【はじめての質問】全国的増加と知立市の減少、知立市の生活保護実態とこれからの課題
知立市議会・市民福祉委員会の委員として、はじめて執行部(市役所職員)に対して質問をする機会を得ました。市民福祉委員会は、市民の健康や福祉、生活全般にわたる課題を話し合う場であり、地域社会の安心・安全を支える重要な委員会です。
今回は、執行部から提示された補正予算案の中でも特に「生活保護」に着目しました。生活保護は、自立が困難な方々が最低限の生活を送るためのセーフティーネットです。
私自身、生活保護には「若者が安心してチャレンジできる環境を整備してくれている」という側面もあると考えています。たとえ挑戦が失敗に終わっても、社会が最後の砦として救いの手を差し伸べる仕組みがあることで、次の一歩を踏み出しやすくなる――それが生活保護という制度の持つ大きな意味だと感じています。
一方で、全国的には生活保護申請件数が増加しているにもかかわらず、知立市では著しく減少しているという、全国的にも珍しい現象が見受けられます。「なぜ増えるどころか、知立市では大幅に減っているのか?」――この不思議な状況の背景にはどんな要因があるのかを明らかにするため、私は今回、質問を行いました。
(情報としては少々古いですが)実際、このグラフ(※掲載図参照)や地図をご覧いただくと、どれほど知立市が特殊な減少傾向を示しているかが一目でわかります。近隣自治体と比較しても、濃い赤色で示された知立市の減少幅は際立っています。
ということで、以下に私が行った質問と、それに対する執行部の回答をまとめてご紹介します。これらのやりとりを通じて、知立市の福祉行政がどのような方向に進んでいるのか、また今後どのような改善や対応が求められるのか、皆様とともに考えていければ幸いです。
【知立市議会:市民福祉委員会 予算分科会での質疑応答】
【全国的な生活保護の傾向と知立市の現状】
質問:全国的には生活保護申請件数が増加傾向(2023年度で4年連続増加、25万件超)にありますが、知立市の現状はどうでしょうか。知立市では過去10年間で58.9%の減少がみられ、今回の補正予算額(5,318万3,000円)は全国的傾向と比べると控えめな印象を受けます。この判断についてお聞かせください。
回答(福祉課長):
令和3年度末までは減少傾向だったものの、その後増加に転じています。
令和6年3月末:265世帯・340人
令和6年9月末:284世帯・376人
補正額は、今年度4~8月の執行額と前年同期の比較による伸び率を考慮して積算しました。
【補正額の内訳:医療扶助・生活扶助・住宅扶助の割合】
質問:扶助費全体の中で、医療・生活・住宅各扶助の割合はどうなっていますか。また、それぞれの増加想定はありますか。
回答(福祉課長):
医療扶助:全体のおよそ半分を占める状況が続いています。
令和5年度決算額ベース
医療扶助費:約5億4,529万円(約50%)
生活扶助費:約1億6,099万円(約30%)
住宅扶助費:約9,911万円(約18%)
今回の補正で見込む伸び率
生活扶助費:約6%増
住宅扶助費:約3%増
医療扶助費:約30%増
なお、件数や世帯数ベースでの細かな積算は行っていません。
【高齢化・ひとり親家庭など多様なニーズへの対応】
質問:高齢者の増加やひとり親家庭など、多様なニーズに対して柔軟な対応をどのように行いますか。また、年度途中での急増にも対応できる体制はありますか。
回答(福祉課長):
国の定める基準に従い、適切な対応を行います。高齢者、ひとり親、障がい、ひきこもりなど複合的な課題を抱える世帯には、関係機関と連携し対応を強化します。ケースワーカー1人あたり80世帯を超えないよう社会福祉法で定められていますので、増加が続く場合は人事当局と協議し、必要に応じ増員等を検討します。
【市民理解の促進:生活保護申請への偏見解消】
質問:生活保護への偏見やバッシングが申請をためらわせる要因となる中、市民理解の促進や安心して申請できる環境整備はどのように考えていますか。
回答(福祉課長):
必要な方が支援につながれない状況は避けたいと考えています。窓口・電話での親切丁寧な対応はもちろん、広報等で制度周知に努めます。また、申請者の権利を妨げるような言動を慎むよう、ケースワーカーには日頃から指導しています。
今回のやりとりから、知立市としては全国的な傾向や市独自の状況を踏まえつつ、医療扶助を中心にニーズ増加へしっかりと対応しようとしていることが明らかになりました。また、多様化するニーズや市民理解の促進に向け、国が定める基準に即した柔軟な対応や、関係機関との連携強化、そして広報などの情報発信強化など、これからの課題に対して積極的に取り組む姿勢が示されています。
もちろん、一足飛びに全てを解決できるわけではありませんが、新たな一歩を踏み出し、よりよい市政運営が進むことを私も期待しております。
改革には困難がつきものです。
しかし、私たち自身が「前に進む」という強い意思を持ち、市民の皆さまの声を丁寧に拾い上げていくことで、少しずつでも確実な前進が可能だと思います。
これからも、知立市が多様な課題に真正面から向き合い、より安心して暮らせるまちづくりを目指していく様子を、私も見守り、時に後押ししてまいります。