#9 狩り
優しくもなければ、美しくも仕上がらなかった。
この続きの話。
練習期間(2021年5月20日~6月19日)
曲を仕上げるとは、獲物を仕留めることだ!
私は狩りに出た、獲物を仕留める(レッスンで合格をもらう)狩りに出た。
ブルグミュラー25の練習曲では初めての見開き2ページ。
曲の冒頭、パカッパカッと馬の足並みが迫り、5小節目からの左手の狩猟ホルンの音にしびれる。
獲物を追いかける馬が森の中を走り抜けるような颯爽とした曲だ。
しかし、実際は馬も走らなければ、ハンターもヨボヨボ、前途多難な狩りの始まりだった。
ロンドはお得
この曲は序奏とコーダを伴った「A+B+A+C+A」のロンド形式。
Aパートをマスターしたら、曲の半分以上を弾けたことになる。
譜読みも少なく、ロンド形式はお得だ。
ソソソソソソの同音連打をマスターしたら、この曲は仕留めたのも同然。
しかし、このソソソが難しかった。
楽譜を見ればミスタッチ、鍵盤を見てもミスタッチ、いつのまにか打鍵している指まで入れ替わってしまう。
「Aパートさえできれば」と思っていたが、その部分ができないので半ばあきらめ状態。
このまま一生「ソソソ」?
ソソソが不安定すぎてその部分しか練習していなかったが、曲として通すためにBパート、Cパートの練習も始める。
BパートのAgitato(激しく、苛立って)、Cパートのdolente(痛ましげな、悲しそうな)を対比させるように表情をつけるのも一苦労した。
そもそも私の中にdolentoなんて感情はほとんど存在しないので、上手くいくわけがない。
苦手部分になるとつっかえ、つっかえ弾く姿こそがまさにdolento。
この曲を仕上げる目処も自信も全くなかった。
このまま一生「ソソソ」を弾き続けなければいけないのだろうか?
手首が痛くなってきた
更に困ったことに、ソソソを弾き続けると手首に負担がかかり少し痛みを感じるようになった。
手が痛くならないように、自分の身体に負担がないように指使いを改めたり試行錯誤してみた。
若干、投げやりになりつつも3回目のレッスンでようやく合格した。
これまでにも偶数番号の曲で絶望を味わってきたが、この曲はそれ以上にきつかった。
合格もらえて本当によかった。
さらば、ソソソ。
もう二度と弾きたくない。