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森と雪に囲まれて、生きることに向き合った8日間
北海道東川町にある大人の学び舎、School for Life Compathに行ってきた。
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デンマーク発祥の成人教育機関「フォルケホイスコーレ」をモデルにしたこの学校は、どんな場所?と聞かれても、うまく説明ができない。体験を言葉にしてしまうと、とても陳腐なものに感じてしまって、noteに書くかも正直迷っていた。
だけど、私にとっては間違いなく一生忘れられない体験ができた場所で、人生の指針をくれた時間だった。たくさんの人に伝わらなくても、誰か一人にこの良さが伝わったらいいな。
そんな思いで、このnoteを書いてみる。
Compathとの出会い
初めて知ったのは、2024年の夏。通っていた大学院の授業の一環で札幌へ行くことになり、一足伸ばして東川町にも訪れることになった。
この町には何があるんだろう?
気になって調べてみると、Compathという学校に辿り着いた。よく見たら、前職の先輩がつくった学校だったこと、数年前に私も訪れて、日本にもこんな場所があったらいいのにと思っていたデンマークの学校をモデルにしていることを知った。
これは行かなきゃ!という衝動に駆られて、直接連絡をとり、無理を言って見学させてもらうことに。素敵な校舎とスタッフの方に、一瞬で虜になってしまった。
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いつかプログラムにも参加できたらいいな。ふんわりと思っていたことが叶ったのが、その半年後だった。
暮らしに必要なものを、一からつくる体験
今回参加したプログラムのテーマは、Life Crafting -生きるをつくる-。10代から70代の方まで、総勢16名の参加者が集まった。
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”いつもは、すぐに手に入ってしまうものを、このコースでは、一からつくる体験を重ねます"
”欲しいものが無いのなら、自分でつくろう"
プログラムの紹介に書かれていたとおり、身の回りのあらゆるもの自分たちでつくる体験をした。たとえば、寒い日には自分たちで薪を外から持ってきて、ストーブに火をつけたり
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雪の中でかまくらを作ったり
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大好きなHARIOのガラス職人さんに習って、作品作りをしたりもした。
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中でも印象的だったのは、森で過ごした一日。
雪が降り積もる森の中で、コンパスと地図だけを持ってみんなで散策。必要な物資を集めて、火を起こし、食材を焼いて食べる体験をした。
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アイヌの人々にとって、火は雪山で生きるための生命線
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Googleマップを頼りにしないとどこにもいけない自分が、初めての雪山で目的地に辿り着けたことが、生きる自信につながった。そして、私たちはこの大自然の中で、日々生かされているんだと実感した。
自分と向き合い続けた、人との対話
プログラムの企画ももちろん充実していたけど、それ以上に得るものが大きかったのは、参加者同士の対話。出会ったばかりとは思えないほど、夜な夜ないろんな話をした。こんなに自己開示した一週間はなかったと思う。
私はもともと感情を表現するのが得意ではなく、本心で話していても「テンションが低い」「気持ちが乗ってない」と言われがち…。自分のことを話すより、人の話を聞く方が好きなタイプだった。
ただ、一緒に過ごす中で、「人の話を受け止めるだけじゃなくて、自分の気持ちを話してほしい。もっと考えを知りたい」と言ってもらう機会があり、少しずつ少しずつ、自分の考えを言葉にするようになっていった。
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最初の頃は、そもそも自分が何を感じているかがわからず…持ってきたノートに、今思っていることを書き出すことからはじめてみた。
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帰ってきた今も、気づいたことを書き留めている
そうして初めて、私は周りから期待される振る舞いを無意識のうちにしていることに気づいた。それが嫌だ、悪いという話ではなく、その比重がいつしか大きくなりすぎて、自分の本心に気づけなくなっていた。
求めていると思っていた成長は、実は心の底から願っていたものではなかったこと。自分のことでいっぱいいっぱいで、家族とゆっくり過ごす余裕がない自分が嫌になっていたこと。
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そんな気持ちに気づいたら、人前で泣くことなんてほとんどない自分が、なぜか毎日のように泣きながら誰かと話していた。どんどん素直になっていくことが嬉しくもあり、変わっていく自分が怖くもあった。
本心に気づいた私は、元の生活に戻れるのだろうか。楽しい時間の中で、不安も募っていった。
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そんな不安が和らいだのは、プログラム中に迎えた誕生日。出会ったばかりのみんなが、わざわざ準備をしてお祝いをしてくれた。
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それが本当に嬉しくって、自分はここにいていいんだ、と安心することができた。これから大変なことがあっても、世界のどこかにこの人たちがいるならきっと大丈夫。そんな勇気をもらえた。
人は変われる。少しのきっかけと支えで
8日間寝食をともにする中で、参加者一人ひとりの変化も間近でみることができた。
もともと持っていた素敵な部分に磨きがかかる人もいれば、自分とは違う価値観を持つ人の要素を取り入れて、変化していく人もいた。私のように自分の本心に気づいて、素直になっていく人も。
いくつになっても、変わりたいという想いがあれば、人は変われる。少しのきっかけと、周りの支えがあれば。
そう感じる瞬間が詰まった日々だった。こうやって人が前を向いて変わっていく瞬間に立ち会えることが、私にとっての喜びだと気づいた。
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これまで積み重ねてきたものはきっとすぐには無くならず、私はまた義務感や責任感で走って疲れてしまう日が来るのかもしれないし、自分の気持ちを見失ってしまうことがあるのかもしれない。
そうなったら、またこの場所に戻ってこよう。
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躓いたり失敗することを恐れずに、前に進んで、また後戻りして、そんな過程すら楽しめるような人間になろう。そう思わせてくれた場所だった。
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次のバトンは、あなたへ
この記事を読んで、少しでもピンときた方がいたら、ぜひCompathのHPやnoteをのぞいてみてほしい。運営のみなさんの想いや、この学校をとりまく空気感がもっと伝わると思う。
学校をつくること、そして校舎を設けることは、並大抵の覚悟でできるものではない。それを形にして、こうして人の人生にきっかけを与える場を提供していること、改めてすごいなぁと思う。
この素敵な空間が、一人でも多くの人に届いたらいいな。