女:森くん
森:はい
N(女):森くん、私の下に配属された新人社員。
色白で背も高く、周りからの評判もいいようだ
男:南アルプスの山に雨が降る
ときに強く。ときに長く。けれど山の中は静かだ。
ふかふかの土が、雨をやさしく受け止めている。
N(女):配属初日。
正直、緊張したのは私のほうだ。
森くんは、ベテランのような落ち着きでそこにいた。
男:ふかふかの土が、スポンジのように雨や雪解け水を
たっぷりと吸い込み、蓄え、ゆっくりと地中へ染み込ませていく。
N(女):基本動作はできていた。
しかし日を追うごとに一つの疑問が湧いていった。
それはある出来事で決定的となった。
男:天然のろ過装置をくぐり抜けるうちに、
不純物が取り除かれ、雨は良質な天然水となる。
N(女):ある日のことだった。
女:ねえ、森くん。蕎麦屋に出前とってくれる?
森:はい。わかりました。
女:これメニューね。適当にお願い。
森:すぐ電話します。(SE:コール音)
あ、出前いいですか?
えっと、これとこれと、これで
女:森くん、電話だから、名前で言わないと
森:あ、私、森といいます。
女:うん、そうじゃなくて
N(女):そう、森くんは天然だったのだ。
記念物に指定されてもおかしくないほどに。
男:人間に、天然水を作ることはできない。
天然水は豊かな森で作られる。
N(女):天然の森。
男:天然水の森。
M:♪〜
N(女):私に森くんを育てられるだろうか。
男:私たちは森を育ててゆく。森の生態系を守ってゆく。
天然水を育む豊かな森をこれからもずっと。
女:森くんって、天然だよね?
森:いや、パーマかけてますけど。
女:うん、そうじゃなくて。
M:♪〜
N:ずっとずっと森が元気でありますように。
水と生きる SUNTORY