「スタートアップのバリュエーションの変遷とIPO市場の変化」を読み解く
先日entrepediaのevent reportとしてアップされた「スタートアップのバリュエーションの変遷とIPO市場の変化~日米VC比較、CVC編~」の記事が非常に示唆に富んでおりましたので、備忘と雑感を兼ねて、思ったことをまとめてみたいと思います!(良記事にただ乗りしてしまってすみません。。。)
1.スタートアップの資金調達状況の全体感
(上記記事より抜粋)
調達社数は前年よりも減少(しかも約200社分と大幅に減少)。
これに対して調達合計額3880億円と右肩上がり。
これを見ると大型調達が増えてきているように思われます。
テクノロジーなど大型投資が必要なところにお金が集まりやすい傾向があるように思われますね。
逆に小口の投資は受けにくくなっているのかもしれません。夢は大きく!
2009年と比較すると調達総額は5倍強に膨らんでいますね。
2009年~2013年までの調達環境は、やはりリーマンショックが大きくかかわっているのでしょうね。金融については詳しくないけれど、金融危機が尾を引いている間は、ボラティリティの高いベンチャー投資は控え気味だったのかなと予想。
ただ、この間もINCJ(産業革新機構)がベンチャー投資を継続して、国としてベンチャー支援を行っていた、という話を読み、イイハナシダナーと思いました。
(上記記事より抜粋)
1社あたり平均値3億円、中央値1億円。
記事の中で言及されていたJapan taxiは、調達額123億円と、2018年調達額トップ。これだけで40社分の調達額ですね。大型投資が平均額を引き上げているのでしょうね。
中央値も、昨年から約2倍の1億円。
これは1社あたりの調達額の大型化に加え、調達社数の減少も影響しているのかもしれません。一社当たりの投資額が高額になる分、投資家の選球眼も厳しめになっているのかな。
2.業種ごとの調達状況
(上記記事より抜粋)
やはりFinTechにお金が大きく集まりますね。
2018年資金調達額の2位が、Forioで69.8億円、3位がFreeeで65億円。
そのほかにも、Finatextホールディングス、paidy、お金のデザインが、それぞれ50億円以上の調達を実施。
この5社だけでもすでに300億円を超える調達額ですね。
次いでヘルスケア領域。
Finc Technologiesによる50億超の調達など、記憶に新しいところです。
他方で資金があまり集まりにくいのがEdtech、ゲーム、ファッション、宇宙あたり。
Edtechは、難しいですね。
教育系は実績がモノを言う領域でしょうから、安定するまで時間がかかる。
日本の教育制度に合わせるとスケールが難しい。
だから、短期的なリターンにはそぐわないのかなと。
一方で、社会的に意義のあるビジネスであることは間違いないわけで、こういう領域に資金がうまく回るといいなぁと思います。
個人的に意外だったのが宇宙。
最近ホリエモンのロケットプロジェクトなど、宇宙がにわかに脚光を浴びているので投資対象としての注目度も上がっているのかなと思いましたが、昨年時点ではまだ、というところでしょうか。前例も乏しく、価値評価がしづらい、という背景もあるのかもしれませんね。
(上記記事より抜粋)
と思ったら、前の図では調達総額が低かった宇宙は、中央値でみると高い。
単にプレイヤーが少ない(12社)から、全体で見ると調達額が低い、という話なのかな。
逆にFintechはプレイヤーが多いから、中央値で見ると1.5億円。
それでも全体の中央値よりは高い。
FoodTechはこれからかな。
深刻なたんぱく質不足が叫ばれて久しい昨今ですから、今後FoodTech領域は注目度が上がるはず!
バイオケミカルは、中央値の金額的には上位にあがっていますが、(完全な主観ですけど)基礎研究や臨床にとんでもない金額がかかるイメージなので、これで足りるのかな??という印象。
個人的には、もっとバイオにお金が集まってほしい。
3.投資家の属性
(上記記事より抜粋)
個人的に驚きだったのが、事業法人による直接投資がVC投資を上回っていること。
ただ年代で追っていくと、ここ2年くらいの流れなのかな。
やはり時代の変化に対応していくために、イノベーションをアウトソースして、ゆくゆくは自社に取り込みたい企業が増えている、ということか。
投資家の思惑は、大枠以下のとおり。
VC:フィナンシャルリターン目的。
事業会社:提携・情報取得目的。
CVC:目的設定が難しい。情報取得なのかフィナンシャルリターンか決める必要あり。
但し、VCにLP出資する事業会社は、情報取得を目的としているケースも多いので、その点で、VCとLPとの利益が相反している現状があるそう。
事業会社が情報取得目的でLP出資をする、ということに驚きました。
情報取得が目的なら、自社かCVCから入れればよいのではないかと思うものの、有望と思われるスタートアップの発掘に使う時間を買う、という観点や、なにより「目利き」が難しい、という問題もあるのでしょうね。
「餅は餅屋」ということで、VCにLP出資をするケースが多いのかな。
スタートアップ視点からすると、シード・アーリーあたりは、VCなどの純投資目的の投資家からの調達を受けて特定の色を付けないようにしつつ、ミドル・レイターあたりは、既存の大企業アセット(ユーザーやインフラ)を利用するための事業提携目的の投資を受ける、というのがよいのではないかと思いました。
4.雑感
以上、2018年の資金調達動向について、備忘のために気づいたこと、思ったことをつらつらとまとめてみました。
調達金額は今年以後もまだ伸びるのでしょうか。
VC/CVC等の投資家目線の話は、勘所がない分、深堀りがなかなかしにくいところでした。ぜひ投資家の方々にも深く、お話をお伺いしてみたいところです!