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消費者を騙している価格

どーもビジネス仕掛人の近藤です。
本日は価格設定について、本当にその考えで良いの?というお話です。
価格設定を行う上で、どのような方針でいくのか、それによって価格も変動します。価格設定も状況に応じて変化することなので、例を上げてご説明致します。

ところで近藤ってどんな人??
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とある食品のコンサルにて

15年以上前のお話ですが、その当時にガチャガチャでサプリを販売するという食品原料メーカーが作った営業会社とご縁がありました。

結論から言うと、このコンサルはマーケティングリサーチも行い、ガチャガチャでは実現するには資金が乏しかったので、十分に再現性・採算性があるビジネスモデルをご提案しました。
しかし、今度は営業力がない・人員が足りないということで、何を提案してもうまくいかない話だったのではというような終わり方で消化不良を感じていました。

後でわかったことですが、どうもメーカー子会社である営業会社の社長が使い込みがあったようで、それは予算がないよなと思ったものです。

事の顛末はこのようなものですが、初期の打ち合わせで忘れられない言葉があります。

この子会社の役員に親会社の社長が入っておりました。
その親会社の社長曰く

「世のサプリメントの原材料を見て、製造原価からするとあり得ない価格で売られている!消費者を詐欺で騙しているようなものだ!」

というではありませんか。
※実際には言い回しが若干違った可能性もあります。記憶の中なのですが本質は同じことを言っています

適正価格とは?

その時はそうなのかと感銘を受けたのですが、確かに大手は利益をしっかり出す価格設定をしていると思います。
でもこの原材料メーカー社長A氏(仮にA氏とします)は、卸の会社です。
卸会社は注文が入れば、商品を用意して全部卸します。
在庫は商材によってまちまちですが、卸と性質が違って、小売りは流通と店頭における流通在庫が存在します。消費者のさじ加減で売れ残りも出ます。よって在庫過多になることもあります。

この売れ残りは処分対象です。費用がかかります。
また、販売する為に広告費や販管費が必要です。
商品の認知が得られないと購入されません。
ただ、お店に並ぶだけでは十分に売れないのです。
この他にも経費はかかります。

つまり、様々な経費を鑑みて、商品価格を付けないと赤字になります。
赤字になる商品は、商売上経営を悪化させる悪い商品です。
廃盤もやむ得ません。

消費者にとって何が最良か?

ここで重要なことは、会社が存続することはもちろん、消費者が喜ぶ商品を提供し続けることです。

提供するではなく、提供し続ける!です。

赤字では提供し続けることはできません。

つまり、原価を安くしても、売れ行きに弾みがつくまで耐える資金体力も必要ですし、その後もさらに追い風にする広告費も必要になります。

「お金は後からついてくる」

とは良く言ったもので、期待した利益が出るのは商品販売が安定してからです。
消費者のことを考えるなら、ただ1回が安くて廃盤にするしかない商品より、長く喜んで使ってもらえる商品作りが重要だと言えます。

もちろん、1回こっきり安くてそれ以降は提供しないなら、安く売っても良いと思います。

安い価格で利益が出るのか?

そもそも利益とは
「profit(利益)」
なのか
「benefit(便益や恩恵を含んだ利益)」
なのか
何を定義しているかにもより意味が変わります。

例えば、洋服のチェーン店「ラックラック」では、
一般販売価格の30%~90%
という価格で提供しています。

もちろん仕入も安いのでしょうが、コンセプトは

余剰在庫を引き取り無駄にせずに消費者に届けること

です。昨今食品ロスが問題になっていますが、ロスは食品だけではありません。この「ロスをなくす」という社会の利益・恩恵を含め、メーカーは余剰在庫の処分を一括してできて資金化できること、消費者は選べない・リピートで買うことができないことがあるなど、選択権が大幅に縮まるが安く買うことができるという便益を得ます。その仲介を「ラックラック」が行っているのです。

よって商品価格を安く付けることで、企業の存在価値・存続価値を得ています。
もちろん、継続経営を行う為に仕入れは安いことや(実現が難しいので多分やっていないでしょうが)委託販売形式を取ることなど工夫がなされているだろうと予測できます。
親会社がレンタルDVDなどの店舗を手掛けるGEOのゲオホールディングスなので、資金力で仕入れを安くしているのではないかと推測しています。

当然安く仕入れても、商品原価が何割なのかということが重要です。
想定ですが、30%以下に抑えているのではないかと。
30%というのは有名ブランドの場合で、メーカーは持っているだけで倉庫代がかかり処分すれば処分費がかかるので、15%以下の仕入れと考えてもおかしくありません。

ここで言う15%とはラックラックの店頭販売価格の15%です。
ですので、メーカーは自社設定上代の数%で処分していることもあり得ます。
※あくまで憶測ですので、実態はどうかわかりません。
 決算書も見ていないので、想定ではなく憶測です。

安く販売するための条件とは?

安い価格で販売し経営を続ける条件としては
・安い価格で販売するのに耐えうる安い仕入価格を実現していること
・薄利多売方式の場合、資金力が豊富で仕入量など条件を優位に立つこと
・社会の恩恵などベネフィットがあることで、
 ➡ 行政の支援で場所代が安い・かからない利点がある
 ➡ 消費者団体(コミュニティー)に贔屓され売れ残らない恩恵がある
など、利益を十分に取れる経営スタイルかロスがでない売り方や経費を抑えることができるなど考えられます。

消費者団体はいつ「外方(そっぽ)を向かれる」かわかりませんし行政支援はいつかなくなるものなので、大半は資金力のある企業が優位に立ちやすい戦略になります。

よって、小規模事業者や資金力の乏しい事業者は安く売らないと勝てないからと競ってしまうと、太刀打ちできない状況に陥ります。優れた経営感覚をお持ちで資金調達力があり社会問題の解決に貢献できるなど、特殊な条件を持たないのであれば、適正価格を安い価格として販売するのは危険だということです。

最初にご紹介したガチャガチャでサプリを販売していた食品原材料メーカーは、資金はそこそこあるかもですが、直接消費者を相手にした商売をしていないので、安い価格のまま勝負をしたら大火傷をしたかもしれません。
結果論ですが、販売会社に資金がない人的資源がないことが今思えば良かったとも考えられます。 ・・・私はむしろそう思います。

消費者を騙しているのは誰?

ここまでのお話で冒頭の消費者を騙している価格にしているのは誰か?という疑問が出るかもしれません。

私なりの答えをお伝えしますと
1.経営体力がないのに商品力だけに奢り安価な設定を行う非継続企業
2.高い価格設定で消費者から通常見向きされないので、詐欺的な商法を取り入れた販売をする企業
このあたりではないかと。

1の場合、消費者がまた欲しいと期待しても企業が存続できないと購入できないので、期待を裏切っています。
2の場合、これは難しいのですが消費者があまりに高く買わされたと後から気付いた場合に「騙された」と認識するので、詐欺的商法といえど消費者を満足させていれば「騙した」とはならない。むしろ、満足させたのであればそこに何らかの付加価値があったと思われるので消費者も便益を得ているはずです。

便益を得ているとは、他所では教えていないその商品の使い方を消費者に伝えることで商品の使い道を増やす便益を与えているから他より高くても買ったということも考えられます。
また、そこで買うとさらに違うものに使えることを教えてくれるかもしれません。その指導料込なら高くはないと考える方もいます。

ということで、安直に
「安い原材料価格なのに高い上代設定」
とは言わないことがよろしいのではないかと思います。

「安い」は正義ではなく、サービスの1つでしかない
ことをご理解の上価格戦略を考えて見てください。

ご拝読ありがとうございました。