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『天使の翼』第12章(24)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
冷たい風が、わたしの頬をなぶった。
(あれこれ思い悩んでる場合じゃないわ!)
結論の出る問題ではないし、気にはなるけど、今はその時ではない。
(今夜の宿を見付けなくちゃ)
相当寒くなりそうだし、この辺りをどんな獣が徘徊してるか分かったものではない。どうしよう……。わたしは、山頂に万年雪をかぶった連山の方を見やった。まだしばらくは大丈夫そうだが、太陽は、あの連山の陰に隠れるように沈んでいくだろう。まぶしかった。手をひさしのようにかざして、目を細める。山の麓まで辿り着けるだろうか……今いるような開けた場所で野宿はしたくなかった。火を使うにしても遠くから丸見え、背後を守るような場所もないから、得体の知れない夜行性の獣に囲まれてしまう……ネガティブな情景が次々と脳裏に浮かんでくる……