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30年後の夢

自分が中学時代にラグビースクールでヘッドコーチをしていたA先生は、声が大きく、割と口が悪く、本人的には怒ってないのになぜか怒られているような気にさせる迫力のある先生だった。

練習中にちょっと手を抜いたり、気が抜けたプレイをすると「あっちゅん(本当は私の苗字)〜!」と、よく怒られた。

平たく言うと、威厳があって、近寄りがたい怖い先生だった。

そんなA先生は、自分がコーチになり、ラグビースクールで会えば、相変わらずの大きな声で「あっちゅん(本当は私の苗字)〜!」と声をかけてくれる。でも、大人になると、その迫力のある呼びかけに愛情が含まれていることを感じ取れるようになった。

基本、自分が悪者になることを厭わない人で、自分がパパコーチになるか迷っていた時に、「OBは無条件でコーチをやるんだよ。選択の余地なんかねえんだ」と、第三者が聞いたらパワハラとも取られかねないもの言いで、背中を押してくれた。

もっと遡れば、自分の結婚式で、同期がスクールのユニフォームを借りに行ってくれた時も快く貸してくれて、後にOB会で顔を合わせた時に「結婚式、呼ばれてないぞ」と言われ、さらには「子供が生まれたら、うちに入れろよ。もし他のラグビースクールにいれたら、どんな顔でお前は俺に会うんだ?」と半ば脅しめいた物言いで勧誘された(笑)。

こう書くと、自分がすごく気に入られていた生徒みたいだけど、中学時代は目立った選手じゃなかったし、特段気に入られていた認識はない。あえて言うなら、自分に限らず、どの生徒、OBにも同じように愛情を注いでくれているというのが、A先生のすごいところ。1人に1人にきちんと向き合っている。

こないだの息子の試合に、自分の弟(ラグビースクールのOBでやはりA先生にお世話になった)も観戦に来ていて、A先生に挨拶をしたら、わざわざ私のところまで来て、うちの弟が挨拶しにきたことを報告しにきてくれた。嬉しかったんだと思うし、弟を誘った私に感謝を伝えたかったんだと思う。

ただ、その時、A先生は、弟と私を兄弟の順番を逆に認識していて、「あっちゅん(本当は私の苗字)のアニキが挨拶に来たぞ」と言っていた。思わず私も「顔は老けてるけど、弟なんですよ」と軽く返した。

そして先週、練習中にA先生がおもむろに近づいてきて、いつものように「あっちゅん(本当は私の苗字)〜!」と、声をかけられ、なんか怒られるのかと思ったら、「こないだは、弟をアニキって間違えて悪かったなぁ」とまさかの謝罪だった(笑)。

卒業して早30年近く。
何だかんだ近寄りがたかったA先生との距離感が近くなったことを感じる瞬間だった。

自分も30年後くらいに今、見ている子たちとそんなやりとりができたら幸せだろうな。

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