『天使の翼』第12章(1)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
狂信者にとって、人生とは死に至る待合室に過ぎない。その者にとっては、待合室の扉の向こうに待っている死こそが、全価値である。
大多数の人間は、善人でも悪人でもない。もっとも鋭利な善と悪に出会えるのは、天才か狂気の中である。
(第一王朝期の神学者)
わたしの頭の中は、いつの間にか空っぽになっていた。嫌なことも、つらいことも、とにかく心の負担になるようなことはすべて忘れた状態で目を覚ました。とても寒くて、自分で自分が震えたのが分かって目覚めた。
ハッとする。
――体が湿っている。
ゆっくりと周囲を見回す。
わたしは、低木の茂みの中に横たわっている。
茂みの中に、斜めに日が差してくる……
わたしは、突然――心の中に大きな音が鳴り響いたような感じ――思い出した。――SSIPのパトロール・エアカーがまさに墜落せんとする刹那を……
一気に緊張したわたしは、がばと上半身を起こして、低木のひねた横枝にしたたか頭を打ち付けた。キキキキキと、甲高い声を発して、虫だか鳥だかが飛び立っていった……