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ドップラー効果を利用して、走っている救急車の速度をズバリ当てる
どうも、2025年新年あけましておめでとうございます。ちなみにこのエントリを書いているのは2024年23時58分です。年越しドップラー効果しちゃいます。
ドップラー効果はとても有名なので、あの救急車が目の前を通り過ぎたときにサイレンの音程が変わるやつやろ?と覚えている人も多いと思います。
数日前、帰宅途中の交差点でサイレンを鳴らして道を走り去っていったとき、そういえば車の速度って光のドップラー効果を利用してレーザー速度メーターで計測出来ることを思い出して、それなら音のドップラー効果でも車の速度って分かるんじゃないか?と閃いたので、やってみました。
準備
まず、音のドップラー効果とは、音源が音を出しながら移動している場合、観測者は元の周波数(波長)よりも高い周波数の音を観測するという現象です。
今回は速度メーターのような装置は使わず、聞こえた音だけで速度を測定したいと目論んでいるので、試すには走行中の救急車のサイレン音と、停止中の救急車のサイレン音が必要になります。
というわけで、こちらの動画から拝借しました。
救急車が高速道路を緊急走行 (Youtube short)
そして、この2つの動画を適当にダウンロードして、下記サイトにてサイレン音の周波数を確認します。
走行中のサイレン音 826.2Hz
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停止中のサイレン音 761.7Hz

サイレン音はご存知の通り、ピーポーピーポーと2つの音程を繰り返しているわけですが、今回は低い方の音を使用しました(実際どっちでもOK)。余談ですが、救急車のサイレン音は960Hzと770Hzを1.3秒周期で繰り返すと法律で定められているらしい。
ドップラー効果の式を導出・速度を算出
導出の過程はテキストでの説明がまあまあ難しいので、ヨビノリさんをおすすめしておく。ぼくの説明より300倍くらい分かりやすい。

$${S_1:}$$静止している音源
$${S_2:}$$動いている音源
音速 $${V\ \mathrm{[m/s]}}$$
音源の移動速度 $${v\ \mathrm{[m/s]}}$$
音波の振動数 $${f\ \mathrm{[Hz]}}$$
$${S_1}$$から発生した音波が1秒間で移動する距離は$${V\ \mathrm{[m]}}$$で、$${S_2}$$から音源が移動した距離は$${v\ \mathrm{[m]}}$$となる。このとき、それぞれが発した音波は$${f}$$回振動することになる。
移動する音源が発する音波の波形は横に押しつぶされたように変形するので、$${S_1}$$の波形と比べると、同じ$${f}$$回振動するものの、短い長さ$${V-v\ \mathrm{[m]}}$$の範囲で振動するため、周波数は、$${f}$$回の振動を$${\frac{V-v}{V}\ \mathrm{[s]}}$$で割った値になる。つまり$${S_2}$$の発する音を右のライン上にいる観測者が観測すると、$${f'=\frac{f}{\frac{V-v}{V}}\ \mathrm{[Hz]}}$$に聞こえる。
式を整理すると、下記のようになる。
$$
\begin{aligned}
f'&=\frac{f}{\frac{V-v}{V}}\\
f'&=f\frac{V}{V-v}\\
\end{aligned}
$$
後ほど速度$${v}$$を求めるために使うので、$${v}$$について解いた形も用意しておく。
$$
\begin{aligned}
f'&=f\frac{V}{V-v}\\
V-v&=\frac{fV}{f'}\\
v&=V-f\frac{V}{f'}\\
v&=V(1-\frac{f}{f'})
\end{aligned}
$$
周波数ではなく波長について解きたい場合、$${f=\frac{V}{\lambda}\\}$$の関係を利用して、このように変形する。
$$
\begin{aligned}
f\frac{V}{V-v}&=\frac{V}{λ'}\\
λ'&=\frac{V-v}{f}\\
λ'&=\frac{\lambda(V-v)}{V}
\end{aligned}
$$
実際に周波数を代入して救急車の速度を求めてみる。
$$
\begin{aligned}
v=340(1-\frac{761.7\mathrm{Hz}}{826.2\mathrm{Hz}})=26.54\ \mathrm{m/s}=95.55\ \mathrm{km/h}
\end{aligned}
$$
おおおおおお!!!
時速95.55kmで走行していると出ました。それっぽいですね!
映像を見ていただけると分かりますが、高速道路を走っている救急車なので、割と妥当な数値が出ていると思われます。

ちなみにこの計算は、救急車がまっすぐ自分に向かってきているシチュエーションの計算ですが、実際の映像では、救急車を斜め上の角度から見ているため、おそらく実際はこれよりもいくらか速いというくらいになるかと思います。
もし救急車がほぼ音速で走っていたらどうなるのか?
導出のところで図解したように、音源が移動している場合、音源が移動した分だけ波形が横から押しつぶすような形で変形します。そこで、もし救急車がほぼ音速で走っていた場合にどうなるか気になりました。
ドップラー効果の式に当てはめて計算してみると、$${v<V}$$なら非常に高い周波数の超音波のような音になり、$${v\geq V}$$なら、$${f'}$$が無限大に発散するか、マイナスの周波数になってしまう。
$$
\lim_{v \to V}f\frac{V}{V-v}=\infty
$$
物理的にどんな現象が起こるかというと、音というよりソニックブームという衝撃波のようなものになるらしい。このあたりはもうちょっと勉強しないと解説出来そうになりので、このくらいにしておく。
以上です。これで救急車の音を聞くだけで速度が分かっちゃうぞ!