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阪急梅田の変形表記に見る『文字』の発生

 日経電子版の記事【阪急梅田駅切符の「田」なぜ変 識別便利、先人の知恵
とことん調査隊】は、「(記事より)阪急梅田駅で購入した切符の印字。梅田の「田」の部分が、本来の漢字(「口」の中に「十」)ではなく、「口」の中が「メ」のような形になっている」コトを徹底的に深掘りした興趣溢れるリポートです。



 この記事で紹介されるのは、たった一つの変形表記の事例ですが、それでも、今までにない新しい『文字』が発生する、生まれてくる経緯について、遥か太古の中国大陸に思いを馳せるタイムマシンのようです。大昔、まだ今使われているような漢字が出揃っていなかった時代に、どのようにして新しい漢字が作られ、また、発生した文字がどのように変化・淘汰されていったのか、その一端を垣間見ることができるかも知れません……

 さっそく、記事からそのエッセンスを抽出してみると――

▶『文字』の発生・継続の要因・特徴

(1)時代の変化
   
次々と路線が増え、扇の要の駅である梅田の利用客が急増、他に
  駅名に田の付く駅が5つある状況で、改札係が切符を目視で瞬時に識別
  する必要が出てくる。

(2)用途の発生
   
改札係が切符を目視で瞬時に識別する必要。

(3)経緯の不明瞭性(自然発生) 
   
公式資料・当時を知る社員・社史などが不存在で、始まった経緯が
  定かではない。必要に応じた自然発生的なものだったのではないか?

(4)惰性的継続
   
自動改札になっても何故変形表記が使われ続けるのか、そこにある
  文字の力とは何か?歴史の重みという惰性、過去へのリスペクト、
  初めて見た時から慣れ親しんでいる……

(5)自然的普及
   
「(記事より)梅田駅で利用者らに変形表記について聞くと、
  「言われて初めて気付いた」という人がいる一方、「昔から目にして
  いるから疑問に思ったこともない」」
   ⇨一度作られ一定レベルまで拡散した文字は、自然に普及していく。



 このごく短い記事は、『文字』というものが、時代の変化、新たな用途の誕生などによって、生活の現場で自然発生し、その利便性によってごく自然に無意識的に普及、そして、歴史の重みという惰性によって継続していく、そんなことを考えさせてくれます。



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