見出し画像

【漫談散策】ギャングの拠点ツアーってどの層に需要があるの?

 今回紹介する漫談はNatasha Leggero氏による、「ロサンゼルス・ギャングツアー(LA Gang Tours)」です。

 前回の大統領選と同様、トランプ氏の支持が国を分断するレベルまで広がった背景と、当該ツアー参加者の意識は、決して無縁ではない気がしてます(´・ω・`)

日本語字幕付きは ☞こちらから

ギャングツアーってホントにあるの?

 この漫談が10年程前なので、どこまで当時と同じかは分かりませんが、現在でもGoogleマップでそれらしいのがヒットします。直近数年での日本人レビューもちらほら。大昔と比べれば治安はだいぶ改善されているようですが、危険地帯であることに変わりないでしょう。

L.A.HoodLifeTours https://www.lahoodlifetours.com/          予約は一時受付停止中で、続報を待てとのこと(2020年11月8日現在)
80年代以前と比べれば、人口当たりの犯罪件数は大幅に落ちていますが、それでもロサンゼルスでは年間300人弱(2017年は281人)が殺されています。Crime Trends in California(PPIC)Crime Trends in California:10-year Analysis)The Crime Strategies Unit Santa Clara County District Attorney’s Office)

参加者の動機は?

 特にデータを持ち合わせていないので、完全にただの想像ですが、当該ツアーに参加する動機としては、以下3つの要素が挙げれるかと思います。

①ギャング文化への憧れ(聖地巡礼)

②非日常の体験・話題性(一般的な観光の延長、好奇心・怖いもの見たさ)

③自身の幸せ・弱者を憐れむ気持ちの実感

 ①については、一時からスラングが多く含まれる曲が米国のヒットチャートに多く上がっていますし、犯罪がらみのゲームも大人気ですので、ギャング文化への憧れを抱いている層が一定数いるのは確かでしょう。男性が「強さ」を手に入れたい、女性が力強く保護されたい、といった本能的な欲求がある中、法律のリミッターに囚われない「力」は魅力的です。そんな一種の全能感に触れられるコンテンツは人気があり、その聖地を拝みたいパターンが①になります。

・・・2008年の上位100曲(レディー・ガガが爆発的なヒットを起こす直前は本当にラップが強かったイメージ)

・・・ちなみにギャングからの依頼をこなす「グランド・セフト・オート」の初代パケ絵に映ってるのはトランプタワー。当時の意図はともかく、目標達成のためには手段を選ばない象徴という意味で、ピッタリな絵となっています。

 ②は文字通りで、③は潜在的な動機になりますが、2つが表裏一体となっているケースも少なくない気がします。人の不幸は蜜より甘いものです。ギャング幹部の生活はどうか知りませんが、治安の悪い地域を見て回って、自分の日常が幸福であることを実感し、また、最底辺の層に同情する自分の優しさを再確認できます。


トランプ氏が退出しても、闇はなお深い

 富裕層において、本気で貧困問題に取り組んでいる人も少なくないと思いますが、基本的には安全なツアーバスの中から見下ろし、自分の余裕がある範囲で餌を投げて満足する人が多いでしょう。自らの生活水準を引き下げてでも、産業構造の変化に取り残された人々を土台から持ち上げることはしません。ポリティカル・コレクトネスは表層的な演出・自己満足に留まり、結局「同情するなら金をくれ」に繋がります。

 特にバスから降ろされた没落白人層は、もう一度チケットを配ってやるというトランプ氏を熱狂的に支持します。

 冒頭で紹介したツアーはギャングのみならず、広く低所得層も含む「Hood Life」という言葉を用いています。治安の悪さや貧困を売りにすることで①だけでなく、②③の層を取り込もうとしているのでしょう。ギャング文化を純粋に愛している層が無問題かと聞かれれば微妙ですが、貧困をエンタメとして消費している層の広がりもまた闇が深いと言えるでしょう。。。結局対岸の火事として放っておき、平等に投票権が与えられた選挙などのタイミングで全土に燃え広がってから焦り始めます。


 トランプ政権は戦争を起こさなかった点が特徴の一つとして挙げられていますが、バイデン政権においても、没落層へのガス抜きとしての戦争が起こされない事を切に祈りながら。。。ノシ