【物書き部企画】森本英樹 42歳 No.03_相方
※インタビュー時点での年齢です。
※<No.00>,<No.01>,<No.02>の続きです。
1994年。
この年 彼には、その後の人生を決めることになる2つの出会いが訪れる。
秋。
幼馴染が通う高校の文化祭で、2つ上の先輩を紹介された。
宮地謙典さん。
紹介した幼馴染が、大川知英さん。
翌年、宮地さんが進学した専門学校の文化祭のために3人で結成したのが、後の『ニブンノゴ!』。
ここが始まりで、彼はエンターテインメントの道に進むことになり、高2の時からずっと、3人でやってきた。
―― そんなに長く一緒にいて、嫌になったりしないんですか?
「なりますよ、そりゃ。
でもここ何年かで、嫌にならない域になりました。
男と女じゃないんで、好きとか嫌いの感情がめちゃくちゃ激しく動くわけでもないですけど。
『好きだ!キスしたい!』とかじゃないですしね。
恋愛の対象ではないんで。
でも嫌いには…なりますよね。
まぁすごい関係だと思うんですよ。相方っていうのは。
嫌いになっても、いなきゃダメだし。
夫婦喧嘩してて、道端でたまたま人に会った時に仲良い夫婦を装う、みたいな。
それの連続ですからね。仲悪ければ。
でも、そんなの、今はないですよ。」
嫌にもなるし、嫌いにもなる。
それでも一緒にやらなければならない。
仕事だから、と嫌いなままやり続ける人もいるだろう。
でも、彼らはきっと時間をかけて「嫌にならない域」に達したのだろう。
「楽しくないことはやりたくないし、やらない」
とインタビューの中で何度も言っていた彼の
「今はないですよ」の言葉には、いろいろを乗り越えて落ち着き、共に過ごしている夫婦のような≪超越した何か≫があった。
3人で歩んできたが、大川さんと宮地さん、それぞれに対しての感覚は異なる。
保育園からの幼馴染だという大川さんとは、中学まで同じ学校。
別々の高校に進学したが、高校生の間もずっと一緒に遊んでいた。
「大川が150万で買ったGジャンってのがあって。
Gジャンですよ、ただの。
Gジャンに150万って、こいつやっぱ、いかれてんなーと思ってたんですけど。
それが、お宝鑑定団で、750万って言われたんですよ。
そこから専門誌にも載って、あれはヤバイぞ、みたいになって。
で、今、中国人のお金持ちが1500万で売ってくれって言ってるらしいんですよ。
4~5年前に買った150万のGジャンが、今1500万ですよ。
やばくないですか?
そういうやつなんです。金回りがいいって言うか。
そんな奴に1000円貸してって言われるんで、意味わかんないですけど。
いまだに言って来るんで。
手元にある金、全部使うんですよ。おもちゃとか服とか趣味に。(笑)」
大川さんのことを話す彼は、楽しそうだ。
俺の友達、面白いんだよ!こんな奴でね…って話しながら、
言い尽くせない魅力のあれこれを知っている自分を
ちょっと誇らしく思ってるようにも見えて…
何というか《男子》な感じが滲み出ていた。
「仲良い芸人みたいなの見ますけど、
俺らのほうが仲いいだろうな、って思います。
大川に関しては、仲良いとかでもない気がしますけど。
仲良いよね俺たち、って言ったこと一度もないし、
そんなこと思ってもいない。」
―― 兄弟に近いような感覚ですか?
「なんなら兄弟以上かもしれないですね。不思議な関係ですよ。
車を2人で所有してるんで、仕事に一緒に行くんですけど、
二人っきりで車ん中、なんにもしゃべんない時とかも全然もありますし。
なんにもっすよ。
『おい』とか『おはよう』とかもない。
LINEにしても、
僕が大川を迎えに行くんですけど、場所は決めてるんで、
『明日◯時ね』の時間の連絡だけしたら、
あとは着く前に『まもなくつくよ』の『まも』だけ。」
―― え?それで通じるんですか?
「通じます。
で、既読だけされて、その場所に着くと、
ゆっくりスーっと乗ってきて、
何も言葉を発さず小一時間移動するとか、余裕であります。
かと思えば、めちゃくちゃ話すときもあるんですけどね。」
―― そこに宮地さんは入らないですか?
「宮地さんは2個上の先輩、っていうのがあって、ツレじゃないんですよね。」
―― 先輩っていうのは残ってはいるんですね?
「やっぱりそうですね。
向こうもツレになろうぜ、って感じで心を開いてはこないんで。
宮地さんとはビジネスパートナー感が強いかな。
腐れ縁みたいのはありますけどね。
高知から一緒で、お互い親のことも知ってて、っていうのももちろんあるんですけど。
けど、友達だな、と思ったことはないですね。」
淳校長について話す中で、彼は
「(淳さんから)おもしろくないやつだと絶対に思われたくない。
(人間的に)面白い人間ではありたい。」
と話し、そして続けた。
「この感覚が、大川にもあるんですよね。」
―― 宮地さんにはないんですか?
「宮地さんに『おもしろくないやつって思われたくない』は、強くは思わないです。
なんだろうな『思うわけねーだろ』と思っちゃってるかもしれないです。
なんかわかんないけど、そこへのプレッシャーは感じたことないな。
大川のほうが思いますね。」
―― なぜなんでしょう?
「何なんでしょうね。
長く付き合いがあるからこそ、厳しく見てんじゃねーかな、とどっかで思ってんのかもなー。
でもこれ大川に対しては前から思ってて。
『こいつにおもしろくないって思われたくねーなー』って。
やっぱツレなんで…友達から《おもしろくない》と思われたくないんでしょうね。
宮地さんはビジネスパートナーなんで、
『こいつおもしろくない』っていうスイッチにならないんだろうな、と思ってるのかな。
『おもしろいやつだから契約してます』っていう繋がりじゃないんですよね、たぶん。
もうそれは認め合ってると思います。うん。
『どうやってやったらもっと俺たちをおもしろく見せられるかな』っていう、おもしろいっていうのはわかった上での会話なんです。」
―― それを世に出すには、っていうのを一緒に話し合う、みたいな?
「うんうん。そういうビジネスパートナー。
もうこの商品、美味しいのはわかってるんですよっていう状態。
どうやって世に売り出していきましょうかね、この美味しいチキンを、っていうノリですよね。
でも大川の場合は、そういう契約じゃないんでしょうね、たぶん。僕の中では。
おもしろくないと思ったら、こいつ俺と遊ばなくなるんじゃないかな、と思ってんじゃないですか、いまだに。笑
中学高校時代の友達関係の感覚なのかもしれないですね。」
おもしろくないって思われたくない。
2歳からずっと一緒に遊んできた、兄弟以上の時間を共にしてきているだろう友達
大川知英さん。
おもしろくないと思われる関係ではない。
先輩ではあるけれど、同等の同志であるビジネスパートナー
宮地謙典さん。
そんな二人の相方さんと、『ニブンノゴ!』を、彼はこれから先、どう楽しんでいくのだろう。
「高1で出会って高2で付き合って。
高1で出会って高2で組んで。
あんまり考えたことなかったけど
17歳で結構人生決まってるんですね、俺。」
これまで25年続けてきた人の言葉に、
きっと本人は無意識であろう、これからも続けていく覚悟を感じた。
〜 <No.04> へ続く...(はず) 〜
「インタビューを受けた人」
森本英樹教頭
「インタビューをした人」
【2期生】コダマ