見出し画像

#SIGGRAPH 2023に参加して来ました

SIGGRAPHとは・・・

wanget CTO就任のnoteを書いてから早2ヶ月、ようやくこの業界の技術トレンドのほんの一部が理解できるようになってきて、今回は最前線の情報を入手すべく、ロサンゼルスで開催されたSIGGRAPH 2023に参加して来ましたので、現状の自分の理解と備忘録として頭の中を書き出しておこうかと思い。
まず、SIGGRAPHとは、、MWCしか知らないテレコム一筋できた私には聞いたこともない全く未知のものでしたが、コンピュータグラフィクスの分野では私の年齢よりも歴史が長く、毎年夏にアメリカで開催され、世界中の多くの研究者によって最新のCGに関する論文が発表される、この業界の学会+大手CGソフト会社による展示会、といったイベントです。
今回の会場はロサンゼルスのダウンタウンにあるConvention Centerで、1年で一番雨も少なく、穏やかな夏の気候の中、会場付近にはSIGGRAPHのIDカードを首から下げた短パンサンダル姿、カラフルな髪の方々、ぬいぐるみを抱えた方もいて、これまた今までの業界とはだいぶ違う風景を目の当たりしながら会場に足を踏み入れました。

会場入り口と素晴らしい青空
会場エントランス、イベントの中心エリアで参加者で溢れていた

今回の参加にあたり、事前の予定されているカンファレンスの情報から、以下のような観点での目的を持って臨んでみました。

  • コンピュータグラフィクスの標準化の位置付けとフォローしていくべき標準

  • クリエイティブにおける生成系AIの適用状況とアカデミックな方々の見解

コンピュータグラフィクスの標準化

予定されているカンファレンスの情報を眺めていて、自分の興味と何となく今回キーとなるエリアなんだろうなぁ、という観点から、Khronosグループが開発、策定している以下の2つのキーワードが目に付いたので、それらに関するカンファレンスに参加してみました。

  • glTF

  • OpenXR

まずglTF、JSONによって3Dアセット(3Dモデルではない、、と強調されていたので念の為、、)を表現するためのファイルフォーマットで、私自身これまでも知らずにこのフォーマットで3Dアセットファイルを扱っていたのですが、改めて、なぜglTFなのか、標準化としてどういうところを重点的に議論されているか、というところを知ると、大変興味深いものでした。
まず、静的なオブジェクトとしてしか扱ったことなかったglTFファイルですが、Interactivity、GeoSpace、Animationといった動的な要素を複雑なコーディングを行わずに、Extensionで実装していくことが考えられているということ、また、そういった要素の標準化がここ1年以内に盛りだくさんで予定されているという印象でした。あとは、3DCommerceというWGが個別に立てられていてe-commerce適用に特化した標準化の議論がされているところも非常に興味のあるところで、フォローしていくと面白そうだと思いました。

短期的なglTFロードマップ(プレゼンテーションからの抜粋)

より質の高い、かつそれぞれの業界に特化した3Dアセットを製作するためには、3DCG製作ソフトウェアに最適化されたフォーマットで製作、保存するのがやはりベストソリューションなのかと勝手に思い込んでいたのですが、このロードマップを見ると、時と場合を考えればそうでもないのかと。glTF (GLB)ファイルフォーマットでの保存、読み込みは大体のソフトウェアで可能なので、今後も標準化のウォッチと、社内3D製作チーム内での知識習得を行っていってもいく価値は十分にあるのかと。
次に、OpenXR。このエリアは、少なくとも日本ではエンターテイメント、ゲーム業界で牽引されていて、標準化、という動きとはほど遠く、それぞれの企業が提供するプラットフォームとサポートされたデバイス上でいかに安定して、見栄え良く動作するかにフォーカスされている印象がありました。そうすることによりXR、特にメタバースという言葉を広げるためには一番の近道で、一般化するためのベストな方法なのだと私自身思っていました。今回のOpenXRに関するカンファレンスに参加してみて、OpenXRの目指すところは、そのサイロの差分吸収に徹するような内容に見えました。絵的には標準化のあるべき姿で、無数に存在するXRデバイスを気にすることなくXRアプリを開発することができるのは非常に魅力的で、アプリ適用のエリアも広がっていくことができるのかと。理想的過ぎです!

OpenXR APIの位置付けのイメージ(プレゼンテーションからの抜粋)

現状、正直なところゲームエンジンをターゲットにしたアプリ開発に手を出すことはできないので、W3Cが策定しているWebXRにフォーカスして、Webブラウザ上での動作にも親和性の高いglTFをフォローしつつ、Webブラウザ上で提供できる3Dアセット製作をメインに、並行してOpenXRの標準化動向もフォローしていくことによって、気づいたらOpenXRのプレゼン資料にあるようにOpenXRがいい感じでWebブラウザもネイティブVRデバイスも関係なくAPIが吸収してくれることを・・・。そして、ここに明確に話に出てこないApple Vision Proはどうなのか、どのレイヤで親和性があるのか、もう少し自分自身の勉強が必要なところなのかと感じました。。

クリエイティブにおける生成系AIの適用

この話題に対しては、なるべく広い視点での現状把握を目的に、以下の2つのカンファレンスに参加してみました。

  • NVIDIA主催のCGとAIを題したパネルディスカッション

  • クリエイティブWorkflowにおける生成系AI

前者は、この業界では知らない人はいないコンピュータグラフィクス関連大企業であるNVIDIA、Adobe、Unityの方々の登壇で、プロダクトを持つ立場での生成系AIに対する現在地を知ることができることを期待して参加しました。まず、ディスカッションの冒頭、表現は違えど3人ともに、生成系AIはヘルパーである、アシスタントである、プロトタイプを作るものである、と、ディスカッションを通して、一貫してまだまだクリエイターのオリジナリティとクオリティは必要なもので、そこがAIを適用する際の制限にもなっているというコメントも聞かれました。そして、締めの言葉には、生成系AIの進化に伴い、クリエイターはよりクリエイティブにフォーカスすべき、と、特定の生成系AIの技術に言及することなく、全ての登壇者が一貫性のある議論を行なっているところからも、選択すべき生成系AIにも、それぞれの優位性にも正解はなく、その位置付けは非常にわかりやすい(本音は分かりませんが・・・)内容だったのではと思いました。
後者については、Dr. Patrick Parra PennefatherというBritish Columbia大学の研究者の方で、セッションの中では、ロサンゼルスといえば、という題材で参加者に1枚の紙に絵を書いてもらったり(プロンプトに対する生成のパターンのイメージを持ってもらいたかったと・・・)、グループワーク的な形で、セッションのタイトルについてお互いの考えをインタビューし合うといった、この手のイベントでは経験したことのない新鮮なセッションでした。ただし、ここでも、テーマは、生成系AIはプロトタイプ、初期段階のイメージ、コンセプトのためか?より大きなデザイン、ビジョンを持つためのツールか?と、現状把握には十分すぎるくらい一貫したトピックで、改めて、クリエイティブにおける生成系AIの現在地が認識できる内容でした。そして、しっかりと自分の著書のアピールもされてました。
当初より、このトピックには現時点で明確な答えはないことは想定通りでしたが、これだけ一貫した意見を聞くと、単にイメージや動画の元ネタを作るためにMidjournyやStable Diffusionにプロンプトを与えて結果を得る、だけではなく、もう一歩踏み込んで、その適用領域、結果をどう評価するか、を自身のワークフローにカスタマイズする必要があるのでは、と、モヤモヤした感じで結論付けました。

今回は・・・

この業界での標準化、そして、生成系AIの適用それぞれの現状について十分に知ることができて、目的は達成できたと。
そして、自分が足を踏み入れたこのコンピュータグラフィクスの世界は、これまで関わってきた業界とは、人も内容も、おそらくスピード感も全く違うのではと認識させられました。近い将来、モヤモヤした感じの生成系AIの"適用領域、結果をどう評価するか"あたりのトピックに絞ってnoteできるくらいもっとこの業界に浸かっていければと思いつつ・・・、

やはり、目的はこれだけではなく、今回も、趣味であるクラフトビールのブルワリーも巡ってきました。特に事前調査もなく、現地で近いところを検索したら、思った以上にマイクロブルワリーが点在していてびっくりしました。以下、滞在中に訪れたタップルームです。

今回の収穫はHPBを知ることができたことです。IPA、Hazy IPAともに私の苦手な特有の味がなく、苦味とHazyのフルーティさが直接やってくる感じが自分の好みにピッタリで、しかも、HPB出身の方が静岡のWCBの醸造に関わられている、ということで、一瞬で虜になってしまいました!お取り寄せ確定のブルワリーでした。次の出張が楽しみですw

HPBの外観、ドジャースタジアムの近くで周りには緑も多く外飲みが最高
訪問時のラインナップ、TIMBOの意味は分からず・・・

いいなと思ったら応援しよう!