留学してアメリカで暮らす。そのいちばんはじめのきっかけは・・・(WS在住大野拓未さん)
「子どもの選択肢を日本だけにとどめたくない!」
子ども達が海外に行くことを求めているわけじゃない。
でも、日本だけに選択肢をとどめてほしくもない。
どうしたら子ども達の選択肢というものを広げる手伝いが、親としてできるのか。
日本で日々子育てをしながら、何となく窮屈さを感じながら、子どもが産まれてずっとこのテーマについて考えています。
繰り返しますが、決して海外ありきと思っているわけじゃないんです。
簡単にできるわけでもないし。
いいことばかりではないことも知っています。
それでも、子どもの未来を「ここまで!」って線引きすることだけはせずに、親としてできるかぎりのことはやりたい。
そんな想いを叶えるためにスタートしたのが、日本から海外に移住されて子育てしている日本人に、日本在住子育て中のRINDAさんと私ATSUSHIが、zoomウェビナーを使ってお話を伺っていく企画「なるほど!子育てザ・ワールド」。
第2回もどうぞお付き合いください。
シアトル在住大野拓未さんのご紹介
第2回目(7月25日(土))ゲストは、大野拓未さん。
神戸出身。
オーストラリアの公立高校留学を経て、渡米。大学と大学院で経済学を専攻し、なぜかアメリカの自転車業界で営業を担当。
その後、シアトルに住む日本人で知らぬ人はいないであろう、シアトル最大の日本語情報サイト【ジャングルシティ(https://www.junglecity.com)】を立ち上げられて今に至ります。
アジア系アメリカ人の夫と結婚されていて、9月に小学校4年生になる男の子のママです。
大野さんは、ファザーリング・ジャパン関西主催の【父子ツアーinシアトル】において、プログラムのアテンドをいただいたことがご縁で、今回もお話をうかがう機会をいただきました。
父子ツアーの様子もジャングルシティに掲載いただいています。(https://www.junglecity.com/blog/fathering-japan-kansai-in-seattle/)
こちらもぜひご覧ください。
きっかけはNHK英語講座・・・教材巻末「ホームステイ1ヶ月!」が目に留まる
海外に住むことになったきっかけは、高校時代に留学したことだそうです。
なぜ留学しようと思ったかというのは、もう忘れたそうなんですけど笑
ただまぁとにかく、留学するためにNHK英語講座で勉強をしていたときにそれはやってきました。
飛び込んできた「ホームステイ1ヶ月!」がおもしろそうで、親に「こんなんどうですか?」って見せたところ・・・
「1ヶ月で何しにいくん?1年以上のプログラムやったらいいよ!」
っていうお父さん、相当な胆力!
しかしそれに応じてしっかりと見つけてくる大野さんもさすが!
担任の先生に相談して、1年のプログラムを見つけてくるんですね。
ご両親の時代にはそういう機会はなかったので、親が経験できなかったことを、せめて子どもには経験させてあげたいという思いがあったそうです。
いつの時代も親心というのは一緒ですね。
17歳の冒険
きっかけは何気ないことでしたが、やはりこの年の頃にチャレンジできる気質は大きいのかもしれません。
17歳の子どもだけで空港に行く。
17歳の子どもだけで海外の街を散策する。
17歳の子どもだけでホームステイをする。
まぁなかなかさせるのも勇気いりますけど、そのチャレンジは結果としてシアトルに住むことにつながったそうなので、早い時期から視野を広げることはとても大事なことだなと、お話を聞いていて感じます。
ただ、やはりそこには教師であるご両親の「教師の仕事は子どもの可能性を広げてなんぼ」っていう精神あってのことだとも思います。
親も子も、ともに可能性を広げることを考える。
当たり前だけどとても大事なことを忘れないようにしないといけませんね。
海外・・・との出会いはレコードとペンパル
大野さんの留学のきっかけは基礎英語だったわけですが、海外との出会いは・・・なんとレコード!そしてペンパル!!(響きが古っ笑)
最初のきっかけは中学の友達だったそうです。
その友達は、イギリス音楽のレコードを買っていたそうでよく一緒に聴いていたんですって。
そしたらその友達は、イギリスのペンパルがいて、大野さんも紹介してもらい、やりとりがはじまることになったんだということなんですね。
ちなみに、ペンパルは文通相手のこと。(僕はわかりませんでした)
っていうか20代はもうわかんないんじゃないでしょうか。
メールのない時代、遠方の人とのやり取りは文通があたりまえだったんですよ!
そうしたつながりが、海外を身近にしていくんですね。ペンパルかぁ。
そういう海外との接点というのは、選択肢のひとつにつながる重要なピースかもしれないなとお話を聞いていて思いました。
留年は嫌!だから海外の大学へ
神戸では、高校から大学進学するとなると留年しないといけない。
でも、大学進学を目指さないなら留年せずに卒業できる。
皆さんならどっちを選択します?
これはなかなか難しい問題だと思うんです。
そこを即決!
「じゃあ留年無しで卒業で!」ってなるのは、大野さんの決断力!
ということで卒業されるわけですが、そこからどうするっていうことに対して、また大野さんは面白い選択をするんですよ!
大野さん)
シアトルから仕事で日本にやってきてた方が卒業後どうするのって、手紙送ってくれたり気にかけてくれて・・・
その方が、「ほんならシアトルに来て、2年制のコミュニティカレッジにきて、そのあと4年制の大学に編入すればいいんじゃない?」って言ってくれたんですよね。
親に相談して6か月後にはシアトルに行ってました。
RINDA)
6か月後には行ったんだ!
大野さん、決断早いですよね!
大野さん)
あんまり考えてないんですよ。
わかんないこと考えてもねぇ。
わかんないから行くわけですし。
なんにせよ、やりたいことがあったら応援してくれる親や親せきがいたのでできたかなぁ。
RINDA)
それって大きいですよね!
自分の息子も留学のときに「俺だったら絶対行くよ!うらやましい!」って言ってくれる先生がいたから頑張れたし、応援してくれる人が身近にいるのってとても大事だなぁ。
バラバラがあたりまえのシアトル
ATSUSHI)
僕、今日、ツーブロックなんですよ!
RINDA)
日本で問題になってるね~。
大野さん)
わたし、ツーブロックってなんや?ってしらべましたもん(笑)
ATSUSHI)
日本だと、とにかくあれやこれやといわれる教育環境ですが、アメリカはどうなんでしょう?
大野さん)
アメリカはとにかくバラバラなので強制できないし、そもそもそういう発想がないことは多いですよね。(もちろん人種や地域で違ってしまうことはあるんですが・・・)
日本とアメリカ、教育の違い?
ATSUSHI)
父子ツアーのときに学校を見学させてもらったときに感じたのは、シアトルは一人一人に寄り添ってるなぁと思うんです。
大野さん)
見学されたのは、子どもを通わせていたモンテッソーリの学校ですね。
私の子どもは、モンテッソーリのプリスクール(2〜5歳半)とキンダーガーテン(5歳半から6歳半)に通ってたんですけど、私にはすごくよくって。
モンテッソーリのプリスクールの場合、5歳半のときの状態をビジョンとして目指しているので、今出来ないことにあれこれクリティカルにならない、小さなことに悩まないんですよね。
私は、子どもが一人っ子だったからそれがすごくよかったんです。
それに、いろんな人種の子たちがいてるから「すごくダイバーシティーだなぁ」という印象をもって、それを夫に話したんです。
そしたら夫が「これはダイバーシティーじゃないよ」っていうんです。
「本当にダイバーシティーを感じるなら、公立の小学校にいかないと!」って。
要は、モンテッソーリってお金を払って学校に通えている子たちが集まっていて、ある意味似た属性の子たちだったんです。
夫は公立の小学校に通っていたからわかったんでしょうね。
「スクールバスに乗りたい!」で公立小に転校
大野さん)
とはいえ、私はこのままモンテッソーリに通うつもりでいたんです。
そこに息子が突然「従兄弟と一緒にスクールバスに乗って学校に行きたい!」って言い出したんです。
モンテッソーリは、私が送り迎えをしていて、近所の子たちは公立小学校に通っていたので、遊ぶ友達がいなかったんですね。
RINDA)
あーなるほど!
キンダー(幼稚園)から公立に行くんだって、自分から考えて言ったのかと思ったけど、従兄弟と一緒に行きたいってことだったんですね。
安心しました(笑)
大野さん)
とはいえ、モンテッソーリでは自分で決めることが多いから、少し気になったんですけど、先生も「モンテッソーリキッズの経験もあるから大丈夫!」って言ってくれて。
モンテッソーリキッズってすごいなと思うんですけど(笑)
子どもは順応性が高いこともあって(人によりますけど)、スムーズに馴染むことが出来たなぁと思います。
夏休みに先生たちがパレード!
今は、コロナウイルスの影響で学校にいけてないので、オンラインとプリントで課題をやっているのはどこも同じようです。
が、やっぱり先生たちの関わり方は、日本とは大きく違うようです。
大野さん)
夏休みの初日に、子ども達の住んでる住宅街をパレードみたいに先生たちがまわってくれたんです!
学校に行ってなくて会えないから、みんなしてまわってきてくれて、子どもひとりひとりに声をかけてくれたりして、すごくよかったし、子どもも本当にうれしそうにしてました。
RINDA)
ステキ〜〜〜!
ATSUSHI)
そういうひとりひとりに寄り添ってる感というか、それがちゃんと行動で表現されてるのがいいですよね!
日本ではそれは難しいわ・・・。
大野さん)
先生も必死と言うか、3年生になるタイミングは自主性が育ってくる頃なので、その頃に会えないっていうのはすごく残念がってましたね。
RINDA)
先生と子ども達、先生と家庭の距離が近い感じがしますよね。
PTAじゃなくてボランティアとして関わることが多いし。
誰がやったとかやらなかったとか、そういうのがアメリカは本当になくて、子ども達のお勉強(足し算とかアルファベットの書き方)とかを教えるのをサインアップしたりして、学校の敷居が低い感じがします。
褒める教育、家庭では?
前回、小西さんのお話でもアメリカでは、先生が子ども達をものすごく褒めてくれるっていうんです。
むしろ先生のほうが興奮して褒めちぎってくれる!
大野さんも、先生がいいところをビシバシ言ってくれるってお話がありました。
日本ではなかなかそういう機会にお目にかかれることはありませんよね。
とはいえ、そうした学校での教育環境は、家ではどう影響するんでしょう。
大野さん)
モンテッソーリでは、意見が合わないとお話し合いをするんです。
自分の子についてしか言えないですけど、「この子は話せばわかる」っていうのをすごく感じてます。
だから、息子が小さい頃からできるかぎり感情を言語化するようにって思っていますね。
悲しいって言うこともどんなふうに悲しいかっていうこととか。
あとは、辛いこととか苦しいことを溜め込まないようにしてほしいので、できるだけ話し合いの機会を持って、頭ごなしにならないように気をつけています。
なんで?っていうと言い訳が出てしまいますよね。
「Why did you do this?」ということは言わないようにしてます。
夫はときどき言っちゃってますけど、そのあとすごく反省してます(笑)
「なんでやらなかったの!?」ではなく「どうしてやらなかったのかな?」ってきちんと話をする環境を作れば、きちんと理由を説明してくれるんですよね。
無責任な「いいね!」はすごく大事だと思う!
大野さん)
アメリカではとにかく無責任に応援してくれるんですよね。
昔、ジャングルシティを立ち上げたときもそうだったんですよね。
立ち上げて何年か経ったとき、ある人に「あのとき君が何しようとしてたかよくわからないまま応援してたけど、今、何とかなってるよね。」って言われたんです。
私、その人の応援がすごく心に響いてたのに〜って(笑)
RINDA)
メッチャわかる〜〜〜!
アメリカに留学した息子も言ってました!
アメリカは”いい意味で”関心が薄いって。
心から応援してくれるんだけど、そこまで関心があるわけでもないんですよね。
あとから関心がついてくる感じ?
日本人アイデンティティは大事にしてほしい
個人的な印象ですが、ダイバーシティーは、主体性、自主性、自尊心がしっかりしているからこそ整うと感じています。
大野さんは、中国系アメリカ人の夫と結婚されているので、息子さんもふくめて、みんなアジア系アメリカ人なのですが、日本人としてのアイデンティティ、多様の象徴でもある息子さんのアイデンティティについては、親としてどんなふうに考えているんでしょう。
大野さん)
息子は自分はアメリカ人だという感覚を持っているけど、日本の影響はとても大きく受けているし、日系アメリカ人でもあるので、日本の血を引いていることは大事にしてほしいなと思っています。
だから、私のまわりで頑張っている日本人にたくさん会いにいくようにしています。
たとえば寿司職人のところに食べにいって、目の前で握ってもらったりとか。
そうやって、自分の中の日本人の血に、プライドというか誇りというか、そういうものを持って好きでいてほしいなと。
日本に帰るときも、日本のことをすごく好きでいてもらいたいので、とにかく楽しいことをしようと心がけています。
こないだ帰ったときは、宇宙兄弟が好きなのでJAXAにまで行ったり、茶道が好きなので、京都までお茶を立てにいってもらったりしました。
ATSUSHI)
本物を見せるってすごく大事ですね!
大野さん)
そうそう!
本物を感じる、探究心のようなものはずっと持っていてもらいたいですよね。
夫はサイクリングが趣味なんですけど、1年のはじめに家族の共有カレンダーにサイクリングの予定がダダダダーって反映されていくんです(笑)
4年に一回はフランスで大きな大会があって、そのために1年間本格的に練習するんです。
ただの趣味に1年びっしり費やして、海外まで行くとか!
でも、そういうのってすごくいいんだよって感じてほしいですよね。
去年は、夫のレースにフランスまでついていったんですよ!
で、ヨーロッパまで行ったついでにデンマーク本社の近くになるレゴランドも行ったりしました。
RINDA)
興味のあるところを掘り下げて、アイデンティティというか、こういう大人になってほしいと言うのを伝えていくようなイメージですね。
大野さん)
言葉で言ってもあまり伝わらないですよね。
私も、日本よりアメリカに住んでる時間が長いけど、でも日本人で、もう自分のアイデンティティもわからない部分もあるし。
だから、自分で考えていくんだろうなぁって思います。
その、考えられる入り口をつくればいいんですよね。
RINDA)
なるほど!
じゃあこうあってほしいとか、日本人アイデンティティがどうとか、っていうことにかぎらず、それを考えるきっかけ、チャンスを与えてあげることを大事にされてるんですね。
私が見つけた子育てのなるほど!
もう、日本の倍以上の時間をアメリカで過ごす大野さん。
もはやアイデンティティもあいまいで、だからこそ感じることもあると思うんですよね。
そこのところ、どうなんでしょう。
大野さん)
アメリカって、ひとりひとりのアメリカがあると言っても過言じゃないくらいに多様だと思うんですよね。
話をしないと全然わからない。
でも、話をして仕事を聞いてもまだわからない。
こないだヨガの先生に話を聞いたら、前職は弁護士だっていうんです。
だから、たくさん話を聞かないとわからないし、話を聞く前からその人をジャッジしない、その人を見た目でラベリングしないってすごく大事なんですよね。
あとは、いま、自分が置かれている状況も当たり前だと思わず、感謝するってことを忘れないってことですかね。
RINDA)
たしかにひとりひとりの多様性を大事にすること、感謝することってすごく大事!
親子間でも同じですよね。
でも、親子間だと感情も入り交じってなかなか難しいことも多いと思うんですよね。
大野さん)
そこは可能なかぎり我慢します(笑)
何かあったら、自分の部屋にこもったり、無心で草むしりをしたり(苦笑)
そんなことをしながら、過去のことを思い出すようにしているんです。
以前、子どもと一緒にスキーに行ってドジこいてしまったことがあったんです。
「自分アホちゃうか・・・お母さんってバカ・・・」って何度も口走って反省してね。
そしたら息子がいうんです。
「"silly""stupid"(いわゆるバカと言う意味)」」っていう"s"がつく言葉を自分に言ってはいけない!」
そんなふうになぐさめられて、全てを吸収して生まれ育ってきてくれた子どもに感謝と同時というか、本当に育ってきたことをすごいなって思ったんですよね。
だから、今は何か我慢できなくなりそうなときは、その時のことを思い出します。
ここまで頑張ってやってきたやんかって、過去のことを思い出して、自分を肯定するようにしていますね。
ATSUSHI)
なるほどなぁ。
これからのために、これまでの自分を肯定するってことが大事なんですね!
大野さん)
そうですね。
親としての自分を評価してあげるってすごく大事だと思います。
RINDA)
子どもの自己肯定感も大事だけど、親の自己肯定感も大事ですね!
いかがでしたか?
今回もおつき合いいただきありがとうございました!
経験談のお話を、テキストじゃなくて声として聞けるってすごく大事だなと思います。
オンラインが主流となる今だからこそ余計にそう思います。
いいな!って思って、じゃあすぐに行けるわけではないんですが、海外の良いところがあって、それを取り入れたい!って思ったときに、どんなことができるのか。
またみんなで考えてみたいですね!
次回は、8月22日(土)を予定しています。
またぜひおつき合いくださいね!
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