GDPを無意味にするIT化の奔流
この記事『GDPが映さぬ15兆円 ネットの恩恵「無料の豊かさ」』を読んで、改めてITのもたらす『消費者余剰』というものの大きさを痛感しました。消費者余剰とは、私が調べた中で一番分かり易かった定義は――
消費者余剰=支払っても良いと考える価格ー実際に支払う価格
つまり、消費者余剰は、本来、ITに関わるモノ・サービスだけではなく、あらゆるモノ・サービスについて発生するものなのですが、ITの特性から、ITのもたらす消費者余剰が到底無視できない大きなものになってきている、と言うのです。その特性とは――
①デジタル化 ⇒データの複製コストが限りなくゼロに近い ⇒アナログ媒体と比べ生産コストの圧倒的な優位性 ②ウェブ化 ⇒時間・場所に縛られずに利用できる ⇒欲しい時に入手できる優位性 ③クラウド化 ⇒データを保存しなくてよい(データをダウンロードした端末を携帯する、という事が必要ない) ⇒持ち歩かなくてよい優位性
これだけの優位性があれば、ITのもたらす消費者余剰は、いろいろな場面でどんどん増えていきそうです。何と言っても、ITは経済成長のドライバーですから。そして、この消費者余剰は、消費者の主観的な判断に委ねられているので計測困難で、GDP(国内総生産)には反映していないという訳です。
ところが、調べていくうちに分かったのは、ITのもたらす価値には、他にもGDPに反映していない価値、つまり、非貨幣的価値があるという事でした。それは、聞いてみれば、当たり前すぎて見落としてしまいそうな、それでいて相当に大きな金額になりそうな項目です――
① 余剰時間(ITによって節約できる時間。買い物にかかる時間・調べ物にかかる時間etc.) ② 情報資産(消費者の作るSNS記事・レビュー・質問と回答etc.)
ここまで来ると、一体どれだけのものがGDPから抜け落ちているのだろう、と思わざるを得ません。そこで、IT関連に限らずGDPにカウントされていない項目を思いつくまま列挙してみました――
・家事労働
・ボランティア活動
・地下経済
・シェアリング・エコノミー
・中古品売買(資産が移動しただけで、新たに生産された訳ではない)
・・・・・・・
考えてみれば、GDPというのは、生産量を把握するためのものですから、第3次・第4次産業革命のもたらす豊かさを把握することはできないのです。ITのもたらすモノ・サービスがGDPに反映する既存産業の生産額を減じていることも考え合わせると、ITの進んだ社会ほどGDPのレベルが低い、という事にもなりかねません。GDPに替わる新たな指標が、是非とも必要です。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28234050W8A310C1SHA000/