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オリックス戦力分析 ('24)

はじめに

'21-'23まで21世紀初のパリーグ3連覇を成し遂げたオリックス・バファローズだが、'24シーズンは5位に低迷。中嶋監督退任を受け岸田新監督が就任するなど、大きな転換期を迎えつつある。
本稿ではその'24シーズンの戦力分布をデータから振り返り、そこから岸田体制初のドラフト会議の指名を考察する。

前提条件

投手の分析には年齢,イニング数に加えFIP-を使用する。FIPとは守備から独立した防御率であり、FIP-はFIPのリーグ平均を100として指数化した値である。
防御率ベース,失点率ベースなど方法は様々あるが、今回は下記の式で算出する。

FIP=(13×被本塁打+3×(与四球-故意四球+与死球)-2×奪三振)÷投球回+リーグ全体の{失点率-(13×被本塁打+3×(与四球-故意四球+与死球)-2×奪三振)÷投球回}
FIP- = FIP ÷ パリーグ平均FIP × 100

また、その上で年齢をx軸,FIP-をy軸,イニングを大きさで表すバブルチャートを使用し分析を行う。グラフの見やすさのため、一定イニング数以上の選手のみ図示する。
野手の分析もwRC+を使用し同形式で評価する。wRCとは打者が創出した得点数を表す指標、wRC+はwRCを打席あたりに換算してwRCのリーグ平均を100として指数化した指標であり、算出方法は下記の通り。

wRC=((wOBA-リーグ平均wOBA)÷1.24+リーグ総得点÷リーグ総打席)×打席
wRC+=(wRC÷打席)÷(リーグ総得点÷リーグ総打席)×100

また、ポジションごとに筆者の独断でAからEのドラフト優先度の振り分けを行い、予想に活用する。
それではまず投手から見ていこう。

戦力分析

先発投手


チーム全体で苦しんだ'24シーズンだが、一軍の先発陣は他球団と比較しても優秀な成績を残している。
投球回の多い宮城,エスピノーザ,曽谷はいずれも若くFIP-でも平均を大きく下回る数値を誇っている。それに次ぐ田嶋,山下らも全体でのFIP-こそ平均以上だが1,2ヶ月良い時期もあり来季万全の状態で迎えることができれば頼もしい戦力となるだろう。
ただし、不安要素は思いの外少なくない。シーズンには十分間に合うと思われるが東,曽谷が手術後であることに加え、二軍で優れた成績を残しているのは椋木のみ。宮城は2年後,山下は3年後のポスティングの可能性を含んでおり、田嶋も2年後にFA権取得を控える。
齋藤などの若手選手の成長に期待がかかるが、数年後にローテを守れるポテンシャルの大きな投手の獲得は必須だ。

ドラフト優先度

高卒B 大卒C 大社B

中継ぎ投手

'23シーズン30登板以上の7人(山﨑,阿部,宇田川,平野,小木田,山田,比嘉)のうち'24シーズン30登板を果たのが山田のみという厳しい状況だったが、新入団組の即戦力化でカバーに成功。
元のメンバーが再び戦力として加われば盤石の体制を築ける可能性もあるが、未だ状態が不透明な選手も多く、複数年で実績を残した選手が少ないことや二軍からの突き上げも乏しいことを考えると、新戦力が全く不要であるとは言えないだろう。

ドラフト優先度
大卒D 大社C

野手全体

※簡略化のためバブルの大きさは一定

野手では、多くの主力選手の不調が相次ぎ、一軍wRC+平均以上が森,太田,セデーニョ,西野,杉本の5人のみという苦しい結果になってしまった。
二軍で結果を残した渡部,杉澤といった若手選手も一軍では継続した結果がついて来ず、短期的にも長期的にも厳しい状況は続いている。
詳細は次以降でポジション別に確認していく。

捕手

※福永(一軍, 25歳, wRC+4.0, 66イニング)が枠外

一軍では'24シーズンも若月,森の2枚看板だったが、森の故障によるイニング数低下と若月の打撃不振によって、'23シーズンには存在したこのポジションでの優位性がほぼない状態になってしまった。
二軍では高卒ルーキー堀が予想以上に早い台頭を見せたが、一軍マスク争いに加わるまでには当然まだ時間がかかるため、一軍でも出場機会を増してきた福永にかかる期待は大きい。
守備面では福永が光るものを見せつつあるだけに、対となる攻撃的な捕手の獲得ができれば良いだろう。

ドラフト優先度
高卒E 大卒B 大社B

一塁手

'24シーズンも筆頭候補だった頓宮が不振に苦しみ平均をやや下回る形になったが、'23シーズンにはあまりなかった太田,セデーニョのオプションにより一塁手全体で見るとまずまずの結果を残した。
二軍で主に守っている内藤の本格化にはまだ時間がかかることが予想され、少ないイニングで結果を出している香月の支配下昇格やドラフトでの新たな大砲候補の獲得も視野に入る。
また、全体的に右打者に偏ってしまっていることもあり、'24シーズンで引退したT-岡田に次ぐ左の大砲が欲しいところ。

ドラフト優先度
高卒D 大卒B 大社D

二塁手

※ゴンザレス(一軍, 36歳, wRC+-14.9, 137イニング)が枠外

近年比較的穴となってしまっていたが、'24シーズンは太田の台頭と西野の活躍、大里の成長によりやや優位なポジションへと転換。
'23シーズンより成績が大きく落ちたとはいえ野口のオプション追加や、打撃でもアピールに成功している育成ルーキー河野の入団など少しずつ戦力は揃いつつある。
ただし、西野の年齢、太田の一塁手オプション、大里らの継続性などを考えると、まださらに将来性のある選手の獲得は必要だろう。
また、現状の若手二塁手に太田以外の右打者がいないのも気になるところだ。

ドラフト優先度
高卒B 大卒C 大社D

三塁手

※横山聖(一軍, 19歳, wRC+-30.9, 73イニング)が枠外

3連覇中に三塁手をほぼ1人で守っていた宗の打撃が翳りを見せ、その代わりの選手が二塁手メインの西野,大里と遊撃手メインの高卒ルーキー横山聖しかいなかったことで、大きなウィークポイントになってしまった。
二軍でも多くの選手が守っているが、比較的高い打力と一定の守備力を兼ね備えた選手は少なく、補強の優先度もかなり高い。

ドラフト優先度
高卒C 大卒A 大社A

遊撃手

※上野(二軍, 23歳, wRC+-8.5, 52イニング)が枠外

'24シーズンはほぼ競争相手となる選手がおらず、不振時も紅林で固定するしかない状況に陥った。その紅林は期待値からするとより打力のアップが求められるものの、遊撃手としては一定の打力と守備力を維持できている。
しかし、'21シーズンから4年間守り続けている負担の大きさは想像に難くなく、彼の競争相手となりうる選手の成長や獲得は必要だろう。

ドラフト優先度
高卒C 大卒C 大社C

左翼手

一軍ではFAで入団の西川でほぼ固定となったが、リーグが変わったことによる影響などもあり調子の波が大きく全体では平均よりやや劣る結果で着地。
二軍でも'23シーズン2冠の池田が守ったものの結果が出ず、どちらも当初の想定とは大きく異なる結果となってしまった。
また、打力が求められるこのポジションにおいて不振時でもその2人を大きく凌駕できる成績や将来性を秘めた選手はいないのが現状で、新外国人も含めた新戦力獲得の可能性もありそうだ。

ドラフト優先度
高卒C 大卒D 大社C

中堅手

※杉澤(一軍, 24歳, wRC+-116.6, 76イニング)が枠外

過去2年間守っていた中川のコンディション不良や、序盤にそれをカバーしていた福田の失速により、全ポジションの中でも最も大きな穴を開けてしまう事態に陥った。
二軍で成長を見せていた渡部,杉澤も一軍では振るわず、彼らの競争相手となる即戦力の選手も求められる。
特に右打者が中川,元しかいない状況を鑑みると将来的に右の中堅手のスタメン候補となれる選手は大きな補強ポイントとなるのではないだろうか。

ドラフト優先度
高卒B 大卒A 大社B

右翼手

一軍では、終盤に打線の主軸を担うことも多かった杉本と、成長してきた将来の主軸候補の来田が主に守った。
来田や茶野の成長が待たれるが、新外国人トーマスの不振による外国人獲得方針への影響なども予想される中でドラフト指名がどのような方針になるかは要注目。

ドラフト優先度
高卒C 大卒D 大社D

指名打者

一軍では主にセデーニョと森が務め、相応しい成績を残した。セデーニョが残留するのであれば今後も同様の起用が続くと予想されるが、打線全体で低調気味だったこともあり、数年後も見据えて打力に振り切った選手の獲得の可能性もなくはないだろう。

ドラフト優先度
大卒D 大社D

ドラフト考察

上表が各ポジションのドラフト優先度をまとめたものである。
特に'24シーズンで穴になってしまっていた三塁手,中堅手に関しては、そもそも大卒世代に選手の数自体が少ないこともあり、積極的に獲得したいポイントだ。'24ドラフトに有望な大卒外野手、'25ドラフトに有望な大卒内野手が多いことを意識して外野手の獲得がメインになりそうだ。
また、チームで全体的に左打者が多くなってきている現状も踏まえると右打者の需要が高そうか。
それらを鑑みた指名予想が下記である。

独自指名予想

1位 西川 史礁 外野手 (青学大)
右打者でトップクラスの打力を誇る中堅手
他候補:渡部聖弥(大商大),金丸夢斗(関西大)
2位 伊原 陵人 投手 (NTT西日本)
小柄な体格から右打者の内角をえぐる左腕
他候補:村上泰斗(神戸弘陵高),宇野真仁朗(早実高)
3位 今坂 幸暉 内野手 (大阪学院大高)
打球を広角に飛ばす三拍子揃った左打ち遊撃手
他候補:竹田祐(三菱重工WEST),林翔大(大経大)
4位 野口 泰司 捕手 (NTT東日本)
長打力も兼ね備えた右打ちの強肩捕手
他候補:森翔太郎(中部学院大),宮原駿介(東海大静岡)
5位 昆野 太晴 投手 (白鷗大足利高)
力強い振りから153km/hを投げ込む右腕
他候補: 寺岡丈翔(徳島IS),小川哲平(作新学院高)

おわりに

史上初の前年最下位からリーグ3連覇という輝かしい時代を経て翌年5位で退任という激動の中嶋オリックスの時代が終わり、歴代最年少の岸田オリックスの時代が幕開けを迎える。
その門出となるドラフト会議での指名は、岸田監督の掲げる「熱い気持ち」で「同じ方向を向いて戦っていく」野球がどのようなものであるか考える上での大きなヒントとなり、例年以上に目が離せないイベントになるであろう。
新たな時代の始まりに高揚感が高まる。

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