《連続投稿500日達成!》『専門家科学』から『市民科学』への回帰
日経電子版の記事【あなたの出番です 科学の発見に市民の力】は、科学の研究に一般の市民が関与する『市民科学』についての興味深いリポートです。
さっそく、記事からそのような事例を拾ってみると――
▶『市民科学』の事例
① 釣り人がネットに投稿した釣果、魚の画像で⇨生態系を研究する。
② 専用ソフトを自分のパソコンに入れ、ネットで割り当てられた計算を
する仕組みで、世界中のコンピューターを連携し⇨新型コロナウイルスの
たんぱく質を解析する。
③ スマホで撮った雪の結晶の画像を募り⇨気象の監視予測技術に貢献
する。
など
このような『市民科学』の優位性を考えるには、そもそも、科学研究の成果・進展はどのような時にもたらされるのか、振り返ってみる必要がありそうです――
▶研究が飛躍する時とは?
① 旺盛な好奇心が⇨新たな気付きを得た時。
② 特定の事象に強い関心があり⇨こだわり続けた時。
③ 学界的・学会的・学問的なワク、見えない壁から⇨解放された時
(学際的な自由)。
④ 過度な集中から一歩離れ⇨一息ついて心、思考を遊ばせた時
(お風呂に入っている時、散歩している時、など)。
⑤ 研究室を飛び出して⇨広く世界、フィールドに視野を向けた時。
⑥ 何かのきっかけで、異質なもの同士が⇨結び付いた時(新結合)。
など
こうしてみると、研究が飛躍する時、科学が飛躍する人間的、心理的な条件を、『市民科学』は見事に備えているように思えます――
▶科学が飛躍する人間的、心理的な条件を備えた
『市民科学』
① 世の中には、旺盛な好奇心で、人が思いもよらないコトに強いこだわり
をもって追求、活動している人がいる。
② 専門知識が詰め込まれてないが故に、斬新な発想・着眼点・方法論等で
対象に迫ることができる。
③ 専門分野に過度に集中しない事が、時にあっさりと突破口を開く
アイデアを浮かび上がらせる。
④ 世界中に広がる市民のネットワークは、イコール、広い視野そのもの。
⑤ 市民のネットワークは、ダイバーシティなオープンイノベーションの
坩堝。
広く市民が科学の研究に関与する『市民科学』は、科学の発展に欠かせない――
①旺盛な好奇心
②自由な発想
③広い視野(世界中に広がるフィールド)
④オープンイノベーションのエコシステム
――の4つを兼備しており、大きな可能性と課題をもっているのだ、と思います。
▶『市民科学』のポテンシャルと課題
(1)ポテンシャル
① ますます複雑さを増す地球規模の課題、複雑系など、21世紀に科学
が直面する問題は、一握りの専門家が担う専門家科学ではカバーでき
ない(市民科学で可能となる膨大な研究時間と経済価値、など)。
② インターネット・スマホ・SNSの積極的な活用が、市民科学の
社会実装を後押しする。
(2)課題
① 第4次産業革命のもう一方のアクセラレータ、AI+IoTとの組み
合わせ、使い分け。
② 市民の収集する情報の質と誤謬の排除をいかに担保するか。
歴史好きの人には良く知られているように、もともと、科学の研究という作業には専門家はなく、貴族や一般の市民が担っていたのです。記事にもありますが、コペルニクスは司祭、ラボアジェは徴税官でした。今、時代は、『専門家科学』から専門家と市民の協働による『市民科学』へ回帰しようとしているのだ、と考えられます。
19世紀に台頭した『専門家科学』は偉大な功績を上げましたが、同時に負の部分(一つだけ例を挙げるなら核開発)も抱えています。『市民科学』のチェック機能が果たすべき役割についても、これからますますその比重を増していくのではないでしょうか。
《当ページにご来訪いただき、ありがとうございました!》
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