元SIer業界・SESのエンジニアからみた日本の生産性の低さの原因
僕は新卒で小さなシステム開発の下請けを行う会社に入社して、7年目にフリーランスに転身して、15年目にフリーランスのエンジニアもやめ、個人で企画・開発・運営する個人開発者になったので、社会人としては、SIer業界やSES界隈のことしかわからないのだけど、SIer業界で働いていると、日本が先進国の中で最も生産性が低いのは当然だなと感じる事がよくあった。
最初にあげると、生産性を低くしている一番の原因は、自社で必要なシステムを自社で開発せずに、要件だけをまとめて、他社に丸投げしてしまうといことが慣例化してしまい、結果SIer(システム開発請負)という業界を生んでしまったことが一番の原因だと思う。生産性というのは、一人あたりにどれだけの売り上げを生みだしているのか、という尺度である。自社で必要なシステムを自社でエンジニアを集めて開発するのと他社に丸投げするのとでは、どちらが安くつくれるかは誰でもわかることだ。
生産性を下げている原因は他にもある。システムを使う運用部門が主体となって開発が進むこともそのひとつである。これがなぜ生産性の低さの原因なのかというと、運用部門が主体で開発をしてしまうとシステムのコストパフォーマンスがないがしろにされてしまうからだ。運用部門は開発について詳しくない。そんな運用部門が、ただ自分の業務にあわせて、要件をあげて、その要件をもとに開発を進めてしまうと、例えそれが、どんなに開発に時間がかかることでも開発する側は実装しなくてはならない。そして時間をかけて実装したは良いけど、実はその機能はごくたまにしか使われないもので、他に代替できる手段があるにも関わらず、運用が要件として挙げたばっかりに、時間をかけて実装したにも関わらず、たいして業務時間の短縮になっていないというようなことが起こってしまう。これは聞いた話だけど、アメリカではそもそもSIerという業界が存在しないらしい。エンジニアは開発専門の会社に所属するのではなく、事業会社の開発部門に所属するというのが普通らしい。また、システムを運用する側も、アメリカでは、ある日急に、これまで業務で使っていたシステムが入れ替わって全然別のシステムで業務をすることになったということがよくあるそうだ。運用側もそれが当たり前のことだと認識していて、システムを使うも使わないも自由で、使わなければ仕事が遅くなり本人が困るだけという考えらしい。そして大抵は、最初は慣れないながらも徐々に使いこなすようになってのだそうだ。これはアメリカでは運用が要件をあげて、開発が進んでいくのではなく、開発部門が主体となって開発していくということだ。
最後に、SIerや開発請負専門の会社に所属するエンジニアのビジネス意識も重要だと思う。僕は会社員やめてフリーランスになったときに、収入は倍近くになった。働いている時間は会社員時代とほとんど変わらないし、スキルもそんなにかわらないのにだ。これは単純に僕ひとりの生産性でいうと倍近くにあがったということだ。フリーランス時代にいろんな開発現場を渡り歩いたけど、私よりスキルが高くて仕事できる人なんて大勢いた。だけど、僕は、その人たちを見て、いつも「たぶん、会社員やってるので僕より収入低いんだろうな」って内心思ってた。多くのエンジニアは生産性をあげろと言われたとき、スキルアップすることが第一だと考えている気がする。僕からすれば、それよりもまずは、SIer業界やSESはただ単に自分が所属している会社にマージンを中抜きされているだけだということに気付くことが重要だと思う。
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