「東京奇譚集」を読みました
村上春樹氏の短編小説集、「東京奇譚集」を読みました。今から10年前に出版された本のようですが存在自体を知らなかったのです。先日、古本屋で見つけて早速買ってきました。村上春樹氏の短編は好きで以前はよく読んでましたが、最近出版された「女のいない男たち」を読むまでずっと読んでませんでした。
奇譚集という事で、珍しい話や不思議な物語が5編、収録されています。それぞれがいびつで説明しきれないような話なんですが、しっかりと現実味を帯びています。まるで久し振りに会った友人と飲んでる時に聞かされる不思議な話みたいに生々しく引き込まれます。実際の生活でも奇妙な偶然の一致に気付いて鳥肌が立つような事がありますから、この短編のような話があってもおかしくはありません。
この短編小説集の最後の話、「品川猿」の中で個人的にそういう偶然があってびっくりしました。
ときどき自分の名前を思い出せなくなってしまう女性が主人公で、中年女性のカウンセラーにそれを相談する話です。その自分の名前を思い出せなくなる女性の夫の実家が山形県酒田市で、北国酒田の冬の寒さと風の強さに言及されてました。
ストーリーにとっては全く重要ではない設定でその夫自体も作中には殆ど登場してきません。そんなところに唐突に、そんなに有名でもない地方都市の名称が出てきて、それが自分の住んでる町だと結構驚きます。出版されて10年を経てたまたま手に取ったこの本は、読むべくして読んだんだなと勝手に思いました。
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