GARMIN UNBOUND Gravel 2021 #15
休憩を挟んで回復はしたものの、相変わらずのアップダウンだ。景色は相変わらず壮大なスケールで素晴らしいが、あまり代わり映えがないので正直きつい。日が登るにつれ風も強くなってきて、南を向いて走るとかなりの向かい風だし西に向かっているときも向かい風に感じる。つまり強弱はあるもののずっと向かい風という格好になっている。上昇する気温、乾燥した空気と強い日差し、向かい風と代わり映えない景色、グラベルはそこそこ荒れていて、丘をそれなりの斜度で登って下る。これの繰り返しである。ダメージと疲労の蓄積を実感してきたので、アップダウンでは下りはできるだけノーブレーキで速度を乗せ、登り返しで少しでも楽をするライディングが基本になっていた。
すぐにボトルを水を飲みきってステム横のスナックポーチに目をやると、ペットボトルが無かった。ほぼ満タンに水が入ったペットボトルが。おそらく下りの振動が激しすぎて飛んでいってしまったのだろうが、いつ落としたかもわからなかった。つまり、いきなり水がゼロになった。なぜさっきの休憩時にボトルに水を移さなかったのだろう。なぜペットボトルをドローコードで縛って保持しなかったのだろう。暑さ対策の掛け水としての利用も多すぎた気がする。などと後悔はするものの文字通り覆水盆に返らずだ。
お互い無になって走っているので、森本との会話もあまりない。向かい風を少しでもいなそうとTTバーを持って下を向き、まるで瞑想する僧侶のように黙々とペダルを回している。本当に脱水を感じたら水をもらおうかと思ったが、森本はダブルボトルのみで、水に関してタイトな運用をしている。以前に京都のグラベルを走りに行った際も彼はダブルボトルで、補給不可能なグラベル区間の半分あたりのところで水を切らしていたような覚えがある。この時はパンクによって完走できず山を降りた(チューブレスタイヤのパンク時の対処や運用において大きな経験となった)ので、水問題は明るみにならなかったが、その時と同じダブルボトルなのを見ると、現在の森本の水事情も怪しいところだ。
── いや、違う。昨日、ピーター・ステティナ選手はUNBOUND Gravelはダメージコントロールだとインタビューで語っていた。ミスはもちろんメカトラやパンク、ツールやボトルを落とすなど、レース中に何が起こっても、どんなシナリオでも受け入れる覚悟が必要だと。そこで希望を忘れなければ必ず幸運は訪れると。これは僕のUNBOUND だ。有事の際に装備や感情を分け合える仲間がいることはとても心強いが、森本の現在の水事情は僕には関係無い。いま僕がどう立ち回るかだ。高温乾燥の向かい風と、この果てしなく続くグラベルの路上で、水はゼロになったのは受け入れよう。そして希望は忘れない。おそらくあと25km程度でカウンシルグローブに到着するのはずで、長くても90分程度。かなり厳しいが、やれるはずだ。
>>GARMIN UNBOUND Gravel 2021 #16
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