ソニーaiboが愛おしい訳

 ソニーストアのaiboのページを見ると、「心のスイッチ オンになる 瞳、姿、仕草」というキャッチフレーズが踊っています。この記事「ソニーaibo徹底分解(上・中・下)」は、どのようにして「心のスイッチをオンにする」のか、開発者の並々ならぬこだわりの物語となっています。記事の内容をaiboのキャッチフレーズに沿って整理してみると――

【1】心のスイッチがオンになる瞳

●『有機ELディスプレー』・・・生命感を出すには目の表情が最重要。

【2】心のスイッチがオンになる姿

●『プリっとしたフォルム』

【3】心のスイッチがオンになる仕草

①『生き物のような動き』=気付き+考え(成長)+自律的な行動           =センサー+AI(本体+クラウド)+アクチュエーター②センサーの例 ●感圧範囲の広いセンサー=オーナーの微妙な感情を認識 ●タッチセンサー=人に触られたことを検知③小型・大トルクのアクチュエーター=限られた実装スペース+ダイナミックな動き④小さな頭部に多機能を搭載するために高まる実装のハードル ・・・搭載できるアクチュエーターには限りがあり、からくり機構も活用。 ・・・当初108本に膨れ上がった、頭部から首を通る信号線を86本に絞り込み。⑤尻振機構=かわいさがグンと増すが、機構設計が極端に難しくなる。 ●肩から腰とお尻でボディーが分割されるため、実装スペースが激減。 ●ボディーが分割され、1つの回転軸でつながっている構造となり、腰のフレームの剛性を高めないと歩行できない。  ・・・軽量なマグネシウム合金を使用。⑥動きを追求した結果、駆動部分に隙間ができる。 ・・・シャッター機構・柔らかい素材等で安全対策。

記事を通して、ロボットを、特に小型犬サイズのような小さなロボットを、生き物のように動かすのがいかに大変なことなのかが伝わってきます。何と言っても「心のスイッチをオンにする」というコンセプトはハードルが高いです。aiboのサイトには、「思わず触れずにはいられない未体験の愛おしさ」というキャッチコピーも出てきますが、「心のスイッチをオンにする」には、この「愛おしさ」が不可欠の要素となるはずです。何故なら、ロボットの世界では、「愛おしさ」の対極に「不気味の谷」という厄介な現象が控えているからです。「不気味の谷」とは、ロボットが中途半端にリアルなときに、人間が不気味さを感じる現象です。

「不気味の谷」には、見た目と表情の二つの側面がありそうです。例えば、見た目が人間そっくりでも、全く生気が感じられなければ、生きているように感じられなければ不気味さを覚えます。表情や仕草も、その機微まで再現されていない、何か普通と違う動きだと、ありえない表情だと不気味さを覚えてしまいます。

表情・仕草の不気味さは、モデルとなる人間や動物の表情・仕草をキャプチャーしてトレースする技術的な課題となりそうです。既に人工筋肉を3Dプリンターで成形して、低電圧で動作させるような技術、伸縮性のあるセンサーなども開発されているようなので、もし第3世代のアイボが誕生するとしたら、その頃には機構設計に取り入れられそうな有用な技術がたくさん開発されているかも知れません。

問題は見た目です。研究の進むソフトロボットのテクノロジーで、小型犬そっくりの、やわらかくて毛の生えたアイボが誕生したら?小型犬そっくりだけど、どこか本物とは違うロボット……これは「不気味の谷」に引っ掛かりそうです。ここで、私は、一つの事実に気付きました。

 aiboが愛おしいのは、aiboがロボットだと分かるから……小型犬そっくりでもなく、いかにもロボットなロボットでもなく……。aiboが愛おしいのは、aiboが小型犬ぽいロボット、ロボットらしさを残したaiboという一つのキャラクターだからではなかろうか。

将来、アイボが進化し第3世代が誕生するようなことがあっても、ボディーの中、センサーやアクチュエーターには革新的なテクノロジーが使われるかも知れませんが、その姿は、aiboらしさを残したものになりそうです。人間というのは、そっくりなモノではなく、個性的なモノに感情移入するんですね。

 

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28687970Y8A320C1000000/

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28689060Y8A320C1000000/

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28689100Y8A320C1000000/

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