音声認識AIとオフィス業務の親和性
IoT時代の音声認識AIは、モノと人間を音声でつなぎます。あらゆるモノがインターネットでつながり、人間とかかわるモノにはマイクが搭載されていて、スイッチ・ボタン・コンソールパネル・レバー・ハンドル、そしてキーボードなどに替わって、音声コマンドでモノを操作するようになる。もちろん、インターネットでつながっているので、すべてのモノにマイクを搭載する必要はなく、例えばアマゾンの音声認識AI『アレクサ』を使ったスピーカーのようなものがあればいい。そういった環境が、オフィスでも実現すると、一体何が起こるのだろうか?
記事によれば、この音声操作によるコンピューティングシステムというものをオフィスに持ち込んで、コンピューター操作の主流装置を『アレクサ』に替えようとする試みこそ、まさにアマゾンがやろうとしていることなのです。当然、『アレクサ』の替えようとしている相手は『コルタナ』、と言うより、マイクロソフトそのもの。アグレッシブなアマゾンと、マイクロソフト、さらには、同じく音声認識AIに力を入れるグーグルなどとの競争は、どういう結末を迎えるのでしょうか?
音声認識AIを提供する企業ごとに、AI経済圏ができるとも言われていますから、その趨勢は世界のグローバル企業の勢力図を塗り替えかねない重大な意味を持っていると思います。ハードのコモディティ化がどんどん進んで、ハードに搭載されるAIの性能によって差別化が起きる時代には、AIを提供する企業の重要性は計り知れないものがあり、我々の日常の生活とも直結しているのです。
改めて、音声認識AIがオフィスに入ってきた時に何が起きるのか、想像を巡らしてみると、素朴な疑問がいくつか浮かび上がってきます――
・大勢の人間が会話を交わすオフィスで、誤作動は起きないだろうか?……ウェアラブル端末なら大丈夫か……
・逆に、業務上の文書・資料を作成するのに皆が一斉に音声入力に頼ると、うるさくて集中できない。……もっとも、文章を練る時は、試行錯誤するのでキーボード入力の方が使い易いかも……
・単純に音声だと、周囲にいる人に対して秘匿性が担保できない。そういう場合は使えない。
・何でもかんでも音声コマンドだと疲れそう。声が疲れるなど、ストレスになりそうだ……
・気にしすぎかもしれないが、音声認識AIはクラウドベースだから、プライバシーが気になる。
・オフィス業務に変革をもたらすという意味では、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の方がよほど重大だ……
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他にも色々ありそうで(もちろんプラスの意味でも)、すぐには整理できそうにありません。結局、音声操作によるコンピューティングシステムがオフィスで重要な意味を持つかどうかは、音声認識AIとオフィス業務の親和性にかかっているという事でしょうか。オフィス業務100%のうち何%が音声認識AIで操作されるようになるのか……
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28054120T10C18A3000000/