音楽好きのおっちゃん
いつぶりかの岡山県に足を運ぶ。昼前に到着して、予定がある夕方まで時間をつぶす。入ったごはん屋さんの謎な組み合わせ、カツ炒飯もおいしかったし、オリエント美術館でメソポタミア文明の展示を見て、都市の起源を少し知れてよかった。後楽園近くではダンス部かチア部かのJKが踊ってた。立ち寄った雑貨屋の店主さんが山好きで知り合いになった。来年ぜひ山荘に来てくださいね。
いつもふらふら散歩中は音楽を聴いたり、イヤホンを外して街の音を聞いたりする。だいたい交互に繰り返す。外界の音に過敏な日はだいたい音楽に逃げ込む。今日のプレイリストはアジカン。
feat.塩塚モエカ(羊文学)の「触れたい 確かめたい」を初めて聴いて、完全にやられてしまった。「君だって切実な日々を生きているでしょう」という詞を塩塚に歌わせるゴッチ。わかってる、ほんまにわかってる。
そう、わざわざ岡山に来た理由はアジカンのライブがあるからである。直前でチケットが手に入り、在来線にゆらゆら揺られながらやってきた。フェスでは何度か見たことはあるが、ワンマンは初めて。
キャパ600人のライブハウス。大学のときに数回来たことがある。そろそろ後方のPA卓前ぐらいでゆっくり見る、という落ち着いたライブ鑑賞スタイルを気取りたいが、ステージがあまりにも近く、思わずいけるところまで前にいって待機してしまう。まだ一応若いということなのかもしれない。
暗転して5秒後ぐらいにあっさり登場する4人。ボーカルだけ遅れて出てくるみたいなこともない。ドラムの音からスッと世界に入って行く。
ライブを見ながらふわっと考えていたこと。遠いところからライブハウスに足を運んでいるが、ぼくは熱烈なアジカン好きではない。曲も聴き込んでるわけでもないし、曲名とメロディがなかなか一致しない。案の定、今日も知らない曲がけっこうあった。
日本のロックバンドを漁るようになってから、アジカンという存在を当然知るわけだが、はじめはなかなか良さがわからなかった。フェスで見ても、さすがレジェンドやなぁ、どっしりしとるわ、と思ってリライト、ソラニンでテンションが上がる、ぐらいの距離感が続いた。もっと早いBPMのバンドばかり追ってたし、シンセをがんがん使うバンドとかが好きだった。
最近になって、新世紀のラブソング、ムスタングとかを聴いて、なんかけっこういいぞアジカン、という風にじわじわと好きになり始める。それでも熱烈に好きなわけではない。でも今日はライブに来ている。
ライブを聴きながらふわっと考えていたこと。このバンドの安心感は何なのだろう。ロックではあるけどセラピーのような落ち着きを与えてくれる。じんわりと時間をかけて響いてくる。絶妙な没入感。
途中からは、音楽好きのおっちゃんがはしゃいでるようにしか見えなくて、おもしろくなってきた。音楽好きのおっちゃん。あまりにもスーパーな音楽好きだけど。
おっちゃん4人が一途に音楽を、バンドをやり続けてるっていうのが、醸し出される安心なのだと思う。おっちゃんが子供みたいにはしゃいでるってのはなかなかの希望であって、こういう風に歳を取ればいいのね、なんかやっていけそうな気がする、というひとつの明るい形を見せてくれる。それは聴き手が音楽をやっていようがいまいが関係なく。
そんなことが頭をよぎりながらライブをじっくり楽しんだ。海岸通りが1番よかったなぁ。聴き込んでいない曲もまだまだあるし当分アジカンで遊べそうだ。
自分もどんなおっちゃんになろうか。山好きか、写真好きか、ロック好きか。まああんなイケてるおっちゃんにはなれそうにないけれども。