ファシリテーションするコミュニケーションロボット

 この記事【仕切り役はロボットのクマ ムダの多い会議が大変革】に登場するロボットの『営女くま』、素晴らしくイノベーティブな発明だと思います。記事から、この『営女くま』を活用した会議の仕組みを整理してみると――

▶ファシリテーターロボ『営女くま』の会議システム

①主催者は、会議の種類、参加人数、終了時間、終了条件をシステムに入力する【終了時間順守の効果】【デフォルトの会議時間を圧縮する効果】。②参加者は、入口でピックアップするボールのナンバーに従い、無作為な席順で着席【発言ヒエラルキーの解体効果】。③『営女くま』による音声案内【ロボなので人と違い角が立たないソフトなファシリテーション効果】 ●発言が多すぎる人の抑制。 ●少なすぎる人の発言を促す【ランダムな指名による緊張感】【普段発言しない人のアイデアを引き出す効果】。 ●終了時間の周知。 ●会議の最後にまとめを行う人をランダムに指名する【結論無しの回避効果】。④『営女くま』のビジュアル・・・かわいい⇒話のネタ⇒【場が和む効果】⑤『営女くま』の将来・・・AI化して議事録作成、外販も。

――特定の企業だけでなく、どんな会議にも使えそうな汎用性があり、AIを搭載した本格的なコミュニケーションロボットに成長する日が楽しみです。以下では、AI化されたロボットと仮定して考えてみます。

 まず、このようにファシリテーター役をロボットに委ねるという事は、そのロボットの基本的な性格に依拠して会議を進行させる事、と捉えることが出来ます。この場合の性格、ファシリテーターロボに求められる性格は――

▶ファシリテーターロボの性格

①【公平性】会議条件の設定入力の際にバイアスがかからない限り、『公平』で悪意がない。②【合目的性】会議の時間を守って結論を出すという意味で『合目的的』である。③【中立性】人ではなくロボットという全くの中立的立場なので、角の立たないファシリテーションができる。

――人間がファシリテーターだと、これら公平性・合目的性・中立性といった性格を100%兼ね備えていることはほぼ不可能で、変にファシリテーションすると会議を特定の方向に誘導していると捉えられたり、自身が議論にはまり込んでしまって合目的性を発揮できなかったり、という事が出てきそうです。中立性に至っては、誰に対しても角の立たないファシリテーションというのは、かなり難しい。

そもそも、現実に行われている会議では、ファシリテーターが存在しない事の方が多いかも知れません。

 このようなファシリテーターロボの性格によって進行される会議は、会議の参加者に次のようなUX(ユーザー・エクスペリエンス)をもたらすと考えられます――

▶ファシリテーターロボが進行する会議のUX

①【緊張感】会議は時間内に結論を出す場であるという、緊張感のある体験。②【公平感】会議の場では誰もが平等に自分の意見を述べられる、という体験。③【達成感】実際に時間内で結論を得られる、という体験。④【自信・効力感】自分の意見を発信し、それが採用される、という体験。⑤【充実感】多くの人の意見をマッシュアップして、斬新で有効性の感じられる結論を得た、という体験。⑥【結束感】中身のある議論がもたらす、チームとしての結束が高まった、という体験。

――これらの体験は、最悪の会議のもたらす最悪の体験、眠気・不公平感・むなしさ・無力感・無駄・孤立感・疲労感などとは無縁の体験です。

 このように、コミュニケーションロボットとは、(会議なら会議という)目的に合わせた性格をいかにデザインするかによって、人間同士の様々なコミュニケーション(例えば会議)のUXを最大化し、人間がより大きな力を発揮したり、絆を強めたり、幸福を感じられるようにするロボットだと言えそうです。

一例として、最近の日経電子版の記事【手のひらに乗るロボ、一家に一台 ユカイ工学】(本稿末尾に添付)に、留守番中の子どもの見守りを助けるBOCCOという好例がありました。BOCCOは、見守りという必要な、大切なコミュニケーションを、BOCCOを通した楽しい体験にグレードアップすることによって、家族の絆を強めることができるものです。

 コミュニケーションロボットは、それ自身は自我をもたない機械ですが、人間同士のコミュニケーションを円滑にするという、類稀な心理学的効果を発揮します。その事は、一見機械が人間に影響を及ぼしているように思えますが、実は、コミュニケーションロボットをデザインする時点で人間の意思がインプットされている事を忘れてはいけないと思います。

 コミュニケーションロボットには、人間の思いが込められているのです。その意味で、『音声AIとの会話』というUI(ユーザーインターフェース)は、いろいろな形で人間の能力を拡張することの出来る卓越したテクノロジー、第4次産業革命の時代を牽引していくアクセラレータの一つと言ってよいと思います。

https://style.nikkei.com/article/DGXMZO31528700Y8A600C1000000?type=my

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31833280V10C18A6000000/

https://comemo.io/entries/8349

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