを軽減するための具体的方法についても考察した。

【第5 情報収集はどのように行うか】
 →良質な情報を載せているサイトの紹介と,口コミ情報の検索方法を紹介した。

 以上のような内容となる。
 結論や論拠,各種情報はあくまで現時点のものである。


 それでは,やや長文になるが,よろしければお付き合い頂きたい。

(ご支援頂いた資金は今後の調査に活用させていただきます。)

【ここまでの文字数は約2200字】

第2 ICL手術は受けても良い手術なのか

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 ここではICL手術が受けても良い手術なのかを検討する。
 ICL手術の位置付けを知ってもらうため,ICL手術の比較対象として,レーシック,オルソケラトロジー,前房型フェイキックIOLについても言及している。
 
構成としては,

・結論
・レーシックの是非
・オルソケラトロジーの是非
・前房型フェイキックIOLの是非
・ICLの是非
・まとめ

の順で言及している。

 ICLの是非だけで良いという方は,適宜飛ばしていただいて構わない。

1 結論 


(1)ICL手術は受けてはならないとまでは言えないが,メガネやコンタクトレンズで不自由がないのであれば,現時点では慎重になるべきだと考えている。

 主たる理由は,①安全性が担保されているとは言い難い点(特に白内障誘発のおそれ),②手術スキルの集積が未成熟という点,③ハロ・グレアの覚悟が必要な点,④ICL業界への不信感にある。

 そして,ICL手術を受けるにせよ,あと1年から3年ほどは様子を見たほうが良いと考える。3年待つことで,レンズの改良によりハロ・グレアの減少なども見込めるかもしれない。

(2) メガネやコンタクトレンズで不自由があるのであれば,私が考える第一選択は,ICLではなくオルソケラトロジー(後述)である。ICLはオルソケラトロジーに次ぐ第2選択である。

(3)前房型フェイキックIOL(後述)も,適切な病院で受けることを前提とすればICLと同順位の第2選択である。

(3) ちなみに,近視の程度が低い場合,ICLではなくレーシックを勧めてくる病院がある。だが,近視の程度が低くても,レーシックだけはおすすめできない。

2 本論 

 まず説明の前提として,視力矯正手法の全体像をざっと概観したい。
 見慣れない単語を並べてしまい恐縮だが,細かい分類を把握して頂く必要はない。

 視力矯正には大まかに①角膜を削る矯正手術,②眼内にレンズを入れる手術,③ハードコンタクトで角膜の形状を変形させるもの(手術を要しない)がある。

 ②眼内にレンズを入れる手術は,正式にはフェイキックIOL(有水晶体内眼内レンズ)という。レンズを挿入する位置の違いにより,前房型と後房型に分類される。ICLは後房型のレンズの一つである。

①角膜を削る矯正手術
   レーシック,ラゼック,リレックススマイルなど
②眼内にレンズを入れる手術…フェイキックIOL(有水晶体内眼内レンズ)
  a前房型フェイキックIOL
   (a)虹彩支持型…ARTISAN、ARTIFLEX
   (b)隅角支持型…AcrySof、ICARE、VIVARTE、PHACIC6
  b後房型フェイキックIOL…ICL、PRL,ICPL V2.0
③手術を要しないもの…オルソケラトロジー,オサート

フェイキックIOLに関する参考文献
http://www.cosmos7.com/illness/artisan.html


繰り返しになるが,以下の順で言及させていただく。
(1)レーシック
(2)オルソケラトロジー
(3)前房型フェイキックIOL
(4)ICL
(5)まとめ


(1) レーシック

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 レーシックに関して言いたいことはたくさんあるが,本稿のテーマとはずれてしまうので簡単な紹介でとどめたい。結論は,「レーシックは受けないほうが良い」である。

ア レーシックはハイリスク・ローリターン

 読者の皆さんもレーシックを検討した経験をお持ちかもしれない。だが,レーシックについて研究した私から言わせてもらえば,「レーシック(他にラゼック,スマイルなど角膜を削るもの)は受けないほうが良い」とアドバイスしたい。施術してくれる病院がどれだけ信頼できるところであったとしても,である。
 これは私だけの意見ではなく,大半の医師・眼科医が持っている意見である。

日経メディカルOnlineが2015年に1003人の医師に対してアンケート調査を行いました。「近視だとしたら、レーシック手術を受けますか?」という問いに対して 91%が受けないと回答。
眼科医の26人中23人が『NO』,経験者はゼロ」。
https://www.sanctio.net/lasik-coupon/
医師の8割はレーシック手術を受ける可能性はないと回答
https://ishicome.medpeer.jp/entry/1214
ある眼科医「やめておいたほうがいいと思います。親戚がやりたいといったら絶対止めます。」
https://twitter.com/segazukiman/status/1099821920936026114


2021年5月15日追記

https://www.youtube.com/watch?v=kicMlfZLmHo


 個人単位では,レーシックに満足されている方は大勢いる。満足している人のほうが多数派であろう。みなさんの周りにも「やってよかった」と言っている人も多いと思う。
 とはいえ,「やってよかった」と言っている人は「何らの不具合もなかった」と言っているわけでは必ずしもない。おそらく,不具合もあったがメリットもそれなりにあったので,トータルで見ると「やってよかった」と言っている人が大半だと考えられる。

 ちなみに,何らかの不具合がある人が4割だというのが消費者庁の調査結果である(下記リンク先4頁)。
http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20131204_1.pdf


 レーシックを受けないほう良い理由は,「レーシック手術はリターンが小さいのに,リスクがあまりにも大きい」(ハイリスク・ローリターン)からである。以下,簡単にだが私の研究結果を述べさせていただく。

イ リターン
 レーシックによるリターンは,言うまでもないが「視力の回復」である。

 しかし,レーシック手術により一度回復した視力は,たったの「数年」で,「約半数」の方に視力の戻り(視力低下)があると言われている。
https://www.sanctio.net/myopia/

 つまり,レーシックのリターンである「視力の回復」の効果は,永続しないどころか数年という短い期間しか期待できないということである。(長い人でもせいぜい10数年程度ではないだろうか。)
 
 多くの人は,レーシックで回復した視力は基本的には永続するものと考えているのではないだろうか。永続はしないまでも,20年や30年は持つものと期待していたかもしれない。だが,そうではないらしいということが確定しつつある。
 数年しか持たないのだとしたら,レーシックによるリターンはあまりに小さい。

ウ リスク

 次にリスクを簡単に説明する。リスクは,a.レーシックを受けた皆が負う後遺症,b.運悪く失敗した人が負う後遺症,c.未知の後遺症の3つに大別できる。

(ア) 皆が負う後遺症

 皆が負うと考えられる後遺症は,①ドライアイ,②コントラストの低下(見え方の質の低下),③ハロ・グレア(光源をみると光が広がって見えたり,まぶしく見えたりすること。詳しくはICLの項で後述する。)である。

 レーシックは不可逆的に角膜を削る手術であることから,これらの症状は基本的には治らない。角膜を削った量により症状の重さに程度の差があり,これらの症状を気にしない人がいる一方で,長年苦しんでいる人も数多くいる。

 これらの症状は,多かれ少なかれ皆に発生するものと考えられている。ただ,中には角膜を削った量が少なくて症状に気づかない人や,症状があっても全く気にしない人もいるようである。

(イ) 運悪く失敗した人が負う後遺症

 次に,運悪く失敗した人が負う後遺症はいくつかあるが,その代表例として「過矯正」がある。つまり,矯正の程度が行き過ぎて(視力が2.0を超えてしまう等),遠くはよく見えるが近くは見えづらくなってしまう状態である。
 ICLならばレンズを摘出して過矯正を脱することができるが,レーシックは角膜を削っている以上もとに戻すことは不可能である。

 詳細は省くが,これは見え方だけの問題では終わらない。目の周辺に痛みが出たり,自律神経症状として全身に痛みが出たりする。

 この過矯正により失職を余儀なくされた人は多くいる。私も過矯正に人生を狂わされてしまった人を何人も見てきた。アメリカでは自殺の報告も何件か見られる。
 過矯正を患う確率・統計ははっきりしない。だが,先述の消費者庁の調査(2013年)で,調査対象者の5%が「矯正されすぎた」という回答をしている。もしこの数字が正しければ,恐ろしい数の人が苦しんでいることになる。決して「ごく少数の不運な人」だけが患うものとはいえない。

 なお,後述(「第4」)するが,この過矯正はICL手術でも発生しうる後遺症である(ただしICLでは抜去が可能)。

(ウ) 未知の後遺症

 また,レーシックの歴史は浅く,先に上げたリスクだけではなく未知のリスクが潜んでいる可能性もある。

 例えば白内障(後述)の発症が早まることを示すデータもある。
http://blog.livedoor.jp/eyedoctor/archives/51795113.html
 

 さらに,角膜表面がヒリヒリ痛むという症状(角膜神経痛)も報告されている。確立した治療法は未だ無いらしい。10年以上毎日痛みと戦っている人もいる(過矯正以上に厳しい後遺症と言われている)。


 また,たとえ現在調子が良くても,何年か経過して未知の後遺症(発生原理が特定されていない後遺症)が発症する恐れもある。実際,術後10年経ってからドライアイが悪化したという話も聞く。

追記
レーシックは角膜を切ってフラップ(蓋)を作る。このフラップが術後に目に十分に接着しないケースがある。虫が目にぶつかっただけでフラップがめくれてしまい,真菌性角膜炎になり角膜移植を余儀なくされたという方がもおられた。
 レーシックは網膜剥離のリスクも有るという(深作秀春『やってはいけない目の治療』(2016年)33頁)。もともと強度近視の患者は網膜が伸びた状態にあり,網膜はあたかも膨らんだ風船の壁のように薄くなっている。その状態ではちょっとした衝撃でも網膜に穴が開くことがあり,レーシック手術のレーザー照射の影響で網膜剥離になることがあるという。
 また,目への衝撃によりフラップが外れることがあるという点も問題視されている。
https://medicalnote.jp/contents/170321-001-HW
2020年9月17日追記
 強烈な後遺症を負っている人の多くは「強度近視にもかかわらずレーシックをした人」,「軽度近視でレーシックをしたがその後近視戻りして再手術をした人」,「その他何らかの理由で再手術した人」だという印象がある。つまりは角膜を多く削った人たちである。「角膜を削る量と後遺症のリスクは比例する」という見方が現在では有力である。
https://rio2016.5ch.net/test/read.cgi/megane/1518783613/822
 だから,「一度きりの(再手術をしない)」「角膜をあまり削らない軽度近視」のレーシックならば①②③の後遺症や角膜神経痛のリスクは低いのかもしれない。
 もっとも,レーシックは近視戻りの可能性が高く,過矯正等のリスクは軽度近視の場合でも同じであるから,やはり個人的にはレーシックはおすすめできない。


(エ) 小括

 以上のようなリスクがあることを,術前にどれだけの人が理解していただろうか。
 レーシックには多くの問題点があり,リスクが高い手術だと言わざるを得ない。

エ 結論

  以上のように,レーシックはハイリスク・ローリターンであるため受けないほうがよい。

 もっとも,レーシック手術を受けて満足している人が多くいるのも事実である。8割の人が満足しているというデータもある(President2019.7.19号)。だから,必ずしもレーシックは「悪」と決めつけることはできない。

 だが,満足度と安全性は別次元の問題である。「多くの患者が満足であれば,安全性に問題のある手術をしてもよい」ということにはならない。
 レーシックは,角膜を削る不可逆的な手術である。それゆえレーシックで負った後遺症は,基本的には一生背負っていくこととなる。

 近視の程度が低い人に対して,未だにレーシックを勧めてくるクリニックがあると聞く。皆さんにおかれては,医師の言うことを鵜呑みにすることなく,ご自身でお調べの上慎重にご判断頂きたい。

2020年8月2日追記:レーシックの進化版のひとつに「リレックススマイル」がある。このリレックススマイルが一定の人気を博していると聞く。しかし,2018年12月にアメリカの有名気象予報士がリレックススマイルの後遺症を苦にして自殺したことは,レーシック被害者の間ではあまりにも有名である。https://edmm.jp/89092/   
 リレックススマイルの術式を見ても,依然として多くのリスクがあることが伺われる。リレックススマイルに関心がある方は,後述(「第5」)の口コミ検索方法を参考に情報収集を十分に行い,医師の勧誘や一部の成功体験談ばかりに流されることのないようご注意願いたい。https://www.tomita-ginza.com/service/relex/


(2)オルソケラトロジー

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 現時点ではICLよりもオルソケラトロジーのほうが優れていると感じている。手術を伴わず,リスクが小さいからである。

 (なお,メガネ等で不自由がなければオルソケラトロジーをあえてする必要はない。メガネ等以上に勧めているわけではないのでご注意願いたい。)

ア オルソケラトロジーとは

 オルソケラトロジーとは,「特殊なカーブデザインが施されたハードコンタクトレンズを寝ている間に装用する事で、睡眠中に角膜の形状を矯正し、日中を裸眼で過ごすことができる近視矯正方法」である。
https://www.awajichoganka.com/orthokeratology

 要は,「眠っている間に特殊なハードコンタクトレンズを装着すると,日中は裸眼で過ごせますよ」というものである。

 もし私が現時点で視力矯正を試みるのであれば,オルソケラトロジーが一番良いだろうと考えている。(念の為に言っておくが,私はオルソケラトロジー業界や関連病院から報酬をもらっているわけではない。)

イ メリット

 繰り返しになるが,私がオルソケラトロジーを推すのは,ICLやレーシックに比べてリスクが低いと考えられるからである。

 オルソケラトロジーはICLやレーシックと違い,「手術」ではない。そのため,眼を損傷することなく視力を矯正できる。

 オルソケラトロジーが厚労省の承認を得たのは2009年だが,実際には2000年頃から日本でも実用的に用いられているようである。つまり,実用歴はレーシックやICLよりも古く,ある程度の長期の信頼性もある。

 mixiでオルソケラトロジーの口コミを見ると2006年頃から盛んに投稿がある。そのほとんどに目を通したが,重い合併症があったという人は見当たらなかった。中には小学校5年から(投稿時である)21歳まで使用し,その間裸眼視力の悪化を防ぐこともできたという人も居た。

 また,韓国では7歳頃から適応対象で,視力が低下するとまずはオルソケラトロジーが処方されるという話もあった。子供にも適用できるという点から安全性に自信があることがうかがわれる。

ウ デメリット

 ただし,近視の程度によっては使いにくい場合もあるらしく,人によっては適用が難しいこともあるらしい。

 また,ハロ・グレアが出たり睡眠時間によって視力の持続時間が変わってきたりするという使い辛さもある。

 さらに,慣れるまで時間がかかったりレンズの手入れが必要だったりと,ハードコンタクトレンズに似た面倒なところがある。

 加えて,適切な使い方をしなかったら角膜が傷つくといったリスクもあるようである。

 だからオルソケラトロジーも決して完璧なわけではない。

 だが,ホールICL手術は歴史が短く合併症のリスク等もはっきりしないことから,現時点ではICLよりこちらのほうがマシかなと考えている。

2021年7月26日追記:オルソケラトロジーにより角膜の形が変わり,乱視が戻らない(乱視が発症または悪化したということだろうと思われる)方もいるそうです。
https://mobile.twitter.com/tomshark777/status/1400284966173364226




エ 装用体験

 オルソケラトロジーは5000円程度で一週間ほどのお試しができるらしい。https://orthokeratology.jp
 ICL手術を決断する前に一度試してみてはいかがだろうか。

 この装用体験には一つ大きなメリットが有る。それは,ハロ・グレアを体験できるということである。
 後述するように,ICLでは合併症としてハロ・グレアを覚悟しなければならない(レーシックほどではないが)。ハロ・グレアについてはICLの項目で説明するが,それがいかなるものかを知るには体験するのが一番である。オルソケラトロジーはハロ・グレアが出ることが多いらしい(追記:現在では穴由来の「光の輪」だという説が有力)ので,格好のチャンスである。
 一度ハロ・グレアが出たとしても,オルソケラトロジーをやめればもとに戻るそうなので,リスクなく体験できる。

オ ICLの前にオルソケラトロジーという選択肢

 ICLが安全な手術か否かが判断できるまではオルソケラトロジーで過ごしてみてはいかがだろうか。

 ただ,オルソケラトロジーは体験ならばともかく,本格的に始めるとなるとそこそこのお金がかかる。オルソケラトロジーを本格的に始めたが,その後合わなくなってやめるということもあり得よう。

 実際,オルソケラトロジーに後悔している何人かの記事を見たことがある。例えば,「オルソケラトロジーが体質に合わず,結局レーシックをすることになった。はじめからレーシックをしていればよかった。オルソケラトロジーのお金を無駄にした。」といったものである。

 だが,その後悔というのは金銭的な後悔に過ぎない。健康被害に対する後悔ではないのである。

 レーシックの健康被害で後悔してきた人を何人も見てきた。健康被害はお金では取り戻せない。それほどに慎重になっていただきたいということである。

2020年9月17日追記:
オルソケラトロジーの矯正度数は「近視が−4.00Dまで、乱視は1.5Dまで」らしく,適応が限定されているようである。
https://www.yoshino-eye-clinic.com/オルソケラトロジー不調

カ 参考

 色々言ってきたが,オルソケラトロジーにはデメリットもあるため無責任に勧めることもできない。以下,参考となるリンクを貼付する。興味のある方はご自身でよくお調べの上ご判断頂きたい。

オルソケラトロジーを先駆けて行ってきた病院のHP
http://www.ortho-k.co.jp
https://www.yoshino-eye-clinic.com/ortho.html

メリットとデメリット
https://tomihisa-eye.jp/orthokeratology.html
http://www.nichigan.or.jp/member/guideline/orthokeratology.jsp

mixiのコミュニティ
https://mixi.jp/list_bbs.pl?id=246797&type=bbs


(3)前房型フェイキックIOL

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 一般的にはあまり聞き慣れないものだと思う。私も理解しきれているとは言い難い。ざっとだが解説したい。

ア 前房型とは

 フェイキックIOLは眼内にレンズを入れることで視力を矯正する手術であり,前房型と後房型の2種類がある。次のリンク先がわかりやすい。
http://www.hirotaganka.jp/hirota-act-ICL-syurui.html

  ICLは後房型の一種であるが,本項で説明するのは前房型である。

イ メリット

 前房型はメジャーではないが,ICLに比べ白内障のリスク(後述)が少ないということで,ICLよりも前房型を勧める病院もあるようである。
https://twitter.com/segazukiman/status/1231824402431397888

ウ デメリット

 ただ,前房型はレンズと角膜の位置が近いことから,数年から10数年後に角膜内皮細胞の減少が起こると言われていたりする。また,極端に細胞が減少すると角膜移植が必要になることもあるらしい。

https://yoshino8dr.hatenablog.com/entry/20130326/1364281792

 ICLに比べ衝撃に弱く,レンズがずれやすいという欠点もあるという。

https://yoshino8dr.hatenablog.com/entry/20131119/1384835793

 また,術式によっては虹彩に穴を開けるということで,光が眩しくなる現象(後遺症)が避けられないなど問題もあるようである。

 さらに,ICL手術よりも高度な手術技能が必要だということで,腕の良い術者を探すことが難しいと言われている。

 

エ コメント

 ICL以上に前房型の口コミはほとんどなく,正直なところ良し悪しはわからない。

 ただ,白内障のリスクが少ないという点でのメリットにより,ICLに比較すればやや安全な術式なのかもしれない。
 もしかすると,ICLがレーシックに取って代わって流行したように,ICLの術式に欠陥が見つかった場合,今度は前房型フェイキックIOLがICLに取って代わって流行するのかもしれない(2020年5月25日追記:前房型はICLが流行するより先に,一時期流行していたらしい)。

 いずれにせよ,情報があまりに少ないために前房型に関しては詳細なコメントはできない。だが,個人的にはICLと同順位程度の選択肢にはなりえるのかもしれないとは考えている。

 ただし,ICL手術よりも高度な手技が必要らしいので,技術の優れた医師により手術を受けることが必須となろう。

参考
https://www.minatomiraieye.jp/phakic/aciol.html
http://www.cosmos7.com/illness/artisan.html

(3−2) クボタメガネ(2021年4月7日追記)

窪田製薬ホールディングスが開発した「クボタメガネ」が話題となっている。

簡単に説明すると,「かけるだけで視力が上がるメガネ」だということである。

「臨床試験で1日1時間~1時間半ほどこのスマートグラスを着用した際に視力が向上するという効果が証明された」とのことである。
https://news.nicovideo.jp/watch/nw8849246


 2021年後半に商品化することを目指しているとのことで,価格は10万円程を想定しているという話である。
 ただし,度の国・地域で販売するのかは検討中ということで,日本での販売は確定していない。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/63500


 クボタメガネは日本企業が開発したものということもあってか,大きな話題となっている。

 しかし,公開されている情報(データ)があまりに少ないことにやや疑念を抱いている。

 もし劇的な臨床結果や治験結果が出ているのであれば,もう少し情報が公開されていても良いように思うのだがどうだろうか。長年売上が立たなかった企業による大一番の商品らしいので,よほど慎重になっているということだろうか。


 また,「視力が向上する効果が証明された」ということだが,どのくらいの向上が認められたのかについては触れられていない。ほんの少し(誤差程度の)視力が向上する効果に過ぎない可能性もある。さらに,一時的な視力の回復に過ぎない可能性もある。

「視力0.1の患者が1.0に恒常的に回復した」というほどの効果があるのであればとんでもない大ニュースになっているであろうし,ノーベル賞級の偉業だろう。

 個人的には,他の近視矯正(レーシックなど)が必要なくなるほどの劇的な視力回復効果は期待できないように感じている。

 眼科専門医の先生のご意見が参考になる。
https://www.youtube.com/watch?v=MNoWeeDaE4E

(参照)クボタメガネについて
https://www.youtube.com/watch?v=bn_pcooCaQg


2021年7月28日追記:
 場所は台湾,金額は数十万円で,数量限定のテスト販売が行われる予定だという。
 記事によると,クボタメガネは治験を実施していなかったという話である。
https://www.reuters.com/article/idJP00093500_20210708_03020210708


(4) ICL

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 さて,ここから本題のICLに入りたい。

ア 概説 

(ア)結論

 ICLはレーシックほどに危ないとは言えないが,現時点では慎重になったほうが良い。私であれば,1年から3年ほどは様子を見たい。
 それが現時点での私の結論である。

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