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中小企業の部門設計の最適解を考えよう

こんにちは!株式会社ナレッジラボの小野と申します。

私のnoteでは、特に中小企業の管理会計のマニアックな論点を取り上げているのですが、今回は部門設計について考えてみたいと思います。

(過去のnoteはこちら!)

複数事業を営んでいたり、複数店舗を展開している中小企業は、いわゆる「部門別会計」を採用し、部門ごとの売上や損益を把握しています。

部門別会計を採用することにより、部門単位の会社への業績貢献を可視化することができ、部門責任者への報酬の決定や、業績が悪い部門への改善のアクションを明確にできるなどの効果が期待されます。

部門別会計は、中小企業の実務においても、広く活用されている管理会計の基本的な手法です。
(「部門別会計」でGoogle検索をすると、たくさんの解説ウェブサイトがヒットします。)

しかしながら、部門別会計の基礎となる「部門設計」の考え方について、広く一般に認知された考え方は示されておらず、多くの中小企業が「なんとなく」部門設計を行っているのではないかと思います。

そこで今回は、部門設計に焦点をあてて、中小企業が抑えるべき部門設計の勘所について解説したいと思います。

部門設計に画一的なルールは存在しない!

あらためて、管理会計に画一的なルールはなく、「部門」自体が管理会計独自の概念ですので、部門設計のルールには、当然ながら正解はありません。

つまり、その会社の部門設計=正しい部門設計といえます。

しかし、これを最終解としてしてしまうと、このnoteの意義がなくなりますので、あえて一つ画一的な考え方を示したいと思います。

業績管理を最小部門単位で、業績評価を部門グループ単位で行う

早速タイトル回収をすると、中小企業の部門設計において抑えるべきポイントは、「最小部門単位で業績管理を行い、部門グループ単位で業績評価を行う」ことと考えます。

まず、部門別会計を採用することの意義は大きく「業績管理」と「業績評価」の2つにあるといえます。

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業績管理:部門ごとの業績を把握・管理する
業績評価:部門ごとの業績に応じて、その部門および部門責任者を評価する

上の図では、部門A~Fは最小部門であるため、業績管理の対象となります。
また、部門X~Zは部門グループであるため、業績評価、すなわち部門グループ責任者が業績評価の対象となります。

この考え方を裏返すと、「業績を適切に把握できる単位」が部門となり、「責任者の評価を適切に行える単位」が部門グループとなるといえます。

たとえば弊社のようにSaaS事業を営んでいる会社の場合、最小部門として、「開発部」や「セールス部」、「カスタマーサクセス部」などが存在しますが、これらの部門に責任者がいるとしても、SaaSの売上高はすべての部門の活動の結果獲得されるものであるため、最小部門の財務数値の結果=コストのみをもって最小部門責任者の評価を行うのは適切ではないといえます。

一方、最小部門をグルーピングした「SaaS事業部」は、SaaS事業を行うための売上やコストが集約されるため、「SaaS事業部」というグループ単位の業績把握および事業部責任者の評価を行うことが可能です。

他にも、製造や調達を行う会社においても、売上高を各最小部門に按分できないという理由で、最小部門単位で業績評価を行うのは難しいといえます。

一方で、小売業やサービス業、コンサルティングサービス業などは、最小部門を業績評価の対象にしやすいため、上記のフレームワークが適しているとは限りません。

このように、すべてのケースにこのフレームワークが当てはまるわけではありませんが、業種や業態によって部門設計の考え方は様々あるものの、上記のフレームワークは多くの中小企業に適用できる一つの指針になるのではないかと考えています。

具体例で考えよう

ここまで理想的な部門設計について、私見を述べてきましたが、シンプルな具体例で部門設計を考えてみたいと思います。

【前提】
多店舗展開しているラーメンチェーン店
1店舗あたりに1人の店長、2人のマネージャーが在籍している

部門設定の切り口として4つの例を挙げ、それぞれが部門もしくは部門グループになり得るかを下の表で◯☓形式で示しています。

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この4つの例だと、部門になるのは店舗単位のみ、部門グループになるのはエリア単位のみといえます。

◯をつけた箇所として、店舗単位の業績把握は難しくなく、また、複数店舗を統括するエリア統括が存在する場合、エリア単位は部門グループに適しています。

一方で、部門に適していない例として、品目単位で部門をとる=「ラーメン」や「ドリンク」、「サイドメニュー」という単位が部門になるイメージですが、この切り口が現実的でないのは感覚的に理解いただけるのではないかと思います。

品目単位で部門をとる場合、売上高や売上原価は部門ごとに情報を持たせることができますが、販管費以下の配賦の難易度が非常に高いといえます。
たとえば、以下のような論点が生じます。

・「ラーメン」部門に配賦する人件費の基準は?
・「ドリンク」部門に配賦する支払家賃の基準は?
・「サイドメニュー」部門に配賦する支払利息の基準は?

このように、実務的にコスト配賦が難しい=品目単位での業績把握が難しいため、品目単位は部門の切り口として不適切といえます。

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あらためて、部門設計の際には、「業績を適切に把握できる単位」が部門となり、「責任者の評価を適切に行える単位」が部門グループとなっているかという観点を持っていると、適切な部門設計が実現できるのではないかと思います。

さいごに

今回は、中小企業の部門設計について考えみました。

管理会計や予算管理の文脈では、部門というと共通費配賦が一番に論点として挙がってくる印象ですが、その前段階である部門設計は意外と奥が深く、重要な論点ではないかと思います。

このnoteをご覧いただき、あらためて自社の部門設計について考えてみていただけると幸いです。

(この記事を書いた人)
小野敦志。日米の会計事務所勤務を経て、Big4税理士法人にて国際税務アドバイザリー業務に従事。2020年7月に株式会社ナレッジラボに入社し、現在はManageboardのカスタマーサクセス責任者として、Manageboardの導入支援を統括。米国公認会計士。

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