ドイツより資本主義な中国

 この二日の間に、日経電子版に二つの対照的な記事が掲載されました。

 3/5付 『EV移行にワナ、エンジン軽視は危険 未来カーの行方』

 3/6付 『ディーゼル車 終わりの始まり 延命狙った独の誤算』

後者で報告されているのは、ディーゼル車の延命を図ったドイツ政府の苦境です。記事では、ディーゼル車を終焉へと追い込む負のサイクルを形作る要素が、これでもかこれでもか、と列挙されます――

・新しいディーゼルエンジンを開発しない、ないしは、新型乗用車にディーゼル車を設定しないメーカーの続出。
・大気汚染対策のため急速に進むディーゼル車の乗り入れ規制。
・2015年に発覚した独フォルクスワーゲンの排ガス不正。
・業界幹部から出る、ディーゼルに対する補助金を電動化促進のために回すべき、との声。
・ディーゼル車を敬遠する消費者。
・下がる中古ディーゼル車の価格。
・・・・・・・

これだけのマイナス要素があるにもかかわらず、ドイツ政府は何故、ディーゼル車の延命政策を取ってきたのか?その背景には、自動車関連の雇用に対する配慮がありました。ディーゼル車がライフサイクルの下降期にあるにもかかわらず、雇用に配慮して無理をしたため、後手に回ってしまったのです。本来なら、ディーゼル車ではなく、電気自動車への流れにシフトする形で雇用を確保すべきでした。

このドイツの動きと全く対照的だったのが、3/5付の記事で紹介されている中国です。中国は、単に『先』を読んでいたのではありません。『先の先』まで読んでいたのです。、中国がEV化にひた走るのは、環境対策としての世界的なEV化の流れを先取りする為だけではありませんでした。記事にある次のくだりは、決定的です――

日系メーカーが急いでEV化に走ると、中国勢を利することにつながる危険性も見過ごせない。エンジン技術の強みを早期に手放すことで、汎用化したEV関連技術で安さを武器にのし上がる中国の台頭を後押ししかねない。

さらに――

中国のNEV規制には、日系メーカーへの対抗意識が強くある。同国はEV化の狙いに大気汚染の改善を挙げるが、現実解となり得るハイブリッド車(HEV)をNEVの対象から排除する。

これは、ドイツの例と真逆に、国策と企業の経営政策が完全に融合している、と言わざるを得ません。中国の経済体制については、社会主義市場経済とか、中国型資本主義とか、いろいろに言われますが、言葉の定義はいざ知らず、この体制がうまく機能すれば、現状と未来を的確に読んで競争に打ち勝つ手を打てたなら、驚くべき力を発揮するのではないでしょうか?少なくとも雇用の確保・拡大については中国に分がありそうです。そして、中国は、EV以外にも、AI・量子コンピューター・宇宙開発など、未来への先行投資を着々と推進しているのです。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO26743430Z00C18A2000000/

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO27743360W8A300C1000000/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?