家族の進化論(KH・キリロム在住定松真理子さん)
なるほど!子育てザ・ワールド!とうとう第10回目になりました。
いつも素敵な話をたくさん聞かせていただいて、その度に思うんです。
子育ての話って、もっとたくさんの人とすべきことだなぁと。
みんな素晴らしい思いを持って子どもに寄り添っているはずなんです。
なのに、それを人に話したり、人の思いを聞いたりする機会ってとても少ないと思います。
人の話を聞いたり、自分の話をすれば、もっともっと自分の子育てのことがよくわかると思うし、関わり方にも幅が広がってくると思います。
少なくとも、僕自身は、この1年間、いろんな方の話を聞いてそれができてきているような気がしています。
この「なるほど!子育てザ・ワールド」が、子育て世代の子育てアウトプットを促すきっかけになれば幸いです。
というわけで、今回は、カンボジアに移住された定松真理子さんに、仕事や子育て、教育のお話を伺っていきたいと思います。
「なるほど!」連発の子育てザ・ワールド、どうぞお付き合いください。
定松真理子さんのご紹介
第10回目(10月16日(土))のゲストは、定松真理子さん。
小学5年生と2年生の娘さんと夫とともにカンボジア、キリロム国立公園内在住。
アクセンチュア株式会社でコンサルタントとして従事。
2度目の育休後、教育休職制度を利用して、慶應ビジネススクールに通いMBAを取得。
ガートナージャパン株式会社を経て、2019年1月に2人の娘とともに家族でカンボジアへ移住。
現職では、キリロム工科大学との産学連携プロジェクトやスポンサープログラムの運営を担当。
カンボジア・キリロム国立公園の大自然の中で、先端のITを英語で学び、テクノロジーが加速度的に進化する中で即戦力となる人材を育てようとするキリロム工科大学と産学連携プロジェクト&スポンサープログラムの運営に携わっています。
人生を棚卸しするためのMBA
アクセンチュアで2度の育休を経て、MBAを取得して、コンサルティングの現場に戻って海外のベンチャー企業へ。
これだけだと、ただただきらびやかなキャリアだなぁとため息しか出てきません。
でも、実際のところそんなことはありません(ご本人談)。
人のキャリアってどれもきらびやかに見えるものですが、歩んでいる本人からすると清濁合わせ飲みながらの毎日・・・なんてことはよくあります。
実際、コンサルティング業に邁進する中で、子育てが始まると今までのようにアクセル全開で仕事することはできなくなります。
子どもも大事、仕事も大事という中で、シビアに自分は何を優先したいのか、という問いを突きつけられるんです。
そんなときにふと思うんですよね。
「あれ?次、どういう人生をいきたいんだっけ・・・」
そんなふうに、自分の人生を棚卸ししようと思ったことが、MBAを取りに行こうと思ったきっかけだったそうです。
子育てとソーシャルインパクトの両立
ATSUSHI)
なるほど!MBAの勉強を始めたいと思って、結果的に棚卸しがされたのではなく、棚卸しをするためにMBAの勉強が始まったということなんですね。
一方で、MBAの取得とキリロムにいくことのつながりについて伺ってもいいでしょうか?
定松さん)
MBAを勉強する中で、自分の仕事・キャリアをどうしたのかということと、子どもの教育・キャリアをどうしたいのかと、2つの問いに直面することになります。
仕事に関しては、かなりの時間を費やすからこそ、ソーシャルインパクト・・・社会にインパクトを与えていくような仕事に自分の人生を捧げていきたいと思うようになりました。
一方で、子どもの教育についての話ですが、MBAを修了したところで上の子どもが公立の小学校に入ったんですが、最初の授業参観で、数十年前の自分たちが通っていた頃と同じフォーマットで授業をしていることに夫婦でカルチャーショックを受けたんです。
回れ右して、揃っていなかったからもう一回・・・っていうのを何度もやらされているのを見て、これでいいんだっけ?って。
夫婦で子どもの教育について話し合うようになりました。
その2つが重なっていて、ご縁などもあってキリロムに行くことになりました。
ATSUSHI)
なるほど、ご縁っていうことは積極的にキリロムにって言うわけではなかったってことですか?
定松さん)
そうなんです、自分たちで探していたわけでは全然なくて・・・。
夫が、社内の先輩で面白い事をやっている人がいるから視察に行ってみないかと友達に誘われて視察に行ったことがきっかけだったんです。
当時は、ただ面白いものを見に行く、くらいの感覚でした。
視察に行って帰ってきた当初、夫も「すごかったよ〜」くらいの感想だったんですが、次第に「向こうで働きたい」と気持ちが傾いていったんです。
視察に行って半年くらいでいくことが決まって、事業が軌道に乗った頃にみんなで移住しようとは思いましたが、最初の段階では夫を送り出すという結論になりました。
ただ、1年くらいそういう生活を経て、もっと家族で一緒に暮らしたいっていう思いも強くなって、それならばと予定を早めて移住することになりました。
とはいえそんな簡単ではなくて、私も転職して間もなかったし、もっとやり切りたいという思いもありました。
でも、先ほどお伝えしたように、ソーシャルインパクトのある事業であることや、事業運営するキリロム工科大学に附属小学校を作るという話があって、そこに子どもを通わせることができる、ということなどから、自分の腹落ち感と子どもの教育、それらを総合的に考えての決断でしたね。
ATSUSHI)
なるほどなぁ。
最初、カンボジアに行かれたのはパパの方だったわけなんですね。
で、1年過ごながら、やっぱり家族一緒になった方がいいよねということで、定松さんたちもいくことになったと・・・。
定松さん)
そうですね・・・いや、大変だったんですよ笑
転職して間もなくて、ワンオペになって、子どもも小学校に入って間もなくて、これ、このままじゃ家族バラバラになるよねっていう感じでした。
今までだったら、もう少し分担ができてやってきてましたけど、ワンオペってやっぱり大変なので、これはマズイよなって。
ATSUSHI)
夫婦でコンサルで両立ってメチャクチャ大変ですよね、わかります。
それだけでも大変なのにコンサル業でワンオペってもう大変どころじゃないよなと。
とはいえ、そこからほんなら移住しようっていうのはなかなかのことだと思うんですよね。
僕、小学生、中学生の子どもがいて、昔から教育変わってへんなぁとは感じるものの、危機感みたいなものはあまり感じてなかったんです。
定松さんは、そこが大きくて移住まで決断されたのかなと思いますが、なぜそこに危機感を抱かれたんでしょうか。
定松さん)
まず、大前提として日本の教育を全否定はしていないんです。
だけど、コンサル業界にいたからかもしれませんが、今までと同じやり方では生き残れないなって思うんです。
日本の教育の良さもあるけれど、足りないなぁということを夫婦二人ともがもともと感じていました。
変わっていない日本ってこれでいいんだっけ?って。
ATSUSHI)
おっしゃる通りですよね。
ビジネスはどんどん進化していってるのに、教育が30年前と変わってないとか、よくよく考えたらおかしいですもんね。
定松さん)
あっ、あと、夫が海外で教育を受けているというのも大きいと思います。
日本の教育と海外の教育、両方を知って比較できるというのは、幅と深みが出ると思うので、いつかは海外というのもどこかにはありましたね。
ATSUSHI)
決断に至るまでのことを振り返って、葛藤やワクワク・・・みたいなところはいかがでしたか?
もうワクワクが勝っていたような感じですか?
定松さん)
そうですね、カンボジアという新興国で、キリロムという国立公園内で、インターナショナルな環境、自然に囲まれ、英語に囲まれ、いろんな国の人たちに囲まれ、という場の魅力は絶対子どもたちにとっていいなと思いました。
カオスはカオスなんですが、この経験が財産になると思って振り切っちゃった感じですね。
カンボジアの生活?教育?
ATSUSHI)
カンボジアって正直行く機会がそうそうあるわけじゃないので、生活とか教育とか、そういったことについてぜひ教えて欲しいんですが。
定松さん)
それこそ5年くらい前だと、人身売買とか子どもが誘拐されるとかっていうこともあって、新興国で治安も良くなかったんですが、この2〜3年ですごく変わってきています。
象徴的なのはイオンモールが大人気ですっていうことですね。
1号店が大繁盛して2号店がオープンしたかと思えば、3号店4号店が立て続けにプランされているくらい、経済的な伸びも大きくて、日系のものがどんどんできて、変わってきていますね。
5年前は出歩けなかったりもしましたが、今はそんなことはなくなっています。
それがプノンペンの状況です。
私たちがいるキリロムはプノンペンから100kmくらい離れた高原地帯にあります。
標高1800mくらいで、日本で言う軽井沢のような、国王とかも使われていたいわゆる避暑地です。
プノンペンだと流石に移住は躊躇するところでしたが、こういうところだからこそ決断できたと言うところはありますね。
ATSUSHI)
今日は、Lindaさんに変わって息子のLindaくんがサポートに入ってくれています。
Lindaくんは一度行かれたことがあるんでしたよね。
いかがでしたか?
Lindaくん)
プノンペンから入ったんですが、空港降りた時は本当に衝撃を受けて、バイク何人乗りしてるんだって感じで、途上国だなというイメージでした。
そこから何時間もかけてキリロムに行くと、なんというか大学というより、自然に囲まれて、プールもあるしでリゾート地っぽい感じでした。
あと、カンボジア人の人たちがとてもフレンドリーで、初対面なのに雨の中でダンスを一緒にするくらいあっという間に仲良くなれました。
定松さん)
そうなんですよね。
日本政府の支援のおかげか、日本に対してとてもいいイメージを持ってくれていて、そしてフレンドリーなので、溶け込みやすいコミュニティーだなと思います。
何度か挫けそうな時もあったんですが、励まされてやっていけてるというところもあります。
移住前には考えていなかったですが、彼らのためにこの事業を成功させたいなという思いも芽生えましたね。
ATSUSHI)
教育はいかがでしたか?
定松さん)
子どもたちは、私たちの運営するキリロム工科大学で附属小学校を併設しているのでそこに通わせています。
元々は10名くらいで、世界最小のインターナショナルスクールなんていってましたが、下町からも通いたいという声が増えて今は20名くらいでやっています。
先生はフィリピンから何名かと、大学生が教えてくれていて、生徒はカンボジア人、インド人、日本人と、一歩間違えればカオスですが、このくらいのコミュニティーだと一日中一緒にいることもあって家族のような感じですね。
それがすごくいいなと思っています。
ATSUSHI)
日本でも、斜めの関係性づくりというものが活発になっていますが、あくまで教育とは別で、斜めの関係性づくりだけにフォーカスされていることも多いですけど、一緒くたになっているところがいいですね!
Lindaくんは学校の中でプログラムも受けられたと思いますが、どうでした?
Lindaくん)
IT系の学部があって、大自然の中でVRをつけて歩き回ったりするのがユニークで、大自然でITを学ぶことの面白さを感じました。
ATSUSHI)
確かに真逆な印象を受けてしまいますもんね〜。
定松さん)
今、キリロム工科大学は英語で先端テクノロジーを実践的にやっていくことを実践していて、英語のインターンシップを数多くやっています。
そのため、カンボジアでも特別な大学という位置づけになってきています。
大自然でやることなくて、勉強と仕事しかすることがない!みたいな良さもあって笑
家族の進化について
ATSUSHI)
ありがとうございます!
ここまでお聞きして、あっという間に時間も終わりに差し掛かってきました。
では、最後の質問として、お子さんたちが大きくなった先、ご家族がどんなふうになっていくのか、という先々のことについてお聞きしたいなと。
定松さん)
子どもと共に進んでいるので、子どもの状態を見ながら、まわりからの情報とかを聞いたりしながら、次どうしたらいいんだろうということは、今も夫婦で話し合っています。
お金も時間も有限の中で、子どものどこに投資をしていくのか・・・特に国語ですね。
日本語で行くのか、英語で行くのか。
思考力を英語で磨いていくのか、そこを諦めて日本に戻るのか。
思考を深める言語、本を読む言語についてしっかり考えて、中途半端にならないように考えながらやっていきたいと思っています。
明確なビジョンがあるわけではなくて、今、子どもにとってベストだと思うことを状況を見ながら、夫婦で話し合い、子どもの意見を聞きながら、決めていっているような感じです。
夫はもう少し先を見据えているようですが、私は、私も先のことももちろん考えながら、今、この瞬間をいっそう大事にしていきたいなと。
ATSUSHI)
子どものことに特にフォーカスしていただきましたが、仕事も含めた定松さんのこの先はどうですか?
定松さん)
難しい質問ですね〜(笑)
まず、今取り組んでいる事業は社会的にも意義のあるものだと思っているので、しっかり実らせていくことはやっていきたいなと。
それに取り組む中で、ここにきて夫婦、子どもとの距離が近くなっていて、近さゆえにぶつかることも多いんですけど、家族として濃い時間を過ごしていくことが我が家の進化につながっていくのかなと思っています。
ATSUSHI)
なるほどですね〜。
今は、子どもとの距離感を満喫しながら決められていくということだと思いますが、子どもたちが自立していった先、ご自身にフォーカスすることになった時にはどんなことをしてみたいですか?
定松さん)
会社を立ち上げたいですね!
どんな・・・というところまではまだ決めていませんが、教育や人材、人に関わる仕事で、生涯かけてやっていけるものを作っていきたいなと思っています!
いかがでしたか?
今回も素晴らしいお話を聞かせていただきました。
子どもたちのことをしっかり考えながら、それでもご自身のことも大切にし、ご自身の野心もしっかりお持ちなところが素敵だなぁと思って聞いていました。
カンボジア、思っていた以上に素敵なところなんだなと思って、是非ともいきたくなりました。
以前、LIndaさんが息子のLindaくんをカンボジアに連れていった時の話をしてくれていたんです。
「次男が「ここにいると俺は何でもできる気がする。俺にできることがいっぱい転がってる」「でも、日本にいるときはそれがわからない」と言うんです。」
本当にそういうところなんだなというのがすごく伝わってきました。
今回も、お付き合いいただきありがとうございました!
なるほど!子育てザ・ワールドの次回は、近々お知らせ予定です。
次も面白いお話ができると思っていますので、乞うご期待!