
若い教員を育てる研修会での講演~「子どものやる気・大人の気づき」前編
令和5年度大崎地区教育フォーラム
主催:大崎地区高等学校・特別支援学校長協会
共催:大崎地区中高連絡協議会、大崎地区高等学教頭・副校長会
日時:令和5年9月11日(月)14:20~15:20
会場:古川学園高等学校
話者:志学塾 塾長 畑山篤
ダイジェスト版としてPowerPointスライドショーをご覧になれます。
去る9月11日、20年来の友人である私立古川学園中高の校長俣野聖一先生とのご縁で、70名余りの学校の先生方を前に、お話しする機会を賜りました。宮城県大崎市の校長会の皆様が主催する「先生になって1年目、2年目の教員を育てる研修会での講演」と伺い、私なりにテーマを『子どものやる気・大人の気づき』とし、拙い話しではありますが、小一時間お話させて頂きました。以下、内容を記します。<前編・後編>
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■感謝の言葉、自己紹介
戦後直ぐ、本州最果て、津軽海峡を望む青森県下北郡大畑町で漁師をしていた父は、戦後10年で八戸市に移り、漁船に油を詰めるタンク船の機関士になりました。戦後15年、昭和35年私が生まれた頃は、世の中が車社会になる流れで、父も海から陸に上がり、ガソリンスタンドで油を売る仕事に就き、文字通り油まみれで汗を流していたようです。
私は、地元で小、中、高校と進みました。小学校でも、中学校でも、将来は何になるの?と聞かれても、「油屋を継ぐ」とかいう確かな気持ちがあったわけでもなく、周りもみんなそうでした、特に何かになりたかったわけでもなく、毎日友達と、野球やサッカーに明け暮れていました。
将来は?「いつか稲葉小僧になりたい!」
大学進学を控えた高校3年の時です。テレビを観ていると、時代劇で「稲葉小僧」という、強きを挫き、弱きを助ける泥棒の話で、これがとても面白く、自分も「いつか稲葉小僧になりたい!」と思うようになりました。
しかし、現実に戻ると、これから挑む大学受験には、”泥棒学部”はなく、…近いところでは、そうですね、お金の勉強をしようかと思い、会計学が学べる経済学部に進学しました。
■塾は人づくり?人助け?
勉強して身についたことは一生奪われることのない財産と母は教えてくれた
平成元年、私は28歳の時に「志学塾」を開業しました。当時、大学を卒業した後も税理士を目指し、仕事と受験という二足のわらじを履いている状態でした。働きながらの目標達成にはあと数年はかかると考え、長男が2歳になったこともあり、一念発起して開業を決心しました。
しかし、開業の蓄えがなく、親にすがるしかなく、両親はきっと反対するだろうと覚悟し実家に向かいました。すると意外にも父は「塾はいいね」と快諾。母は父の傍らで「きっと人助けになるよ」とほほ笑みました。
教育は「人づくり」だと思っていた未熟な私でしたが、この時、人づくりではなく「人助け」なんだと心に刻みました。
「塾はいいね。勉強が分からない人を助けてあげるんでしょ? 勉強して身についたことは一生奪われることのない財産だからね」と母は教えてくれました。

■塾って何?先生って何?
開業して10年ほど経った頃、塾って何?先生って何?という問いの答えがなかなか見つからず、どんな塾を目指せばいいのか決めかねていたことがありました。

そんな折、業界の先輩である札幌進学教室の入江塾長を訪ねる機会がありました。
私の問いに「塾というのは、子どもたちが、例えば8歳から18歳まで通うとしよう。10年間も通ってくれるんだ。例えば学校の先生が一人の子どもを担当するのは長くて2、3年だから、子どもの一部しか知らないだろう。親だって、わが子のことを全て知っているわけではないよね。しかし、塾長というのは、一人の塾生の成長を長きにわたり見守っている。だから、子どもが、人生の分岐点で悩み、誰かに相談したいと思ったとき、それは塾長でなければという存在でありたい…」とお考えを聞かせてくださいました。
1989年 平成元年に 八戸市で 志学塾を開業しました。
1999年 志学塾は 八戸地域 8教室になりました。
2008年 出前塾@海士町教育委員会
2009年 OK!学習法ネットワーク設立
2023年 OK!学習法ネットワーク正会員 個人249名
うち◇学習ドクター・プロフェッサー 3名
◇認定上級指導者 9名
◇認定1級指導者66名
◇認定2級指導者56名

■将来は何になりたいのか?
今も昔も、将来はまだ決まっていません!
今の子ども達に「将来は?」と聞くと十中八九、「まだ決まっていません」と答えます。私は、「将来が決まっている人は誰もいません。何がしたいか?何になりたいか?今の気持ちを聞いているのです」と話してから「例えば、●●になって世のため人のために活躍したい、とか、●●をして世のため人のために活躍したい、とかないかなぁ」と問いかけます。更に「例えば、漫才師になって、とか、人を笑わせる仕事についてとか…」と続けるとかなり具体的にイメージを抱くようになります。そして間髪入れず「大事なのは、●●は何であっても良いけれど、必ず世のため人のために活躍したいと口に出すこと!」と子ども達の考えの背中をぐっと押してあげます。
■天命とは…
私はいつから先生になりたかったのでしょうか
子ども達に偉そうに言っている私ですが、では私はいつから先生になりたかったのでしょうか…
大学には教育学部があっても、”塾長学部”なく、もちろん”泥棒学部”もありません💦吾十有五にして学に志し…志学とは15歳の別称である。志学を15歳といい、而立は30歳、不惑は40歳、そして50歳が知命という。
では、私たちは50歳になったら「先生が天命だった」と分かるのでしょうか?
そして、果たして私は、先生になるべきだったのでしょうか…
先生になりたかったのでしょうか…
天命とは人生を振り返って…
50歳を過ぎた頃、小林秀雄の「天命とは」という文章を読みました。
次のように書いています。
天命とは、「何になりたい」かという心理的な問題ではなく、「何になるべき」かという論理的な問題でもなく、50歳になって人生を振り返って「自分の道は人との出会いで決まってきた」と知るものだと…。
志学塾は創業34年…たくさんのことを教えていただきました
志学塾で、私は3千人を超える卒業生とそのご家族の皆様に出会いました。そしてたくさんのことを教えていただきました。
■先生として「子どもたちの“わからない”を知る!」
犬から猫は引けないよ
開業早々、10名余りが入塾しました。しかし、「円の面積は?」と尋ねると「180度」と返ってきたり、「4×7=28」は答えられるが、「7×4」で聞くと、「最近使ってなくて」などと間違えたり…。
小学1年の元気な男の子は「リンゴが5個。3個食べたら残りは何個?」はできた。しかし「犬が5匹。猫が3匹。どちらが何匹多い?」では、5+3=8と書いて手が止まった。「どちらが多い?」と優しく助け船を出しても、5本の指を出したり隠したりしながら「だって、犬から猫は引けないよ」と…
「今日」を英語で「study」と答える子…
木曜日の中学生コース。中学2年男子が「今日」を英語でstudyと何度も答えるので、「studyは勉強する。では、今日の前を何て言う?」と聞き方を変えてみた。すると「あ、前日です」と。「ん~そうではなくて、英語で!」と言うと「あ、さたでぃです…。ん、でぃがつきますよね」と。頭の中が、混乱しているようだが、成績は、学年順位百人中30番以内の子どもだ。
私はマンツーマンで、「今日today、昨日yesterday、土曜saturday」を何度も繰り返し、大きな声で、スラスラ答えられるまで練習させた。「よし、だいぶ言えるようになったな。では土曜は?」「はい、さたでぃです!」「よし、では昨日は?」とリズムに乗って質問すると、「はい、水曜です」と気を抜いてしまった。教室中爆笑に包まれた。この男子の授業後の感想には「英語が楽しくなりました。ありがとうございました」とあった。
■人はなぜ学ばなければならないのか…
20世紀、「先生、なんで勉強なんてするの?」と子どもたちはよく口にしたものです。しかし、21世紀になると、子どもたちの質問が変わってきたと思います。
中3男子から「やる気ってどうすればでるんですか?」と聞かれたり…
また別な子どもからは「受験まで残りわずかですが危機感がないんです。危機感ってどうやったら感じられますか?」という質問がきたり…真顔でやる気の“出し方”や危機感の“感じ方”を求めてくる子ども達が少なくないことに違和感を覚えます。
<後編では子ども達のやる気についてお話させていただきます…>


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