交差点で信号を待っていた。ひなただった。
太陽はだいぶやわらかくて、知らないうちに、もう季節はかわっていた。
誰に気づかれる訳でもなくて、それはとても静かで。
やがて、建物の屋上でビールなどを飲めなくなっても、
熱を含んだ朝靄を切り払うように自転車を飛ばせなくても、
どうぶつの名前がつけられた氷菓に奥歯がしみなくても、
扇風機がリズムマシンのように軋まなくても、
猫や犬がごろりと腹を出して眠りにつかなくても、
あの子の歌声を、香りを、その手のぬくみを忘れてしまっても、
だいじょうぶ、僕のTシャツには夏が染み込んでいる。
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