観て聴いて騙される_GREAT PRETENDER
夏秋2クールにわたって楽しみにしていた「GREAT PRETENDER(グレートプリテンダー)」が終わって寂しい。12月に終わったので秋アニメ、という括り方をしています。
脚本は「探偵はBARにいる」「リーガルハイ」「コンフィデンスマンJP」の古沢良太さん、キャラクターデザインは「エヴァンゲリオン」「ふしぎの海のナディア」「サマーウォーズ」などの貞本義行さんという布陣です。豪華で話題性満点な布陣が作る世界を、丁寧に形にした人々の力を感じる作品。制作はWITスタジオ。
多様な背景を持つ登場人物と広い舞台
自称“日本一の詐欺師”こと枝村真人(エダマメ)は、年寄りや旅行客相手に詐欺を働いていた。そんなある日、標的に選んだ外国人バックパッカーはまさかの同業者だった!彼の名はローラン・ティエリー。エダマメを気に入ったローランは、ロサンゼルス・ハリウッドで“ある勝負”を提案する。
↑公式サイト、第1話あらすじより。
出身地も背景もバラバラなコンフィデンスマンたちが世界を股にかけ、大胆な作戦で悪党たちを騙して大金を巻き上げていくお話。全23話がCASE1から4までのエピソードに分けられ、およそ5話で1つがまとまる作りです。
1本の映画を20分ずつ追っているようで、毎週待ち遠しかった。
先の見えない展開で、観ている私たちも仕掛けに騙されつつ進んでいくんだけど、エピソードごとにチーム内での中心人物が変わり、各キャラクターについても深く描かれます。特にCASE2、エアレースの話が好き。クールでことば少なな中東出身・アビーがグラングラン揺さぶられたり、強い芯を持ちながら静かに動いたり。年の近い主人公・枝村を少しずつ理解していくも、べたべたした色恋にはならない距離感がとても良い。口が悪いところも好き。
多言語をどう聴かせるか
表現でユニークだなと感じたのは、聴こえてくることば。
各国から集まった彼らの共通言語は英語で、観ている私たちには日本語として聞こえます。洋画吹き替えのイメージですね。ただ、枝村の英語だけが東北弁なんです。日本語話者による英語発音の訛りを方言に置き換えて、日本語(標準語)と区別する表現に感動しました。しかもこの訛りは最終エピソードで微笑ましい仕掛けにもなっている。
LA、シンガポール、ロンドンに上海など、舞台に合わせて各言語のキャストが用意されているのも印象的でした。
デフォルメが強みになる
貞本義行さんのキャラクターデザインも大きな魅力のひとつだけど、本編では登場人物の造形が、彩度高めな背景とぴったりマッチしていました。
作画も平均して綺麗で、皆表情豊かによく動きます。魅力ある設定をさらに魅力的に動かす方々の仕事を感じられるポイントですね。
最近は背景美術をリアルに描く作品も多いなかで、この作品ではアニメならではとも言える、デフォルメの強みを感じました。
↑放送カウントダウンツイートより。色味が素敵。これはCASE2の舞台シンガポール。
アニメならではといえば、CASE4の大オチとなる舞台装置は実写ではできないんじゃないかな。世界配信も見据え、いろんな背景を持ったキャラクターが登場していると思うのだけど、ジャパニーズコメディーショーな舞台装置も伝わっているのだと思うと不思議な感覚でした。
時間と手間をかけたボーダーレスな作品が、これからもNetflixで配信されていくのだろうか。
古沢良太さんのコンゲームもの
数々のドラマや映画で脚本を担当してきた古沢良太さんにとって、初のオリジナルアニメーション。私は「リーガルハイ」が大好きです。
しかも「コンフィデンスマンJP」とおなじコンゲーム(信用詐欺)もの。
同じ題材をドラマとアニメで描くなんて新鮮だなと感じていたら、企画制作の順序としては「GREAT PRETENDER」が先だったとご本人がインタビューで答えていらした(リンク参照↓)。
ドラマとアニメの制作期間の違いなどについてもお話しされていて興味深いインタビューです。文中にある「TVドラマの放映中、アニメスタッフの皆さんがコツコツ作画していた」ということばにも深く納得。作画クオリティの高さは、スタッフの皆さんがコツコツ続けた作業の賜物なんだな。
それにしても記事の見出し、「神木隆之介がオーランド・ブルームに迫られるお話」という言葉のパワーが強い。
おわりに音楽のことを
全編にわたり練られたストーリー、高い映像クオリティ、劇中音楽やテーマ曲もかっこいい…と、好きな要素ばかりだった。そう、音楽もよかった!
オープニングテーマはインスト「G.P.」。映像もかっこいいから是非。
エンディングテーマはフレディ・マーキュリーが歌う「The Great Pretender」。OP、EDともに映像が本編に絡んでいると気づいたのは、だいぶあとでした。
「コンフィデンスマンJP」が好きだった方はもちろん(あ!カメオも!)ですが、サラッと楽しめるエンターテインメントなアニメが観たいときにもおすすめしたい作品です。