とあるパーティで、わからないけどたぶん、会場からアサインされた感じのバンドがステージを持っていた。僕は1番後ろの席に座っていて、彼らのことはよく見えなかったけど、三味線とピアノのトリオで、なんとなく場違いな感じもあって、アルバイトでここにいるのかなって思っていたんだけど。
ワインなど飲みながら、彼らのMCを(もちろん演奏も)聞いてみると、三味線の2人は兄弟で、数々の入賞をしているとか、ピアノの彼もクラシックピアノの活動をしていてどうの、みたいなバックグラウンドを話していたけど、平均年齢がとても高いこのパーティでは、彼らの話に耳を傾けている人なんていなかったような気がする。
誰もが知っているような名曲とか、歌謡曲のカバーをひとしきり演奏すると、やがて次の曲で最後になります、ありがとうございました、と挨拶が聞こえてきた。じゃあ最後の曲は千本桜です。って。え、初音ミク!?ってびっくりして見ると、若さを携えた彼らは、思いっきり鍵盤を叩いて、撥を振り、熱を帯びていて、なんだよ、こんなに楽しそうに演奏するのかよって。
この平均年齢が高すぎるパーティでも、その熱は伝わったみたいで。いや、ひょっとしたら酔っ払ったジジイがなんとなくの戯れでアンコールって言ったのかもしれない。彼らは遠くを見て、ありがとうございます、じゃあもう一曲だけ、六兆年と一夜物語、聴いてくださいって。ここにいる誰もが何も知らなくても、僕はお前たちが音楽のことを思いっきり信じてるってわかったから、すこし感動してしまったような気がする。
彼らってたぶん、子どものときから楽器をしてて、それはあるいは自分で選択したものじゃなかったかもしれないし、今だって自分たちのやるべきことは、ずっと目の前にあるんだろうと思うけど、音楽ってこういうことだよねって。白髪と禿しかいなかったあのパーティで、こんなにもまっすぐで、僕はもうおじさんだから目頭が熱くなってしまうんだけど、僕の前に白髪のジジイが来て、くだらない話をするんだ。でも僕はおじさんだから、その話は、ちゃんと受け答えをしなければならなかった。
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