[第9話]MVで演じる。
ある夜、こんな依頼が。
ミュージックビデオ(以後MV)を撮るから、役として出て欲しい、とのこと。
MVとは曲に合わせて映像を紡いでいくコンテンツで作品をより深く、広く知ってもらうための映像作品。
依頼主はMVディレクターをしており、その日はあるロックバンドのMV撮影を予定していた。そこで出演する演者を数名集めているのだそう。
演技か…
あんまり自信はないが、実は映画にでたり、他のMVにも出たりとちゃっかり少しづつ実績がある僕。今回もできる限り頑張ろう。
ということで、レッツMV!!!
MVで演じる。
現場に到着。
指定された場所はとある山奥。
うわあ、桜が綺麗〜!(MVの撮影は4月)
春先でやや肌寒いけど清々しい天気。
関係者はすでに集まっている模様。
依頼主はテキパキと現場を指揮っていた。
あい、顔合わせするで〜
その声で、そこにいた面々は円になった。
これは顔合わせというやつで、初めにその日の関係者が自己紹介をする。こういう場では初対面同士が会することも多いため、とても大事。
その後、当日の大まかな流れや注意事項が告げられる。顔合わせを終えたあと、すぐに撮影は始まった。
じゃあこれに着替えてー。
とその日の衣装を渡される。
ん、ど、どうやって着るのこれ。
他の演者と試行錯誤しながらやっとの思いで完了。
監督に確認しに行くと、ニヤニヤしながら
ええやん、と言っていた。(ほんとかなあ)
今回はメイクもするらしい。
茶色と黒と緑のおっきいクーピーみたいなやつを顔や手に塗っていく。
そして、完成がこちら。
緑のムックです。もじゃもじゃ。
この衣装はギリースーツという迷彩服の一種らしい。
何でも今回はバンドを狩る(?)ハンターチームのリーダー役らしい。とにかく渋い顔の演技を求められた。黙っていると実年齢プラス5歳顔の僕にピッタリの役だ。それぞれのシーンを順番に撮っていく。
その日はスタッフ、演者を含め計10名ほど現場にいた。
いや、それに加えてあと、1匹。
ポメラニアンがいた。
可愛いいいいいい!!!!ああああああ!!!!
撮影するバンドのボーカルの飼い犬らしい。名前はチャッピー。
けどなんでここに??
最初は外に行くついでに連れてきたくらいに思っていた。
じゃあ、次。バンドとチャッピーで銃声に気付いて逃げるシーン、撮るで。
そう言われ、リードを外されるチャッピー。バンドメンバーと戯れている。
(あ、出演なんだ、チャッピー。大丈夫かな)
カメラを回し、合図を出す。
パァン!
逃げるメンバー、それに付いていくチャッピー。
賢すぎ、てか、可愛すぎ…
その日の演者MVPがチャッピーに決定した瞬間だった。
撮影が進んでいく。
他の演者さん達も監督の指示に応え、様々なアクションをする。
表情や動き、細かく指示が飛ぶ。
演者の表情や動きを決定づけるのは、そのキャラクター性や場面。監督はバンドの楽曲から一つの脚本をつくり、それを元に撮る絵を決めていく。監督、バンド、演者。一つの世界をその場にいた人間全員で作り上げていく感覚にとてもワクワクした。
撮影は夜にまで及んだ。1日があっという間だった。
今回撮影をしたMVは滋賀県で活動しているNeos Generationの「BURN」という楽曲。
タイトル通り、アチアチな曲。ブレイクダウンのところは役を忘れて盛り上がった。
僕の演技、バンドの楽曲、チャッピーの可愛さをぜひ見て聴いてみて欲しい。
Neos Generation 「BURN」
今回の依頼はこれにて終了。
ご依頼いただきありがとうございました。