人間の考えている事を理解する機械
日経電子版の記事【グーグル最新AI、読解力も人間超え 驚異の学習法
超人間・万能AI(上)】は、「言語らしさ」を予測する「言語モデル」というAI技術を使って、AIが、文章読解の分野でも人間の平均レベルを超え始めた、というリポートです。
この記事、だんだんAIも複雑な文章を理解できるようになっていくんだな、と思ったものの、それだけで危うくスルーする所でした。しかし、よくよく考えてみると、AIの読解力が人間を超える、ということは、AIが、言語レベルで人間の考えている事を理解する、という事です――
機械が人間の考えている事を理解する、というのは、人類史上初めての出来事であり、重大なパラダイムシフトではなかろうか?
人間と機械とのインタラクションは、それこそクルマのハンドル操作から、プログラムによってコンピューターを動かす事まで、人間が、自分の考えている事を、様々な手段で機械に伝達する事によって成り立っています。
もちろん、音声入力、音声UI(ユーザーインターフェース)も、その延長線上にあり、言語レベルで人間の考えている事を高い精度で理解できる機械を、言語によって思い通りに動かせるようになることは、人間にとって最も自然なインタラクションでありストレスフリーな状態(例えば、機械の操作方法を学ぶ必要がない)だと言えます。
しかし、文章認識の精度がある一定のレベルを超えると(それをシンギュラリティと表現するかどうかは別として)、SF的かも知れませんが、遠い将来(近い将来?)、人間と機械とのインタラクションには、単なる音声UIのレベルを超えた様々なブレークスルーが起きてくるのではないでしょうか?
▶人間‐機械インタラクションのブレークスルー
(1)人間の言語を機械のプログラムに自動翻訳する機械
今は、言語で機械を動かす、機械が人間の考えている事を理解すると
言っても、機械の側にその言語に対応して動くプログラムがなければ
何も始まらない。もし、機械が、人間の言語を理解して、自らをその
スペックの範囲で動かすプログラムを自動生成できるようになれば、
文字通りプログラムレスな世界が実現する。
(2)高い精度で人間を観察できる機械
機械が、人間を様々な生体反応や会話などの言語によって高い精度で
観察できるようになれば、より深く人間に寄り添えるサービスを開発
できる、と同時に、一歩間違えば、監視の道具、最強・最悪のウソ
発見器にもなりうる。
(3)言語的思考で動く機械……
――何と言っても最大のブレークスルーは、最後に挙げた、機械が言語的に思考するようになる事だと思われます。
そもそも、テクノロジーの進歩は、科学的(数式的・プログラム的・アルゴリズム)な思考だけでは達成できない、と考えられるからです。テクノロジーが進歩するには、まず、夢のようなテクノロジーが言語化され、そして、それを実現するための仮説が言語化される、言語的な思考が必要です。その意味で、言語とは、『夢を運ぶ舟』のようなものです。
研究・開発・計画が煮詰まって来た段階でならいざ知らず、初期の段階で、夢を数式で見る人や、仮説をいきなり数式で示す人はいないでしょう。言語には、漠然としたもの、未だ存在しないものを見える化する稀有なポテンシャルがあり、人間の文明の発展はそのことに支えられているといっても過言ではないと考えられます……
機械がそのポテンシャルを持つ、という事の意味は、予めどれほど考えても考え過ぎという事はない、と思われるのです。
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